決勝レース後のトップ3会見に出席する2位のオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年7月6日(日) F1イギリスGP決勝(シルバーストン・サーキット)
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マクラーレン反発…F1イギリスGPでピアストリに処分が科された理由―SC下での急制動で”不服の2位”

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2025年7月6日(日)に開催されたF1第12戦イギリスGPで、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)はセーフティーカー(SC)中の急減速が原因で10秒ペナルティを科され、目前に迫っていた勝利を逃し、2位に甘んじる結果となった。この裁定に対し、マクラーレンとピアストリは強く反発している。

「ブレーキを踏んだだけ」首位から転落

問題のシーンは21周目、SC明けのリスタート直前に起きた。ターン14〜15間のストレートでピアストリは、時速218kmから52kmまで急減速。調査の結果、ブレーキ圧は59.2psiに達していたことが判明した。

このブレーキングにより、背後を走行していたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は回避行動を強いられ、一時的にピアストリを追い越す形となったが、直後にポジションを返上した。

雨のシルバーストン・サーキットでマックス・フェルスタッペン(レッドブル)をリードするオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年7月6日F1イギリスGP決勝レースCourtesy Of McLaren

雨のシルバーストン・サーキットでマックス・フェルスタッペン(レッドブル)をリードするオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年7月6日F1イギリスGP決勝レース

レース後、ピアストリは「ブレーキを踏んだだけだよ。最初のリスタートのときと全く同じ動きだった」と述べ、「どうやらもうSCの後ろでブレーキを踏んじゃいけないらしい。直前の5周までは踏めたのにね」と皮肉混じりに語り、「ルールの範囲内だったと思ってる」と不満をにじませた。

さらに、「あの瞬間にSCのライトが消えて、それもかなり遅かったんだけど、その後は当然、自分のペースで走っていいわけだから加速しなかった。結果がこれさ」とも述べた。

「明確な違反」スチュワードの判断

ピアストリの行為について、ヴィタントニオ・リウッツィを含む4名のスチュワードは、「競技規則第55条15項に明確に違反した」との判断を下し、ペナルティガイドラインに基づき、10秒のタイムペナルティと2点のペナルティポイントを科した。直近12ヶ月間の累積は6点に達した。

同規定は、先頭車両に対して「SCのライトが消灯した時点から、他のドライバーに危険を及ぼすような不規則なブレーキングまたはその他の挙動を行わず、一定のペースで走行しなければならない」と定めている。

類似のケースとしては、2025年カナダGPでのジョージ・ラッセルの一件が記憶に新しい。この件では、ラッセルがSC導入中に「不必要かつ不規則」なブレーキングを行ったなどとして、レッドブルが異議を申し立てた。

調査の結果、スチュワードは「根拠がない」としてこれを却下するとともに、当時のラッセルの制動について「ブレーキ圧は約30psiであり、極端な急制動には該当しない」との判断を下した。今回のピアストリの59.2psiは、その約2倍に相当する。

マクラーレン陣営の反発と失望

この裁定に対し、マクラーレン陣営は不満を表明した。CEOのザク・ブラウンは「テレビ映像では確かにドラマチックに見えたが、テレメトリー上ではそれほど危険な挙動ではなかった。この手のペナルティでは、ある程度の主観が入ってしまう」と主張する。

「タイヤに熱を入れる目的で強くブレーキを踏む場合、ブレーキ圧は通常130〜140psiに達する。当時はウェットコンディションで、さらにSC解除の判断も遅かった。あれは極めて微妙な決定だった」

チーム代表のアンドレア・ステラも、セーフティーカー解除のタイミングが「比較的遅かった」ことについてFIAに意見を伝えたと明かし、それによりピアストリにはリスタートに向けて「隊列をコントロールする余地がほとんど残されていなかった」と主張した。

また、裁定の内容については「厳しすぎる」としつつも、「受け入れるしかない」とも語り、正式な異議申し立ては行わない意向を示した。

ピアストリ自身は「もちろん辛い。でも今日の痛みは、いつもと少し違う。すごく良いレースができていたし、本来ならもっと良い結果が得られたはずなのに、自分ではどうしようもない要因でそれを失ったからね」と悔しさをにじませた。

この裁定により、ピアストリは勝利を逃して2位に甘んじることとなり、ドライバーズランキング首位の座は保ったものの、2位のランド・ノリスとの差はわずか8ポイントにまで縮まった。


2025年F1第12戦イギリスGPでは、ランド・ノリス(マクラーレン)が3番グリッドから優勝。オスカー・ピアストリが2位でフィニッシュし、マクラーレンが1-2フィニッシュを飾った。3位には自身初となる表彰台獲得を果たしたニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)が続いた。

スパ・フランコルシャンを舞台とする次戦ベルギーGPは、7月25日のフリー走行1で幕を開ける。

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