アンドレッティ”全速前進”、既にスタッフは3桁に…F1参戦未承認もレッドブル含む競合から人材続々
未だF1参戦の承認が得られていないにも関わらず、アンドレッティ・グローバルはレッドブルを含む4つのトップチームから人材を引き抜く等、採用活動を全力で進めており、現時点でF1プロジェクトに携わるスタッフの数は3桁に達している。
統括団体の国際自動車連盟(FIA)によるゴーサインは出ているが、F1のステファノ・ドメニカリCEOが現行の10チームで「十分すぎる」と述べるなど、F1の商業権を持つ米リバティ・メディアはグリッドの拡大に消極的で、アンドレッティのエントリーは棚上げ状態となっている。
にも関わらずチームを率いるマイケル・アンドレッティは、英国シルバーストンにサテライトオフィスを立ち上げ稼働させ、米国インディアナ州フィッシャーズに大規模ファクトリーを着工し、数々のF1ベテランエンジニアをチームに招き入れるなど、参戦を当然の事として急速に準備を進めている。
テクニカル・ディレクターを務めるのはニック・チェスターだ。53才のイギリス人技術者はルノーやアルピーヌなど、20年に渡って英国エンストンのチームに在籍し、革新的なチューンド・マス・ダンパーの開発を通して2005年と2006年の2年連続のダブルタイトルに重要な役割を果たすなど、経験と実績の両方を兼ね備えた人物だ。
他にはウィリアムズやルノーで活躍した空力学のスペシャリスト、ジョン・トムリンソンがエアロダイナミクスの責任者を務め、マノーGPのテクニカルディレクターを務めるなど40年近いF1キャリアを誇るジョン・マックイリアムがチーフデザイナーに名を連ねている。
参戦の確約なき状態でのリクルーティングについて、米「Athletic」とのインタビューの中でチェスターは「このプロジェクトに人を集めるのが如何に簡単であったことか。ある意味、うれしい驚きだった」と語った。
「アンドレッティという名前は魅力的だ。白紙であるがゆえに非常に積極的なカルチャーが形成されやすい。レッドブル、フェラーリ、メルセデス、マクラーレンからの移籍組もいる。彼らは皆、新しい挑戦を望んでいた。新しい組織作りに関与できる可能性があるというのは本当に魅力的だ」
アンドレッティのF1プロジェクトに携わる従業員は120名以上に及んでおり、そのほとんどがテクニカルチームのメンバーだ。これは現行グリッドに並ぶ小規模F1チームのテクニカルチームとそれほど変わらない。スタッフはこの半年で1.5倍以上に増加した。
120名の内の約50名は、2028年からF1パワーユニット・サプライヤーとしてアンドレッティに心臓部を供給するゼネラルモーターズ(GM)のエンジニアだ。両組織の密接な連携は早くも始まっている。
アンドレッティが進めているのは組織作りだけではない。これだけのエンジニアを抱えている事からも想像できるように開発作業も進行中だ。
テクニカルチームのメンバーはCFD(数値流体力学)シミュレーションを通して現行の技術規則に対応する2023年型F1マシンの設計に取り組み、独ケルンにあるトヨタの風洞を使って60%スケールモデルをテスト。今年半ばにはサスペンション等を備えたフルサイズモデルの構築が計画されている。
チェスターによれば、GMのエンジニアはNASCARやスポーツカープログラムを含む他のレース分野での経験をもとに、既にチームに「強力な真の技術的専門知識」をもたらしているという。
一見、先走り過ぎとも思われるこのスピード感は、モータースポーツを知り尽くすアンドレッティだからこそとも言える。「競争力のあるレースカーを作るには時間がかかるんだ」とアンドレッティは語る。
「空力設計やシミュレーションなど、長期に渡る取り組みで既に大きな進展があったことを本当に嬉しく思う」
「我々はこのタスクを過小評価してはいない」
アンドレッティは2025年からの参戦を目指しているものの残された時間は1年足らずであり、F1経営陣の最終審査を突破したとしても2026年からの参戦が現実的と見られる。