決勝レースを前に表情を引き締める角田裕毅(レーシング・ブルズ)、2025年3月23日(日) F1中国GP(上海インターナショナル・サーキット)
Courtesy Of Red Bull Content Pool

レッドブル昇格反対論…角田裕毅に警鐘―その”1つの差”の価値、ローソン後任をめぐる複雑な現在地

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2025年F1第3戦日本GPを前に、リアム・ローソンの後任としてレッドブルに昇格する可能性が取り沙汰されている角田裕毅について、元F1ドライバーのラルフ・シューマッハは、レーシング・ブルズに留まるべきだと警鐘を鳴らした。

曖昧なホーナー、過熱する鈴鹿交代報道

F1アカデミー第1戦レース1中に言葉を交わすスージー・ウルフ(F1アカデミー代表)とクリスチャン・ホーナー(レッドブル・レーシング代表)、2025年3月22日(土) F1アカデミー第1戦 レース1(上海インターナショナル・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

F1アカデミー第1戦レース1中に言葉を交わすスージー・ウルフ(F1アカデミー代表)とクリスチャン・ホーナー(レッドブル・レーシング代表)、2025年3月22日(土) F1アカデミー第1戦 レース1(上海インターナショナル・サーキット)

クリスチャン・ホーナー代表は、ローソンに対する「サポート」を明言しているが、それが自信を取り戻させるために姉妹チームへ“出戻り”させることなのか、それともレッドブルでのシート維持を指すのかは明確にされていない。

また、鈴鹿での交代劇の可能性を否定しなかったことから、今週木曜に英国ミルトンキーンズで開催されると見られる会合で、ドライバー交代が議論されるのは確実と考えられており、各国メディアはこぞって決断の時が近いと報じている。

独衛星テレビ「Sky Sport」でF1解説者を務めるシューマッハも、現時点では確定事項ではないとしつつも、「次戦に向けてローソンは既にレッドブルのシートを失ったようで、代わりに角田が乗るようだ。まだ正式には決まっていないが、どうやらそういうことらしい」と語った。

昇格に前向きな角田に対し「勧めない」とシューマッハ

角田は、鈴鹿でのレッドブル昇格について「100%準備はできています」と語り、「僕は今、好調です」とも発言。少なくとも公の場においては、レッドブル首脳陣に対するアピールとも受け取れる姿勢を見せており、昇格に前向きだ。

だが、シューマッハは「もし僕が角田のマネージャーなら、昇格は勧めない」とし、「今のレーシング・ブルズの方が良いクルマで、角田はそれを上手く乗りこなしている。わざわざ昇格するのは得策じゃない」と語り、今のレッドブルのマシンには、有望なキャリアを大きく損なうリスクを背負うほどの価値はない主張した。

「RB21」の特性が招くリスク、ローソン擁護の声も

シューマッハは一方で、ローソンにも一定の理解を示しており、「若い新人ドライバーが、何年もかけてマシン開発を担ってきた現代最強のドライバーと同じチームで走らなきゃならない状況なんだから、誰を隣に置いたって数戦で放出されるようなものだ」と擁護した。

レッドブルRB21をドライブするリアム・ローソン、2025年3月23日(日) F1中国GP決勝レース(上海インターナショナル・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

レッドブルRB21をドライブするリアム・ローソン、2025年3月23日(日) F1中国GP決勝レース(上海インターナショナル・サーキット)

実際、フェルスタッペンも指摘しているように、ローソンの不振はドライバーの能力というより、「RB21」の極端な特性に起因する可能性が高い。

狭いスイートスポット、シャープなフロント、そして不安定なリアという構造は、アレックス・アルボンやピエール・ガスリー、セルジオ・ペレスが攻略できずにチームを去った大きな要因だった。

さらに言えば、「RB21」は決してトップマシンではなく、フェルスタッペンに言わせれば「4番目」のクルマに過ぎない。一方で、レーシング・ブルズの「VCARB 02」は今季開幕2戦を通して安定して中団最上位を争っており、「5番目」のマシンとも位置づけられる。

「1番目」のクルマに乗れるならともかく、わずか1つ上のクルマに乗るために、有望なキャリアを犠牲しかねないリスクを負うべきかという議論は当然にあるだろう。そして、そのデビューの場が、母国ファンが駆けつける鈴鹿であればなおさらだ。

ジャック・ドゥーハン(アルピーヌ)とともにドライバーズパレードに向かうリアム・ローソン(レッドブル・レーシング)、2025年3月23日(日) F1中国GP(上海インターナショナル・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

ジャック・ドゥーハン(アルピーヌ)とともにドライバーズパレードに向かうリアム・ローソン(レッドブル・レーシング)、2025年3月23日(日) F1中国GP(上海インターナショナル・サーキット)

レッドブル、角田裕毅起用を発表

ハジャーやコラピントの可能性、拒否権の有無

無論、仮にローソンが交代となっても、後任が角田であるとは限らない。マルコはアイザック・ハジャーを高く評価しており、レースクラフトには課題があるものの、シングルラップのスピードでは角田に匹敵するポテンシャルを持つと見られている。

また、中国GPの週末には、マルコがアルピーヌのホスピタリティを訪れていたとの目撃情報もあり、フランコ・コラピントもサプライズ候補として浮上している。

ただし、この噂の出所がスペインメディアであることから、コラピント陣営が意図的に流した可能性は否定できない。アルゼンチン出身のコラピントの母国語はスペイン語であり、以前にも何度か、コラピント陣営がメディアを使って印象操作を行ったと見られるケースがあった。

加えて、仮にコラピントが候補であったとしても、レッドブルが実際に彼をシートに座らせるためには、リザーブ契約を結んでいるアルピーヌだけでなく、アルピーヌにレンタルしているウィリアムズからも許可を取らなければならず、状況はかなり複雑だ。

ドライバーズパレードにて談笑するレーシング・ブルズの角田裕毅とアイザック・ハジャー、2025年3月23日(日) F1中国GP決勝レース(上海インターナショナル・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

ドライバーズパレードにて談笑するレーシング・ブルズの角田裕毅とアイザック・ハジャー、2025年3月23日(日) F1中国GP決勝レース(上海インターナショナル・サーキット)

なお、仮にレッドブルが角田を指名し、角田自身もそれを望むのであれば、何ら問題は生じない。だが、そうでない場合――すなわち角田側が昇格を望まない場合に、その要請を拒否する権限が角田陣営にあるのかどうかは不明だ。

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