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タイヤや気象条件にまつわる2023年F1統計:こんなにも多い未使用セット、最も暑かった意外なレース

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公式タイヤサプライヤーを務めるピレリの集計データを元に、タイヤと気象条件に関する”数字”から2023年シーズンのFIA-F1世界選手権を振り返ってみる。

走行距離~地球8周分

コンパウンド別の総走行距離のグラフ、2023年FIA-F1世界選手権Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

コンパウンド別の総走行距離のグラフ、2023年FIA-F1世界選手権

全22戦が行われた2023年シーズンで20台のマシンは計60,473周、距離にして307,925.8kmを走行した。1レースは概ね90分間であるため、20台のマシンは約33時間で地球8周分近い距離を走った事になる。

5種類のスリックコンパウンドの内、最も多くのマイレージを刻んだのは全戦で供給されたC3で、トータル105,499kmに達した。これは総走行距離の3分の1強に(36.57%)に相当する。

最も使用されなかったコンパウンドはC1で、総走行距離の5.73%に過ぎなかった。

スペインGP、日本GP、メキシコGPで供給されたプロトタイプタイヤのマイレージは計3,800km。全体の6.31%はインターミディエイトとエクストリーム・ウェットの雨用タイヤだった。

気温と路面温度~最暑はカタールに非ず

気温と路面温度に関する統計データ、2023年FIA-F1世界選手権Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

気温と路面温度に関する統計データ、2023年FIA-F1世界選手権

カタールGPではレース中にヘルメットを被ったまま嘔吐したり、激しい脱水症状によりリタイヤを余儀なくされたり、レース後にクルマから降りようとして失神しかけるなど過酷なコンディションが大きな話題となり、ジョージ・ラッセルは「まるでオーブンの中にいるようだった」とコメントしたが、意外にも2023年シーズンで最も気温が高いレースはアメリカGPだった。

サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)での土曜のスプリントレースでは34.7℃、日曜のグランプリでは32.8℃を記録した。対してカタールGPはナイトレースという事もあり、気温が32.7℃を超える事は一度もなかった。

カタールGPの過酷さは単に気温の高さだけでなく、高速コーナーが連なるコースレイアウトゆえの強烈な横G、安全懸念からの3ストップ戦略の義務化による終始の全力プッシュ走行、そして高い湿度と路面温度が組み合わさった事が大きな要因となったようだ。

一方で最も涼しかったのはオランダGPで、平均気温は15.1℃だった。

路面温度に関しては、ハンガリーGPの53.6℃が最も高く、ラスベガスGPの18.5℃が最も低かった。

最長スティント~ルーキーが記録

コンパウンド別の最長スティントランキング、2023年FIA-F1世界選手権Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

コンパウンド別の最長スティントランキング、2023年FIA-F1世界選手権

シーズンを通しての最長スティントは第2戦サウジアラビアGPで記録された。

初陣を経てF1でのキャリア2戦目に臨んだオスカー・ピアストリ(マクラーレン)は開始早々にピエール・ガスリー(アルピーヌ)と接触。フロントウイングが破損した事で1周目の終わりにピットストップを余儀なくされ、その際に履き替えたC2でチェッカーまで走り、302.5kmを記録した。

最も柔らかいC5での今季最長スティントはアゼルバイジャンGPの舞台、バクー市街地コースで記録された。バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)はスプリントの全てをC5で走破。17周、102kmを刻んだ。ボッタスはシルバーストンで32周(188.4km)を走り、最も硬いC1での最長スティントも記録した。

供給タイヤセット数~3割が未使用

2023年FIA-F1世界選手権に供給されたタイヤ数のグラフCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

2023年FIA-F1世界選手権に供給されたタイヤ数のグラフ

2023年は週末のフォーマットが3種類ある異例のシーズンだった。22戦の内の14戦は3回のプラクティスを行う従来型のスケジュールが採用されたが、6戦に関してはスプリント・フォーマットが採用され、残りの2戦では代替タイヤ配分方式(ATA)が試験導入された。

ピレリが供給したタイヤは計9,660セットに達したが、使用されたタイヤは6,847セットに過ぎなかった。

晴れ用のスリックは5,740セットが供給された。約17.4%に相当するおよそ1,000セットは1度も使用されなかった。更に732セットは1周以上、3周以下の履歴に留まった。

インターミディエイトとエクストリーム・ウェットはシーズンを通して1,304セットが未使用だった。スリックを含めると3割のタイヤが一度も使用される事なく役目を終えた計算だ。

深溝のエクストリーム・ウェットに関しては今年、装着はされたものの使用されなかったタイヤを次のイベントに持ち越す事を許可する「ストリップ&フィット」というアプローチが採られた。

タイヤ交換回数

タイヤ交換回数に関する統計データ、2023年FIA-F1世界選手権Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

タイヤ交換回数に関する統計データ、2023年FIA-F1世界選手権

土砂降りによる赤旗中断を余儀なくされたザントフォールト・サーキットでのオランダGPは、今年もっとも多くのタイヤ交換が行われたレースだった。

移り変わるコンディションにより、3種類のスリックに加えてインターとエクストリームウェットを含む全てのタイヤが投入され、合計82回のタイヤ交換が行われた。1台あたり4セットを投じた計算だ。

対照的にマイアミ・インターナショナル・オートドロームでのマイアミGPは、20名全てのドライバーがピットストップを1回しか行わず、シーズンを通して最もタイヤ交換回数が少ないレースとなった。

2023年シーズンを通したタイヤ交換回数はスプリントを含めて計871回だった。