パルクフェルメに停められた3位オスカー・ピアストリと2位ランド・ノリスのマクラーレンMCL39、2025年5月18日(日) F1エミリア・ロマーニャGP決勝
Courtesy Of McLaren

マクラーレン失速、前夜に発行された2つのFIA技術指令―レッドブル勝利の裏で注目される規制内容

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イモラで開催された2025年F1エミリア・ロマーニャGPにおいて、レッドブルがマクラーレンを上回るパフォーマンスを見せた背景として、国際自動車連盟(FIA)が直前に発行したとされる2つの技術指令(TD)が影響を及ぼした可能性に注目が集まっている。

イモラにおける優勝候補はマクラーレンだった。オスカー・ピアストリがポールを獲得し、日曜日の決勝は路面温度45℃と気温も高く、さらには最も柔らかいレンジのタイヤコンパウンドが投入されるなど、あらゆる条件がマクラーレンの勝利を後押ししていた。

だが、実際に勝利を収めたのはマックス・フェルスタッペン(レッドブル)だった。その勝因として注目される要素は大きく3つある。

1つ目は、レッドブルRB21が得意とする高速コーナーがイモラに多かった点。2つ目は、スタート直後にピアストリをオーバーテイクし、クリーンエア下での安定した走行を確保できたこと。そして3つ目は、2戦連続で投入されたRB21のアップグレードが機能した点だ。

マイアミで投入された新型フロアは安定したダウンフォースを生み出し、イモラでは新設計のインレットによりサイドポッド周辺の気流が最適化された。さらに、リアサスペンションカバーとブレーキダクトの改良によって、タイヤ温度のマネジメント性能も向上していた。

だが、これらとは別に、新たな要素として注目されているのがFIAの技術指令だ。

2つの技術指令の内容とは?

英専門メディア『The Race』など幾つかの報道によれば、FIAはエミリア・ロマーニャGPに先立ち、以下の2つの技術指令を発行した。

  • スキッドブロックの材料と取り付け方法の明確化
    一部チームが車検を通過するために巧妙な方法を見つけたことを受け、スキッドブロックに使用できる材料やその取り付け方法が明確化された。これにより、低車高を狙う“抜け道”が封じられた可能性がある。
  • タイヤ冷却に関する技術的ガイダンス
    ホイールアセンブリやタイヤの冷却に関して、FIAとレッドブル間のやり取りが他チームにも共有され、複数の冷却手法が許可されないことが明確にされた。これにより、規則のグレーゾーンを突いた設計が排除された。

技術指令とは、膨大なテクニカル・レギュレーションの解釈を明確にするためにFIAが発行する補足文書だ。

F1は100分の1秒を争う世界であり、各チームは厳格な規則のもとで可能な限りの技術的工夫を追求している。そのため、ルールの抜け穴や曖昧な表現に対応する形で、FIAは必要に応じて技術指令を発行している。

イモラ・サーキットでサイド・バイ・サイドを繰り広げるマクラーレンのランド・ノリスとオスカー・ピアストリ、2025年5月18日(日) F1エミリア・ロマーニャGP決勝Courtesy Of McLaren

イモラ・サーキットでサイド・バイ・サイドを繰り広げるマクラーレンのランド・ノリスとオスカー・ピアストリ、2025年5月18日(日) F1エミリア・ロマーニャGP決勝

技術指令の影響は? レッドブルとマクラーレンの見解

レッドブルのチーム代表クリスチャン・ホーナーはイモラでの勝利後、「マクラーレンのパフォーマンスの低さに驚いた」と述べた。これは今回の技術指令がパフォーマンス差に影響した可能性を示唆したものと見られており、実際、レッドブルの内部関係者は、技術指令が影響した可能性を否定していないと伝えられている。

一方で、マクラーレンはこの2つの技術指令が自チームに影響を与えた可能性を否定している。複数のチーム関係者は、スキッドブロックの明確化は他のチームを対象としたものであり、MCL39に変更を加える必要はなかったと明言したと報じられている。

また、冷却に関する件についても、前戦マイアミGPで使用されたピアストリのマシンが技術検査を受け、エミリア・ロマーニャGPを前に、規則に適合していることが確認されており、マクラーレンのチーム代表アンドレア・ステラは、ライバルが“的外れな要素”に注目しているとして、影響を否定している。

2週間後に予定される更なるTD

FIAは、5月末のスペインGPより、フレキシブルウィングに関する新たな技術指令を導入する予定であり、これにより各チームはウィングの設計を見直し、厳格化される新しい検査に対応しなければならなくなる可能性がある。

フェラーリのチーム代表フレデリック・バスールは、「バルセロナではすべてのチームが新しいフロントウィングを持ち込むことになるだろう」と述べ、勢力図に変化が生じる可能性を示唆した。

F1における競争は、マシン設計や戦略だけでなく、技術規則の解釈とその運用によっても大きく左右される。今後のグランプリでは、FIAの技術指令が各チームのパフォーマンスにどのような影響を与えるのか、さらに注目が集まることになりそうだ。

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