ホーナー、Q2敗退の角田を「マックスと同等」と絶賛―その背景と”Eブースト問題”

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レッドブル・レーシングのチーム代表クリスチャン・ホーナーは、2025年F1第12戦イギリスGP予選で角田裕毅が直面した”ノーパワー問題”について、「Eブースト」が枯渇したためにラップタイムを失ったと説明した。

角田は5月初旬の第6戦マイアミGPを最後にQ3進出から遠ざかっており、シルバーストンでの巻き返しを狙っていた。だが、フライングラップ直前の最終コーナーの立ち上がりで加速が鈍く、0.115秒差でQ3進出を逃した。

電動パワー不足が明暗を分けた予選Q2

角田は予選後、このトラブルによりターン3までに「0.1秒」ほどを失ったと明かし、さらに複数のコーナーでも「通常通りのブースト」が得られなかったと説明。この問題さえなければ、Q3進出は可能だったとして、悔しさを滲ませた。

一方、ホーナーもこれを裏付けるように、「ラップの終盤に、“Eブースト”と我々が呼んでいる電動パワーが尽きてしまい、0.1秒ほどを失ったと彼は言っていた。非常にタイトな争いだったため、それがQ3進出の分かれ目になったのだろう」と振り返っている。

ただし、両者の発言には微妙な食い違いが見られる。角田はラップ序盤、ホーナーは終盤でのロスを強調しており、0.1秒の損失がどのセクションに起因するのかは明確ではない。あるいは、両方の区間で各々タイムを失っていた可能性も考えられる。この場合のロスは0.2秒ということになる。

「マックスと同等」の走りを見せた角田

チーム代表者会見でマイクを握るクリスチャン・ホーナー(レッドブル代表)、2025年7月4日(金) F1イギリスGP(シルバーストン・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

チーム代表者会見でマイクを握るクリスチャン・ホーナー(レッドブル代表)、2025年7月4日(金) F1イギリスGP(シルバーストン・サーキット)

ホーナーの説明だと、単にデプロイメントの配分を誤っただけとの印象も受けるが、彼が角田のシングルラップペースにある種の”萌芽”を見出していることは確かだ。実際、この日ポールポジションを獲得したマックス・フェルスタッペンに匹敵する走りだったと評価している。

ホーナーは、フェルスタッペンの走りを「途方もないパフォーマンス」と評した上で、「ユーキもそれと同等にファンタスティックなパフォーマンスを見せてくれた」と称賛。さらに「彼は間違いなく、このクルマに何かを見出した」と付け加えた。

データが物語る角田のスピード

驚異的なポールラップを刻んだフェルスタッペンと「同等」との評価は、確かに些か過大に聞こえるが、単なるリップサービスというわけでもなさそうだ。実際、予選Q2のデータがそれを物語っている。

両者のベストラップを比較すると、角田はパワーロスによる「0.1秒」の遅れを抱えたセクター1で0.215秒を失った一方、続くセクター2では巻き返し、フェルスタッペンとの差を0.07秒に抑え込んだ。

ただ、チャペル(ターン14)での加速が鈍く、また最終セクションのコーナリングでタイムを失い、セクター3では再び0.225秒をロス。トータルで0.510秒の差がついた。

ゆえに、デプロイメントの問題がなければ、この差は少なくともコンマ4秒程度に収まっていた可能性があり、さらにフロアの仕様の違いを加味すると、両者のタイムはより接近していた可能性が高い。

角田自身も手応えを実感

最終プラクティス前にインタビューを受けるアイザック・ハジャー(レーシング・ブルズ)と角田裕毅(レッドブル)、2025年7月5日(土) F1イギリスGP(シルバーストン・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

最終プラクティス前にインタビューを受けるアイザック・ハジャー(レーシング・ブルズ)と角田裕毅(レッドブル)、2025年7月5日(土) F1イギリスGP(シルバーストン・サーキット)

もっとも角田自身も、予選までは「かなり順調」だったと認め、「確実にペースは上がってきていましたし、与えられたマシンからしっかりとパフォーマンスを引き出せている実感もありました」として、手応えを得ていたことを明かしている。

オリバー・ベアマンのペナルティにより、決勝は11番手からのスタートと、エミリア・ロマーニャGP以来のポイント獲得に期待がかかるが、異様なペースダウンに見舞われた前戦での失速についてはまだ原因が完全に解明できておらず、不安要素が残っていることも事実だ。

それでも、ホーナーは「明日が非常に楽しみだ」と大きな期待を寄せている。


2025年F1イギリスGP予選では、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がポールポジションを獲得。これに続いたのはマクラーレン勢で、2番手にオスカー・ピアストリ、3番手にランド・ノリスが入った。

決勝レースは日本時間7月6日(日)23時にフォーメーションラップが開始され、1周5891mのシルバーストン・サーキットを52周する事でチャンピオンシップを争う。レースの模様はDAZNフジテレビNEXTで生配信・生中継される。

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