
角田裕毅への誹謗中傷―コラピント、過激ファンに自重を要求
2025年F1第7戦エミリア・ロマーニャGPの週末、SNS上で角田裕毅(レッドブル)に誹謗中傷が殺到する事態となった。この状況を受けフランコ・コラピント(アルピーヌ)は、自身の一部のファンに対し「敬意を払うべきだ」と呼びかけた。
発端となったのは、金曜フリー走行中に発生した進路妨害の場面。角田がコラピントに対しジェスチャーで不満を示したことで、一部のコラピントファンが反応。角田のSNSには人種差別的なコメントを含む中傷が殺到した。
英専門メディア『The Race』によるとコラピントは予選後、図らずも走行を妨害したことは事実であるとして、角田が怒るのは「当然」だと理解を示した。
問題のシーンが起きたのは、コラピントにとってアルピーヌでの走行初日となった金曜日だった。チームやマシンにまだ不慣れな状況下で、レースエンジニアとのコミュニケーションに齟齬が生じ、それが角田を含む他車への進路妨害につながったという。
実際、この意思疎通の不備は予選中にも影響を及ぼし、コラピントにはグリッド降格のペナルティが科されている。
コラピントはさらに、角田への誹謗中傷について「彼ら(ファン)はすごく情熱的だし、いつも反応が過激なんだ。敬意を払うべきだよ。それが僕らみんなの望んでることなんだ」と語り、ファンに節度ある行動を求めた。
また、SNSにおける現状についても懸念を表明し、「今のSNSには本当にヘイトが多い。もちろん、僕らドライバー全員に対して、冷静さとリスペクトを保ってほしいと思ってる」と語った。
一方の角田も今回の騒動について状況を把握しており、これは自身に対する個人攻撃というよりは、むしろ特定のファン層に見られる傾向の一部として受け止めているようで、コラピントの前任であるジャック・ドゥーハンが同様の事態に直面していたことに言及した。
角田は「自分の国のドライバーを応援したい気持ちはわかりますが、何を言ってもいいというわけではないと思います」とした上で、次のように続けた。
「僕がこう言ってるのは、自分がそうされたからというわけではありません。彼らはドゥーハンに対してあまりに酷く言っていましたよね? その影響は、彼の走りにも及んでいたと思います。」
「エネルギッシュなのは結構ですが、もっとコントロールしてほしいと思います。そのエネルギーは、他の部分でもっと良い形で使えると思うんです」
今回の騒動は、SNS上での過剰なファンダムの在り方が再び問われる契機となっている。特にドゥーハンに対しては、前戦マイアミGPにて本人および、その交際相手を含む家族に対する脅迫が行われ、24時間体制の警備が敷かれたことが報じられている。
コラピントのマネージャーであるジェイミー・キャンベル=ウォルターも以前、自身のSNSで「フランコを応援するつもりの中傷が、逆に彼自身に害を及ぼしている」と警鐘を鳴らし、「情熱は大切だが、侮辱や傲慢さではなく、敬意を持って応援してほしい」と訴えていた。
SNS上の誹謗中傷問題はF1に限らず、モータースポーツ全体で深刻な課題となっている。
国際自動車連盟(FIA)は、「United Against Online Abuse(ネット中傷と闘う連帯)」キャンペーンを展開。教育的・技術的・規制的アプローチを通じて、オンライン上の誹謗中傷の根絶を目指す取り組みを進めている。
なお、予選では角田、コラピントともにクラッシュを喫してQ1敗退と、いずれも厳しい週末となっている。