予選に向けて準備する角田裕毅(レッドブル)、2025年6月28日(土) F1オーストリアGP(レッドブル・リンク)
Courtesy Of Red Bull Content Pool

角田裕毅「まるでF1初体験」自信崩壊―不信感と手詰まり感、レッドブル母国GPで待ち受けていた”許されぬ結末”

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クルマに対する自信は今シーズン最高潮—週末に先立ち、そう語っていた角田裕毅(レッドブル)。だが、2025年F1第11戦オーストリアGPの決勝レースを終えた後、彼が見せたのは深い失望に沈んだ表情だった。

完走16台中16位、唯一の2周遅れ。チームのホームグランプリという最も結果を求められる舞台で、彼は「まるで初めてF1マシンをドライブしているかのような感覚でした」と、自らの惨状を表現するしかなかった。

金曜の手応えから土曜の悪夢へ

週末序盤の角田には、確かな手応えがあった。FP2以降はトップ10圏内を安定して走行し、マシンへの理解を一歩ずつ深めていく。レッドブルリンクの高速コーナーでも、RB21は彼の意図に応えているように見えた。

だが予選本番、すべてが暗転した。風と高気温の影響なのか、それとも別の要因なのか—マシンが豹変し、バランスが「完全に崩壊」。わずか0.091秒差という僅差でありながら、18番手でQ1敗退の憂き目に遭った。

それでも決勝での巻き返しに最後の望みを託した角田。だが運命は、31周目のターン4で彼に最後の試練を課した。フランコ・コラピント(アルピーヌ)のイン側への不用意な飛び込み、そして接触によるスピン誘発。10秒ペナルティという重い代償が科せられた。

ポジション争いを繰り広げるフランコ・コラピント(アルピーヌ)と角田裕毅(レッドブル)、2025年6月29日(日) F1オーストリアGP決勝(レッドブル・リンク)Courtesy Of Red Bull Content Pool

ポジション争いを繰り広げるフランコ・コラピント(アルピーヌ)と角田裕毅(レッドブル)、2025年6月29日(日) F1オーストリアGP決勝(レッドブル・リンク)

4台がリタイヤする追い風があったにも関わらず、待っていたのは最下位という残酷な現実。4戦連続ノーポイントが、レッドブルのホームグランプリで確定した瞬間だった。

謝罪と困惑—見えない原因への苛立ち

「自分のミスでした。彼に謝りたいですし…もちろん、レースをこんな形で終えることになってしまって、チームにも本当に申し訳ない気持ちです。許されることではありません」

「(仕掛けるのを)もう1周、待つべきだったかもしれません」

角田は接触の責任を率直に認めた。だが彼を真に苦しめているのは、この謝罪の向こう側にある技術的な謎だ。

レーシング・ブルズ時代の開幕2戦での好調ぶりを知るだけに、現在の状況は彼にとって理解不能に近い。

「データを確認しても、マックス(フェルスタッペン)と比べて、自分が具体的に何を間違えているのかがはっきり見えてこない」「さすがに全部が全部、僕が間違ってるとは考えにくい。結局、同じF1マシンであることに変わりはないので」という言葉からは、RB21に対する不信感すらにじみ出ていた。

ピットストップを行う角田裕毅(レッドブル)、2025年6月29日(日) F1オーストリアGP決勝(レッドブル・リンク)Courtesy Of Red Bull Content Pool

ピットストップを行う角田裕毅(レッドブル)、2025年6月29日(日) F1オーストリアGP決勝(レッドブル・リンク)

確かに接触による10秒ペナルティと余計なピットストップがリザルトを悪化させたが、それ抜きにしても、この日のペースは絶望的だった。

「正直、今日に関してはペース自体がすごく悪かったです。自分が本来いるべきレベル、少なくとも目指しているレベルと比べても、完全にかけ離れていました」

「自分が何かを大きく間違っているとは信じがたいのですが、それでも他のライバルとのペース差が大きすぎて」

なお、15周目のターン3で角田は、ランス・ストロール(アストンマーチン)と軽く接触。その際、いずれかのマシンからフロントウイングの翼端板が脱落している。不可解なペース不足の背景には、こうしたマシンの損傷が影響している可能性もあるが、現時点で詳細は明らかになっていない。

手詰まりからの脱却を求めて

「違ったアプローチ、違った視点から見てみる必要があるのかもしれません」

レッドブル昇格後、角田は一貫したアプローチでレースウィークエンドに臨んできた。だが、あまりの手詰まり感が彼を根本的な見直しへと駆り立てている。

シルバーストンまでの数日間、彼が取り組むのは徹底的な自己分析だ。ドライビングスタイルの見直し、フェルスタッペンとの詳細な比較分析—あらゆる角度から解決の糸口を探る構えを示した。

「もっとよく調べてみます。自分のドライビングスタイルで何か変えられることがあるのか、それともマックスが自分と違ってやっていることから何か学べることがあるのか」

「とにかく、改善のためにやれることは、どんなことでも全部やるつもりです」

今シーズン最高の自信から一転、迷宮に迷い込んだ角田。しかしながら、こうした苦境こそが真のブレークスルーの前触れとなることも少なくない。

次戦シルバーストンで彼が見せる走りは、再起への確かな一歩となるのか。それとも、迷走のトンネルをさらに深くさまよう序章となるのか。注目が集まる。

ポジション争いを繰り広げるフランコ・コラピント(アルピーヌ)と角田裕毅(レッドブル)、2025年6月29日(日) F1オーストリアGP決勝(レッドブル・リンク)Courtesy Of Red Bull Content Pool

ポジション争いを繰り広げるフランコ・コラピント(アルピーヌ)と角田裕毅(レッドブル)、2025年6月29日(日) F1オーストリアGP決勝(レッドブル・リンク)


2025年F1第11戦オーストリアGPでは、ランド・ノリスがポール・トゥ・ウインを飾り、オスカー・ピアストリが2位と、マクラーレンが1-2フィニッシュを達成。3位表彰台にシャルル・ルクレール(フェラーリ)が続く結果となった。

伝統のシルバーストン・サーキットを舞台とする次戦イギリスGPは、7月4日のフリー走行1で幕を開ける。

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