トップチェッカーを経てパルクフェルメでクルマの上に立ちガッツポーズを取るマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2024年6月9日(日) F1カナダGP決勝(ジル・ビルヌーブ・サーキット)
Courtesy Of Red Bull Content Pool

混沌5台DNF…フェルスタッペン「因果は巡る」逆転優勝! 角田裕毅は”謝罪”の入賞転落 / F1カナダGP 2024 《決勝》結果と詳報

  • Published: Updated:

2024シーズンのFIA-F1世界選手権第9戦カナダGPがモントリオール現地6月9日(日)に行われ、予選2番グリッドのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が波乱に富んだレースで逆転優勝を果たした。角田裕毅(RB)は入賞圏内を走行していたが残り5周でスピン。14位に終わった。

フルウェットから始まった70周のレースはその後、インターコンディションに変化するも再び雨が到来。それでも終盤に向けてはドライとなり、3名がリードラップを刻み、フェラーリ勢とウィリアムズ勢、そしてセルジオ・ペレス(レッドブル)がリタイヤするなど、例年通り混沌とした争いとなった。

F1カナダGPドライバー別タイヤ戦略、2024年6月9日(ジル・ビルヌーブ・サーキット)Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

F1カナダGPドライバー別タイヤ戦略、2024年6月9日(ジル・ビルヌーブ・サーキット)

ノリスとフェルスタッペンの明暗を分けたSC

ポールシッターのジョージ・ラッセル(メルセデス)は21周目までトップを維持していたものの、最終シケインでランド・ノリス(マクラーレン)に首位を奪われた。

その後、ローガン・サージェント(ウィリアムズ)がターン4でスピンを喫してリタイヤすると、23周目にセーフティーカー(SC)が導入された。ノリスにとっては不運、フェルスタッペンにとっては逆転の契機となった。

フェルスタッペンを含む上位勢が再度、インターミディエイトタイヤに履き替えた一方、SC導入のタイミングで既にピット入口付近を走行していたラップリーダーのノリスはもう1ラップ周回しなければならず、タイヤ交換後に3番手にポジションを落とす事となった。

フェルスタッペンのレースエンジニア、ジャンピエロ・ランビアーゼは、SCによってノリスに勝利のチャンスを奪われた今季のマイアミGPに触れて「因果は巡る!」と叫んだ。

ノリスはその後、2回目のSCが導入されると、オーバーカット狙いの2周のステイアウトを選択。戦略を含めて猛プッシュし、終盤に向けてラッセルの攻略には成功したものの、リードを取り戻すには至らず2位でフィニッシュした。

ノリスはレース後、チームの判断が遅れたためにピットストップのタイミングを逃し、その結果として勝つべきレースで敗北したとの考えを示した。

フェルスタッペンが優勝した傍ら、チームメイトのペレスは13番手を走行していた51周目、ターン6で単独スピンを喫してバリアに衝突。リアウィングが大破した状態でピットレーンへと戻り、そのままリタイヤした。危険な状態をもたらしたとしてスチュワードは、次戦での3グリッド降格ペナルティを科す決定を下した

表彰台に立つ優勝者マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2位ランド・ノリス(マクラーレン)、3位ジョージ・ラッセル(メルセデス)、2024年6月9日(日) F1カナダGP決勝(ジル・ビルヌーブ・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

表彰台に立つ優勝者マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2位ランド・ノリス(マクラーレン)、3位ジョージ・ラッセル(メルセデス)、2024年6月9日(日) F1カナダGP決勝(ジル・ビルヌーブ・サーキット)

角田裕毅、スピンで連続入賞潰える

角田裕毅は僚友ダニエル・リカルド共々、今回もスタートで蹴り出しが悪く1周目を終えて3ポジションダウンの11番手に後退したが、最初のSCでエステバン・オコン(アルピーヌ)、バルテリ・ボッタス(ザウバー)と並び唯一、使い古したインターでステイアウト。これにより7番手に浮上した。

終盤に向けてオコンとランス・ストロール(アストンマーチン)に追い抜きを許すと、RBは後方リカルドに角田裕毅とのバトルを許可した。

70周のレースの66周目、角田裕毅はターン9でコース外に飛び出し、濡れた芝生の上でスピンを喫してポイント圏外に転落すると、無念の14位でフィニッシュした。キャリア最長4戦連続入賞は叶わなかった。

無線を通して角田裕毅はチームに謝罪し、「理由は分からないけど、ブレーキングが酷く難しかった」と伝えた。

なお角田裕毅がレース前の国歌斉唱セレモニーに遅刻したとして、RBチームに10,000ユーロ(約169万円)の罰金が科された

リカルドは「クラッチが若干、滑った」ために、スタート前に車体が動いたとして5秒ペナルティを受けたが、フェルナンド・アロンソが6位、地元出身のストロールが7位入賞を果たしたアストンマーチン勢に続く8位でチェッカーを受けた。

角田裕毅の転落によりポイント圏内に浮上し、その後、チームメイトのオコンを交わしたピエール・ガスリーは9位を獲得した。オコンが10位に続いたことでアルピーヌは今季初のダブル入賞を果たしたが、チームオーダー論争が勃発した。

終盤に向けて2台揃ってポイント圏内を走行していたアルピーヌは、更なるポイントの加算に向け、9番手を走行していたオコンに対し、後続のガスリーを前に出すよう指示を出した。8番手を走行するリカルドの攻略が目的だった。

オコンは当初、これに従う事を拒否していたが、69周目のターン8で渋々、ガスリーに道を譲った。結局ガスリーはリカルドをオーバーテイクできずに終わったが、ポジションが戻される事はなく、ガスリーは9位、オコンは10位でフィニッシュした。

チームが最終的にポジションを戻さなかった事に腹を立てていたオコンは、順位入れ替えの指示を「意味不明」と非難し、当初は拒否しつつも最終的に従った自身を「ナイスガイ」と呼んだ。

ポイント圏内14位でレースを終えてピットレーンを歩く角田裕毅(RBフォーミュラ1)、2024年6月9日(日) F1カナダGP決勝(ジル・ビルヌーブ・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

ポイント圏内14位でレースを終えてピットレーンを歩く角田裕毅(RBフォーミュラ1)、2024年6月9日(日) F1カナダGP決勝(ジル・ビルヌーブ・サーキット)

フェラーリ、悪夢のダブルDNF

フェラーリにとっては悪夢のようなレースとなった。スタート時にエンジントラブルを報告したルクレールは、最初のSCを利用してピットイン。「パワーサイクル」を実行し、問題の解消に取り組んだ。チーム代表のフレデリック・バスールによるとエンジントラブルの影響で約15周に渡って80馬力を失っていたと言う。

長時間のピットストップにより戦線離脱した事から一発逆転を狙うべく、周りがインターを履く中、ハードタイヤでコースに出ていったが、路面はスリックには程遠く、その後、再びインターに交換。2週間前のモナコウィナーは序盤に周回遅れにされる事態となり、43周目にガレージにクルマを入れてリタイヤした。

ルクレールと同じく予選Q2敗退を喫したチームメイトのカルロス・サインツは、全くポジションを上げられないまま終盤に突入した。

そして54周目にスピンを喫すると、これを交わそうとしたアレックス・アルボン(ウィリアムズ)と衝突。2回目のSCを呼び込むと共に、両者揃ってリタイヤした。

フリーストップを得たメルセデス勢はこれを機に新品タイヤに履き替え、ポジションを維持したままコースに復帰。59周目にリスタートを迎えると、ピアストリ、ラッセル、ハミルトンの3名は激しい表彰台争いを繰り広げた。

ラッセルは63周目の最終シケインで3番手を走行するピアストリに仕掛けた際に接近。接触を避けるべくコース外に逃れた結果、 逆に後方のハミルトンにポジションを奪われ5番手に交代した。

ハミルトンは翌週にピアストリを攻略して表彰台を手にしたかに思われたが、ラッセルは残り5周でピアストリを交わすと、残り3周でハミルトンをオーバーテイク。逆転のポディウムを掴み取った。

レース序盤のヒーロー

ハース勢はスタートで唯一、インターではなくフルウェットタイヤを選択。14番手からスタートしたケビン・マグヌッセンは1周目を終えて8番手、17番グリッドに着いたニコ・ヒュルケンベルグは13番手に躍り出た。

しかしながら路面が乾き始めるとペースが落ち、4番手を走行していたマグヌッセンは6周目にピットイン。しかしながらタイヤの準備ができておらず、8.6秒もの静止時間を要して12番手でコースに戻ると、最終12位でレースを終えた。

一方のヒュルケンベルグはステイアウトし、中団に生まれた長い隊列の先頭を走り続け、13周目に角田裕毅にオーバーテイクを許した後、インターに交換。19番手でコースに復帰すると、再びフィールドを駆け上がっていき、9位ガスリーまで僅か0.803秒差の11位でチェッカーを受けた。

F1カナダGPの気温及び路面温度グラフ、2024年6月9日(ジル・ビルヌーブ・サーキット)Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

F1カナダGPの気温及び路面温度グラフ、2024年6月9日(ジル・ビルヌーブ・サーキット)

ハミルトン、今季ベストも「過去最悪」

1戦遅れで僚友ラッセルと同じアップグレード(新型フロントウイング)を手にしたハミルトンは、最終プラクティスでトップタイムを記録。ポールポジション争いに名乗りを上げた。

しかしながら、「ガレージから出るたびに、どういうわけか温度が低かった」と言い、予選になった途端にタイヤの温度があるべき数値より2、3℃低かったと説明し、これが足枷となって7番手に留まった。一方でラッセルはポールポジションを獲得した。

決勝では序盤にフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)に前を塞がれ、我慢のレースを強いられたが、セーフティーカー(SC)の導入を機としたピットストップによりアロンソを逆転。2回目のSCでフリーストップを得て新品タイヤを手にすると、最終盤に向けて白熱のチーム内バトルを展開し、残り8周で表彰台圏内に浮上した。

ただ、残り2周を前にした最終シケインでラッセルにオーバーテイクを許し、2025年にフェラーリに移籍する7度のF1ワールドチャンピオンは今季最上の4位でチェッカーを受けた。

ウォルフは無線を通して「ルイス、クルマがパフォーマンスを取り戻したのはポジティブだ。ここから頑張ろう」と声を掛けたが、ハミルトンがこれに応える事はなく、レース後のインタビューでは「これまでで最悪のドライブの一つだった」と振り返った。

2024年F1第9戦カナダGP決勝リザルト

Pos No Driver Team Laps Time PTS
1 1 マックス・フェルスタッペン レッドブル・ホンダRBPT 70 1:45:47.927 25
2 4 ランド・ノリス マクラーレン・メルセデス 70 +3.879s 18
3 63 ジョージ・ラッセル メルセデス 70 +4.317s 15
4 44 ルイス・ハミルトン メルセデス 70 +4.915s 13
5 81 オスカー・ピアストリ マクラーレン・メルセデス 70 +10.199s 10
6 14 フェルナンド・アロンソ アストンマーチン・メルセデス 70 +17.510s 8
7 18 ランス・ストロール アストンマーチン・メルセデス 70 +23.625s 6
8 3 ダニエル・リカルド RB ホンダRBPT 70 +28.672s 4
9 10 ピエール・ガスリー アルピーヌ・ルノー 70 +30.021s 2
10 31 エステバン・オコン アルピーヌ・ルノー 70 +30.313s 1
11 27 ニコ・ヒュルケンベルグ ハース・フェラーリ 70 +30.824s 0
12 20 ケビン・マグヌッセン ハース・フェラーリ 70 +31.253s 0
13 77 バルテリ・ボッタス ザウバー・フェラーリ 70 +40.487s 0
14 22 角田裕毅 RB ホンダRBPT 70 +52.694s 0
15 24 周冠宇 ザウバー・フェラーリ 69 +1 lap 0
NC 55 カルロス・サインツ フェラーリ 52 DNF 0
NC 23 アレックス・アルボン ウィリアムズ・メルセデス 52 DNF 0
NC 11 セルジオ・ペレス レッドブル・ホンダRBPT 51 DNF 0
NC 16 シャルル・ルクレール フェラーリ 40 DNF 0
NC 2 ローガン・サージェント ウィリアムズ・メルセデス 23 DNF 0

コンディション

天気晴れ
気温18℃
路面温度26℃

セッション概要

グランプリ名 F1カナダGP
レース種別 決勝
レース開始日時

サーキット

名称 ジル・ビルヌーブ・サーキット
設立 1978年
全長 4361m
コーナー数 14
周回方向 時計回り

F1カナダGP特集