仲睦まじい…引退を前に早くもF1復帰の”爆笑取引”をハミルトンに持ちかけるベッテル
引退レースを前にセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)は冗談交じりに、ルイス・ハミルトン(メルセデス)に対してF1復帰の取引を持ちかけた。ハミルトンが辞めたくなったら代わりに自分をメルセデスに乗せろという内容の取引を…。
フル参戦という点では1年の違いがあるものの、ハミルトンとベッテルは共に2007年にF1デビューを果たした”同期”であり、2008年以降のドライバーズタイトルの78.5%は両者の手にある。まさに、一時代を築き上げたと言える関係だ。
キャリア初期から中期にかけての2人の関係ははさほど近いものではなかったが、歳を重ね、お互いに丸くなり始め、社会問題や気候変動への言及・行動で意気投合するようになった。
F1アブダビGPの木曜会見で同席したハミルトンは、ベッテルとのバトルの思い出について質問されるとしばらく考え込んだ後、「セブは当時、ちょっと迷惑なやつだったよね」とニヤリと笑った。
これに対してベッテルが「本当に申し訳ないんだけど…バクーの一件は褒められたものじゃなかったよね(笑! あれは僕が悪かった。でも実はあの時から…」と口を挟むとハミルトンは「友情が深まったんだ!」と相づちを打った。
振り返れば2017年のアブダビGPの会見も”バクー事件”がネタとなった。
セーフティーカー先導中の19周目、先頭を走るハミルトンが減速。2番手ベッテルがこれに追突した。フロントウイングを壊したベッテルはハミルトンに横付けして猛抗議。怒りに我を忘れたのか、操作を誤ったベッテルは今度はハミルトンの左サイドに衝突した。
コロナ渦下で人生観を見つめ直したベッテルの関心は、徐々にF1から家族や環境問題、インクルージョンを含む幅広い社会問題へと移っていき、遂には2022年末を以て15年に渡るF1でのキャリアに終止符を打つ事を決断した。
ベッテルは少なくともしばらくの間はモータースポーツ活動への復帰の可能性を除外しているが、ハミルトンは35歳の友人が再びこのシリーズに戻ってくるだろうと考えている。
「僕らはいつも素晴らしいバトルを繰り広げてきたし、彼(アロンソ)もそうだけど、たぶん戻ってくるんじゃないかと思うんだよね」
「他にも復帰したドライバーがいるし、確かに君にとっての最後のレースだと僕は受け入れているけど、戻ってくるんじゃないかと思うんだ(笑」
ハミルトンは「F1には再び引き寄せる力がある。多くのドライバーもそうだと思ってる。そうだろ?」と問いかけるとベッテルは「取引しないか」と持ちかけた。
「(詳細は)外で話すとして、君が逃げ出したくなったら、僕が戻ってくるというのはどう?」
するとハミルトンは爆笑しながら「1レース毎に交代するもいいね」と話にノッた。
会見場での2人のやり取りもこれが見納めとなるかもしれない。4度の世界タイトルと53回のグランプリレースで勝利を挙げたF1史上最も偉大なるドライバー、セバスチャン・ベッテルは11月20日(日)のアブダビGPでF1に別れを告げる。