アルファタウリF1、英国移転または売却…三者が購入候補との報道
スクーデリア・アルファタウリの売却話が再燃した。投資に対するリターンが低く、またシニアチームのレッドブルとのシナジー効果が十分に発揮できていないとの理由で、イギリスへの本拠移転、あるいは第3者への売却の可能性があるという。
F1人気の世界的な高まり、チームの運営費の低減に繋がる予算上限ルールの導入、新規参入を抑制する”参入障壁税”の導入などを背景に、F1チームの価値は過去最高水準に達している。
一度は鎮火も2023年開幕目前に再燃
伊ファエンツァのチームは旧トロロッソ時代を含め、これまでに幾度も売却の憶測が報じられてきた。
近年では創業者ディートリッヒ・マテシッツの健康不安と共に再び囁かれ、マテシッツの死去に伴いオリバー・ミンツラフがレッドブルF1ファミリーの事実上のトップに就任した事を受け、昨シーズン末にパドックを騒がせた。
ただ、レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコはその可能性を除外。一旦は鎮火したものの、2023年シーズンの開幕を目前に控えて再燃した。
独「Auto Motor und Sport」はバーレーンでのプレシーズンテスト最終日、角田裕毅とニック・デ・フリース擁するアルファタウリに「大きな変化が迫っている」として、英国ミルトンキーンズにあるレッドブルのファクトリー近郊に本拠を移転するか、あるいはチームの完全売却かの2つの可能性があると伝えた。
売却・移転計画の背景
背景の一つはレッドブルと比べて著しく低い収益性だという。
昨季ダブルタイトルのレッドブルがF1活動で黒字を叩き出す一方、アルファタウリは昨年のコンストラクターズ選手権で9位と分配金も少なく、株主の期待に応えられていないとされる。
また、ファクトリーがイタリアのファエンツァに置かれる一方、空力部門はイギリスのビスターという「非効率的」な運営モデルも一因で、更にはタイトルスポンサーであるレッドブル傘下のファッションブランド「アルファタウリ」も売上が芳しくなく、幾つかの店舗の閉鎖が検討されているという。
売却先最有力はハイテック
売却先の候補は現在、国際自動車連盟(FIA)に対して新規F1参戦を申請中とされるハイテック・レーシングチームとアンドレッティ、そしてF3アジアやフォーミュラ・リージョナル中東選手権などに参戦しているムンバイ・ファルコンズ・レーシングチームのオーナー、インドの億万長者だと伝えている。
中でも有力なのはオリバー・オークス率いる英国シルバーストンのレーシングチーム、ハイテックだという。例えば今季のFIA-F2選手権では、ハイテックがレッドブル・ジュニアのアイザック・ハジャーとジャック・クロフォードを起用するなど、両者は既に密接な関係にある。
株主の「正しい判断」を期待するレッドブル
報道を受け、率直な物言いで知られるレッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは肯定も否定もしなかった。
Sky Deutschlandとのインタビューの中でマルコは「一般的に我々は噂についてはコメントしない」とした上で、「コンストラクターズ選手権9位という昨年のアルファタウリの成績が満足できないことは理解できる」と語った。
また「タイトルを獲得したチームがある一方、もう一つのチームが9位なのであれば、シナジー効果は適切に機能していないようにみえるだろう」とも述べ、「全体として満足いく結果ではない。ビジネス上の観点から、我々の株主は正しい決定を下すだろう」と付け加えた。
売却の前提条件と影響
報道が事実だとしてアルファタウリを売却する場合は、2026年以降のカスタマーチーム確保が前提になるものと思われる。
レッドブルはフォードの技術供与を得て、次世代パワーユニット(PU)が導入される2026年に「レッドブル・パワートレインズ(RBPT)フォード」の名前を掲げてPUサプライヤーとして新規参戦する。
競争上の理由から供給先は複数ある事が望まれる。アルファタウリを失った場合、RBPTの供給先はレッドブル・レーシングの1チームとなりかねない。
また、ジュニア育成プログラムの全面的な見直しも予想される。
アルファタウリ(旧トロロッソ)は伝統的に、将来のレッドブル・ドライバー育成のためのインキュベーターとして機能してきた経緯があり、フェルスタッペンを筆頭に、アルファタウリから2023年のF1に参戦する角田裕毅など、数多くの才能をF1へと導いてきた。