”譲り疑惑”で19歳アントネッリに殺害予告、マルコ発言撤回&レッドブル遺憾表明―誹謗中傷1100%増。SNSは漆黒に

  • Published:
  • Googleで優先するソースとして追加する

2025年F1第23戦カタールGPでレッドブル陣営が発した疑念の声は、最悪の形でコース外へ飛び火した。メルセデスの新人アンドレア・キミ・アントネッリに対し、SNS上で殺害予告を含む深刻な誹謗中傷が殺到している。

事態を重く見たレッドブルはレース翌日に声明を発表し、自チームの発言が引き金となったことについて「心から遺憾に思う」と述べた。また、同チームのアドバイザーであるヘルムート・マルコもドイツの専門メディア『F1-Insider』に対し、自身の発言を撤回した。

「1100%増」の憎悪、漆黒の抗議

ロサイル・インターナショナル・サーキットで開催されたレースの翌朝、19歳のイタリア人ドライバー、アントネッリのInstagramのプロフィール画像は“漆黒”に変更された。それは、無言で示した悲痛な抗議だった。

メルセデスによれば、アントネッリには複数の殺害予告を含む大量のメッセージが送りつけられており、誹謗中傷の量は通常の決勝日と比べて「1100%増加」したという。

この憎悪の連鎖を生んだ火種は、レッドブル陣営による根拠のない疑惑の提示にあった。

タイトル争いの緊迫した局面で起きた「疑惑」

カタールGPの終盤、ドライバーズタイトル争いに影響を与える重要な場面が訪れた。

ラスト2周、アントネッリはターン10でコースアウトを喫し、ランド・ノリス(マクラーレン)に4位の座を明け渡した。これによりノリスは、貴重な2ポイントを追加した。

10点差か12点差か──この違いは、アブダビで迎える王座決定戦に大きく響く可能性がある。このオーバーテイクがなければ、ランキング2位のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)はノリスに10点差でアブダビに乗り込む見通しだった。

この場面を目にしたフェルスタッペンのレースエンジニア、ジャンピエロ・ランビアーゼは無線でこう伝えた。

「ノリスに道を譲ったように見える」

さらに、マルコもレース後、「ランドを“どうぞ”と言わんばかりに2回も前に行かせていた。あれは誰が見ても明らかだった」と語り、疑念を助長した。

パドックを歩くヘルムート・マルコ(レッドブル・レーシング顧問)、2025年11月22日(土) F1ラスベガスGP決勝(ラスベガス市街地コース)Courtesy Of Red Bull Content Pool

パドックを歩くヘルムート・マルコ(レッドブル・レーシング顧問)、2025年11月22日(土) F1ラスベガスGP決勝(ラスベガス市街地コース)

レッドブルの声明とマルコの謝罪

レッドブルは月曜に発表した声明の中で、これらのコメントが誤りであったことを認めた。

「カタールGPの終盤およびレース直後に行われた、メルセデスのキミ・アントネッリが意図的にランド・ノリスにオーバーテイクを許したとするコメントは、明らかに不正確だ」

「リプレイ映像は、アントネッリが瞬間的にクルマのコントロールを失い、その結果ノリスが彼を追い抜いたことを示している。この一件がオンライン上でキミへの中傷につながったことを心から遺憾に思う」

声明でレッドブルは、誤認を認めつつも直接的な謝罪表現は避けた。一方マルコは『F1-Insider』に対してこう述べた。

「リプレイ映像をもう一度よく確認した。最初の場面(ピアストリに追いつかれたストレートでの攻防)はもう少し抵抗できたかもしれない。だが2回目は単なるミスで、意図的ではなかった。アントネッリがあれほどネットで叩かれたことを気の毒に思う。はっきりさせたい。彼はノリスをわざと前に行かせたわけではない」

メルセデスのトト・ウォルフ代表によれば、ランビアーゼはレース後にウォルフへ直接謝罪したという。

FIAも声明「あらゆる形の中傷を強く非難」

決勝前のガレージ内でアンドレア・キミ・アントネッリの肩を抱くメルセデスのトト・ウォルフ代表、2025年7月27日F1ベルギーGP(スパ・フランコルシャン)Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

決勝前のガレージ内でアンドレア・キミ・アントネッリの肩を抱くメルセデスのトト・ウォルフ代表、2025年7月27日F1ベルギーGP(スパ・フランコルシャン)

ウォルフはレース直後、マルコの発言を「どれだけ頭が悪いんだ?」「全くもってナンセンスだ」と痛烈に批判していた。メルセデスは関連データと状況を国際自動車連盟(FIA)に報告・提出し、連携して対応にあたる方針だ。

今回の件を受け、F1を統括するFIAは声明を発表した。FIAは2023年、スポーツ界全体でネット上の誹謗中傷を排除することを目的とした「United Against Online Abuse」を立ち上げている。

「FIAおよびUnited Against Online Abuseキャンペーンは、あらゆる形の中傷やハラスメントを強く非難する。関係者全員が安全かつ敬意ある環境で活動できることが極めて重要だ。我々はキミ・アントネッリを支持し、ドライバー、チーム、オフィシャル、そしてスポーツ全体の関係者に対し、オンライン・オフラインを問わず、敬意と配慮をもって接することを強く求める」

スプリントに向けてグリッド上でレースエンジニアのピーター・ボニントンと話すアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、2025年11月29日(土) F1カタールGP(ロサイル・インターナショナル・サーキット)Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

スプリントに向けてグリッド上でレースエンジニアのピーター・ボニントンと話すアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、2025年11月29日(土) F1カタールGP(ロサイル・インターナショナル・サーキット)

F1カタールGP特集