角田裕毅(レーシング・ブルズ)、レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコ、リアム・ローソン(レッドブル)、2025年
Courtesy Of Red Bull Content Pool

角田昇格の舞台裏―”全会一致”のローソン起用「間違いだった」とマルコ認める

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レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、2025年シーズンに向けて角田裕毅ではなくリアム・ローソンを優先して昇格させた判断について、「間違いだった」と認めた。

レッドブルは第3戦日本GPを前に、角田の本隊昇格およびローソンのレーシング・ブルズへの降格を発表。ローソンはわずか2戦でトップチームのシートを失った。これは2016年にダニール・クビアトが4戦で降格されたケースを下回る、レッドブル史上最短の在籍期間となった。

なぜ角田ではなくローソンを選んだのか?

レッドブルが2024年末にセルジオ・ペレスとの契約を解消した際、後任候補には、予選・決勝の双方で歴代チームメイトを凌駕してきた角田裕毅と、キャリアわずか11戦のリアム・ローソンの2名が挙がった。

だがチーム代表のクリスチャン・ホーナーやマルコを含め、チーム首脳陣の中で角田を推す者は一人もなく、「全会一致」でローソンが選出された。ローソンはリカルドの代役として好印象を残しており、レッドブルでのテスト走行でも高い評価を得ていた。

なぜこの時、角田を選ばなかったのか? 交代発表に先立ち、オーストリア紙「OE24」とのインタビューの中でマルコは、「ユーキはあまりに一貫性が欠如していた。だから我々はローソンを全会一致で選んだんだ」と振り返った。

エルマノス・ロドリゲス・サーキットのターン1脇のバリアに衝突する角田裕毅(RBフォーミュラ1)、2024年10月27日F1メキシコGP決勝レース1周目Courtesy Of Red Bull Content Pool

エルマノス・ロドリゲス・サーキットのターン1脇のバリアに衝突する角田裕毅(RBフォーミュラ1)、2024年10月27日F1メキシコGP決勝レース1周目

マルコ:ローソン起用は「間違いだった」

しかし、角田を選ばなかったこの決定は、マルコ曰く「間違い」だった。

ローソンはバーレーンでのプレシーズンテストから目立ったところがなく、開幕オーストラリアGPでは予選で最下位、決勝ではクラッシュによりリタイヤした。続く第2戦中国GPでも予選最下位に沈み、決勝は完走こそ果たしたものの、3台の失格の恩恵を受けてなおポイント圏外12位にとどまった。

レース後、チームはドバイで緊急会議を開催。会議にはホーナーやマルコ、筆頭株主チャルーム・ユーウィッタヤーらが出席した。情報筋によると、全会一致で角田の昇格とローソンの即時降格が決定された。

レッドブル昇格後のローソンについてマルコは「プレッシャーが増大する中、彼は結果を出せなかった。オーストラリアGPの初日から調子を崩し、そこから悪循環に陥った。それは“打たれたボクサー”のようなものだ。一度その状態に陥ると抜け出すのは非常に難しい」と振り返り、「そういう意味では、(ローソンを選んだのは)間違いだった」と認めた。

イベント会場でマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)を見つめるリアム・ローソン、2025年3月12日(水) F1オーストラリアGPプレビュー(アルバート・パーク・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

イベント会場でマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)を見つめるリアム・ローソン、2025年3月12日(水) F1オーストラリアGPプレビュー(アルバート・パーク・サーキット)

ローソン再評価の機会、最大の挑戦に臨む角田

マルコは、当初「最初の3~5戦」はローソンを見守るとしていたが、その方針も撤回された形となった。ただ、これでローソンのキャリアが絶たれたわけではない。レーシング・ブルズでの第2のチャンスが与えられた。

過去にはピエール・ガスリーが2019年に、アレックス・アルボンが2020年にレッドブルから降格したが、その後ガスリーはアルピーヌへ、アルボンはウィリアムズへ移籍し、それぞれが再評価されている。ローソンも再び評価を高められるか注目される。

一方で、角田にとって今回の交代劇はキャリア最大の転機となる。十分な準備期間もないまま、極めて神経質な挙動を示す「RB21」を、世界有数の難関コースである鈴鹿サーキットで初めてドライブすることになる。それでも、これまでのキャリアで培ってきた経験は、この大きな挑戦に立ち向かう土台となるはずだ。

現役最強のF1ワールドチャンピオン、マックス・フェルスタッペンを相手にどれだけ迫れるか。そしてマクラーレンやフェラーリが2台揃って安定して結果を残す中、チームにどれだけ貢献できるかが問われる。

マルコは「我々には強力なセカンドドライバーが必要だ。チーム戦略の観点からもね」と語り、角田への期待をにじませた。

レッドブル・レーシング昇格を経て宣材写真の撮影に臨む角田裕毅、2025年3月27日Courtesy Of Red Bull Content Pool

レッドブル・レーシング昇格を経て宣材写真の撮影に臨む角田裕毅、2025年3月27日

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