角田裕毅、走りとペースに満足も「自ら全てを台無しにした」不満の矛先は…
僅か9周で切り上げた第1スティントに関する戦略的判断か、7.3秒もの静止時間を要したタイヤ交換作業の遅れか、それとも自らの不甲斐なさか。F1第12戦ハンガリーGPを15位で終えた角田裕毅(アルファタウリ)は落胆と失望をあらわにした。
4台が絡む玉突き事故の発生もあり、スタートにソフトタイヤを選んだ4名の中の1人である角田裕毅は、オープニングラップで6ポジションアップの11番手に浮上し、一気に入賞圏内を射程に捉えた。瞬発力のあるコンパウンドを選んだ判断が功を奏した。
その後は好ペースを刻んでランス・ストロール(アストンマーチン)のDRS圏内を走行していたが、後方のアレックス・アルボン(ウィリアムズ)が8周目にピットストップに動くとアルファタウリはその翌周に角田裕毅をピットインさせた。
ハンガロリンクはデグラデーションが比較的大きいためアンダーカットが有効だ。接近する後続がピットストップを行った場合、ポジションを守るためすぐさまカウンターを打つのがセオリーとなる。
だがこの際、左フロントタイヤの取り外し作業に手間取ったため、通常であれば2~3秒で済むところ、7.3秒もの時間を要してしまい、アルボンの後方2.3秒の位置でコースに戻っただけでなく、同じタイミングでピットストップを行った後続のバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)に対してもポジションを失った。
車両パフォーマンス部門のチーフエンジニアを務めるクラウディオ・バレストリは「ソフトタイヤ勢がピットに入ったためユーキをピットに呼び、第2スティントを引っ張るためにハードを履かせたが、通常よりも時間がかかってしまい、幾つかポジションを失った」と説明した。
AT04のペースは悪くはなかった。角田裕毅はラスト2周、全体で10番目に速い1分23秒269の自己ベストを刻んだ。これより速かったのはレッドブル、メルセデス、マクラーレン、フェラーリ、そしてフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)のトップチーム組だけだった。
レース後、インタビューに応じた角田裕毅は慎重に言葉を選びながら「レースペースは良かったですし、自分のパフォーマンスにも満足していますが…そのあと、僕達は全てを台無しにしてしまいました…本当に残念です」と語った。
何によってレースが台無しになってしまったのか明確にするよう求められると、暫くの沈黙を経て「ペースは良かったのですが、兎に角、自分たちがやった事が上手くいきませんでした」と答えを濁した。
不満を抱いている要素の一つは1回目のピットストップのタイミングかもしれない。「特にソフトコンパウンドに関しては、タイヤを上手くマネジメントできていました」との発言からは、もっと長く引っ張れたとの考えが読み取れる。
ハードからミディアムに履き替えた最終ピットストップのタイミングも要検討材料と言える。
先行してピットストップを終えたニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)に対してはポジションを失い、同じく先行して消化したアルボンとボッタスは更に上のポジションでフィニッシュした。
もう一つは、レースへと至る道程を完璧に積み上げる事ができなかった点にあるようだ。
FP1では自らのミスにより1セットしかない貴重な新型フロントウイングを破損。イベント2日目は僅差でQ1敗退を喫し、13位フィニッシュした復帰初戦の新たなチームメイト、ダニエル・リカルドに対して予選・決勝ともに先行を許した。
角田裕毅は「全体的に自分自身に苛立ちを感じています」として「全てをまとめ上げ、”日々”のパフォーマンスを最大限に発揮する事ができませんでした」と語った。
1週間後にはサマーブレイク前の最終戦、スパ・フランコルシャンでのベルギーGPが控えている。
角田裕毅は「学びのある1週間でした。自分たちのパフォーマンスを最大化していくために今日学んだことを活かしていきたいと思います」と付け加えた。
7月23日(日)にハンガロリンクで行われた2023年F1第12戦ハンガリーGP決勝レースでは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が2番グリッドからの逆転勝利を飾り、2位にランド・ノリス(マクラーレン)、3位表彰台にセルジオ・ペレス(レッドブル)が滑り込む結果となった。
スパ・フランコルシャンを舞台とする次戦ベルギーGPは7月28日のフリー走行1で幕を開ける。