
僕の過ちを超えてゆけ─ガスリーが角田に託した静かな願い、レッドブル昇格の”現実”を知る男は親友の未来をどう見るか?
突然のレッドブル・レーシング昇格を果たした角田裕毅が、マックス・フェルスタッペンと対峙することの難しさを本当の意味で理解している者は少ない。そんな限られた経験を持つピエール・ガスリー(アルピーヌ)はいち早く、グリッド上の親友に貴重なアドバイスを与えた。
ガスリーが角田に伝えた過去の教訓
ガスリーは2019年シーズンに、当時のトロロッソ(現レーシング・ブルズ)からレッドブル・レーシングに昇格したが、わずか12戦で降格という苦い経験を持つ。その後、2021年からは角田のチームメイトとして2年間を共に過ごし、厚い友情を築いた。
2025年F1第3戦日本GPの開幕に先立ち、ガスリーは角田と連絡を取ったことを明かし、「電話では、自分があのチャンスをもらったときに何がうまくいかなかったか、違うやり方ができたんじゃないかっていう話をしたんだ」と説明した。
「今のユーキには経験があるし、スピードもある。僕はずっと彼の実力を信じてきたし、2年間一緒にレースして、その生粋の速さとポテンシャルを見てきた。彼は本当に速いドライバーだよ。それに個性も強い」
Courtesy Of Red Bull Content Pool
ドライバーズパレードに参加する角田裕毅(RBフォーミュラ1)とピエール・ガスリー(アルピーヌ)、2024年5月19日F1第7戦エミリア・ロマーニャGP決勝レース
レッドブル昇格の現実と“複雑な要素”
「レッドブル・レーシングで成功できるかって? 答えはイエスだ。でも、いろいろ複雑な要素もあるからどうなるかは分からない」と語るガスリーの言葉には、かつて自身が経験したプレッシャーと課題が滲んでいる。
「だから僕としては、ただ成功を祈って、自分の経験や考えを共有したんだ。時間がすべてを教えてくれるだろうけど、彼は間違いなく優れたドライバーだよ」
「今のF1には強いドライバーがたくさんいる。速さだけじゃない、ほかの要素も必要。でもユーキは今回のチャンスを最大限に活かせると信じてる」
その「複雑な要素」とは、レッドブルが持つ独特な組織文化や、評価基準の厳しさを意味しているものと思われる。
ガスリーは以前、自身がレッドブル降格処分を受けた件について、プレシーズンテストでの2度のクラッシュを経て「最初のミスをした瞬間から、徐々に周囲の態度が変わったように感じた」「メディアには叩かれ、チームのサポートも十分じゃなかった」と述べており、短期間で評価が急変する状況に苦しんだことを認めている。
また、何度もシート変更を求めたことでチーム側が不満を抱いたともされている。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
グリッド上でヘルムート・マルコと話をするレッドブル・ホンダのピエール・ガスリー、2019年F1ドイツGPにて
成熟した角田に“期待”と“信頼”
一方で、ガスリーは角田の成長についても高く評価している。
「ユーキには昔から速さがあったけど、運転が荒かったり、無線で感情的だったりすることもあった。でも今はミスも減らして成熟してきてる」
「F1では限界ギリギリを攻めるか、ちょっとやり過ぎるかの境界線があって、それが結果に直結する。ユーキはそのラインをうまく見極められるようになってる。ここ数シーズンのパフォーマンスはすごくいい」
また、自身が26戦のF1出走でレッドブルに昇格したのに対し、角田はすでに89戦の経験を持っている点にも触れ「いろんな課題に対処するうえで有利に働くだろう」と述べた。
「F1での経験が多いのは悪いことじゃない。経験を積めば積むほど、F1への理解も深まるし、チームワークの重要性も見えてくる。僕がうまくいかなかったのが経験不足のせいだったとは思わないけど、複雑な要因は確かにあった。ただ、経験が増えればより完成されたドライバーになれるのは間違いない」
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角田裕毅にガリを食べさせようとするピエール・ガスリーと嫌がる角田裕毅(アルファタウリ)、2022年9月29日にF1シンガポールGP舞台マリーナベイ市街地コースで行われた寿司ネタ目隠しクイズ