メルセデス有利と目されるF1サウジアラビアGPでレッドブルがフェルスタッペンに期待を抱く理由
初開催を迎えるF1サウジアラビアGPの舞台、ジェッダ市街地コースはコースレイアウト的にメルセデス有利と広く予想されているが、レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコはむしろ、マックス・フェルスタッペンに期待と希望を抱いている。
ジェッダ市街地コースは2021年のF1カレンダーの中でスパ・フランコルシャンに次いで2番目に長い6.175kmの全長に27個ものコーナーを備える。これだけ聞くと低速コースかと思ってしまうが、以下のレイアウトを見れば明らかなようにその大部分は中高速コーナーだ。
F1マシンのダウンフォース量を以てすれば多くはストレートに等しく、トップギアでの走行が予想される。シミュレーションでの平均速度は252.8km/hという驚異的な数値で、プロモーターとF1は「世界最速のストリート・サーキット」を標榜する。
メルセデス陣営はジェッダがW12に適したコースと認めており、前戦カタールGPで温存した5基目のフレッシュなICE(内燃エンジン)を再び投入する考えだ。
メルセデスのトト・ウォルフ代表はジェッダについて「我々と相性の良いコース」と認めた上でロングストレートの存在に触れ「再びスパイシーなICEを使うつもりだ」と語った。
取り巻く状況はライバルに対して追い風であるように見えるが、ヘルムート・マルコは諦めていない。それどころか、むしろ期待を抱いている。彼がそう考えている理由は2つある。
オーストリア出身の元レーシングドライバーはSPORT1とのインタビューの中で、メルセデスがサウジアラビアGPで再度”ロケットエンジン”を使用するとの前提に立った上で、疑惑のリアウイングを封じられたために「(次戦以降の)彼らは0.4秒のアドバンテージを得る事ができない」と語った。
「ストレート速度という点で、カタールGPでのハミルトンの優位性はさほど大きくはなく、通常の範囲内に収まっていた。それはFIAが検査を強化した結果、メルセデスが非常に曲がりやすいリアウィングの使用をやめたからだ」
”たわみ”の証拠としてレッドブルが突きつけたメインプレーンとエンドプレートの接触部にある”スコアマーク”並びにトリック自体の存在をメルセデス側は否定しているが、レッドブルの要請を受けFIAは、F1カタールGPでリアウイングに関する新たな荷重検査を行った。
検査が行われる事は事前に全チームに告知されており、レッドブルはメルセデスがカタールGPで疑惑のウイングを使用しなかったと見ている。
ヘルムート・マルコに希望を抱かせるもう一つの理由はフェルスタッペン自身だ。24歳のオランダ人ドライバーはこれまで、概して”ドライバーズサーキット”と称される市街地コースで際立った才能を発揮してきた。
「ストリートサーキットにおけるマックスの強さを信頼している。モナコでは優勝し、バクーではタイヤトラブルが発生するまでは明らかに優位に立っていた。ジェッダではドライバーが再び違いを生み出す事ができると思う」とヘルムート・マルコは語った。
なおジェッダ市街地コースの設計を担当したヘルマン・ティルケは、メルセデスが持つ強力なエンジンがハミルトンを後押しする可能性を認めつつも「幾つかの高速コーナーがあるため、適切なセットアップを見出せればレッドブルが有利となる可能性もある」と指摘した。
ハミルトンは前戦カタールGPでポール・トゥ・ウインを飾り25点を手にした。ブラジルからの2連勝によってフェルスタッペンのリードは8点にまで縮まった。だが残りは2戦。サウジアラビアGPでフェルスタッペンに勝利を許せば8度目のタイトル獲得は絶望的な状況となる。逆に言えば、フェルスタッペンにとっては決定的なチャンスとなり得る。