レッドブルのマックス・フェルスタッペンとフェラーリのキミ・ライコネン、2018年9月25日F1メキシコGPにて
Courtesy Of Red Bull Content Pool

ライコネンを彷彿とさせる「無関心」なフェルスタッペンと、社会問題に積極関与するハミルトン

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ジャン・トッド国際自動車連盟(FIA)会長は才能とキャラクターという点で、キミ・ライコネン(アルファロメオ)とマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が似たタイプだと考えている。

2021年末を以て任期満了でFIA会長職を退任する75歳の元フェラーリ・チームマネージャーはRaceFansとのインタビューの中で、2007年に跳馬でF1タイトルを獲得した冷静沈着で無口なフィンランド人ドライバーとオランダの若き才能を比較した。

FIAのジャン・トッド会長Courtesy Of Red Bull Content Pool

FIAのジャン・トッド会長

「マックスは少しキミに似ている。とても素直で、才能に溢れ、限られた事にしか興味を示さないという点でね。無関心なんだ」とトッドは語った。

フェルスタッペンは自身初のワールドチャンピオンを懸けてルイス・ハミルトン(メルセデス)と壮絶なバトルを繰り広げているが、例え今年タイトルが獲れなかったとしても「僕の人生が変わるわけじゃない」と口にするなど、気負いやプレッシャーは皆無に見える。

実際フェルスタッペンはカタールでのレース2日後に自宅に戻るやいなや、友人の求めに応じて次戦サウジアラビアGPの舞台、ジェッダ市街地コースの予習を一旦放り出してシムレースに参加したりと、緊迫したタイトル争いの当事者とは思えない素振りを見せる。

そんなフェルスタッペンと相対するハミルトンは次戦の結果如何でライバルにタイトルを許す状況にあるが、「ブレオナ・テイラーを殺した警官を逮捕せよ」とのメッセージが入ったTシャツを着用するなどして、過去に何度かFIAと対立した事がある。

ジャン・トッドは「別のやり方があったのでは」と感じた事を認めつつも、ハミルトンの事は「好き」であり「尊敬している」と言う。

「もちろん長年に渡って最高のチームに所属して最強のマシンをドライブしているわけで、そうでない場合と比べて容易な状況にある事は事実だが、私は彼が長きに渡って活躍している事を高く評価している」

「それに彼には情熱がある。彼が(政治や社会問題に)積極的に関与している事はとても良い事だと思っている。私は彼の関わり方に常に賛成というわけではないが、彼には信念があり、それを表現しているわけだから、私としてはそれを尊重している」

「時々、別のやり方があるのではないかと思う事もあるが、(政治や社会問題に)関わりたいという彼の気持ちと、彼が重要だと考えているそうした問題において彼自身が重要な役割を持つ人間でありたいと思っている事に関してはリスペクトしている」

ルイス「単なるドライバーとして記憶されたくない」

「Arrest the cops who killed Breonna Taylor(ブレオナ・テイラーを殺した警官を逮捕せよ)」と書かれたTシャツを着用するメルセデスAMGペトロナスF1チームのルイス・ハミルトン、2020年F1トスカーナGPにてCourtesy Of Daimler AG

「Arrest the cops who killed Breonna Taylor(ブレオナ・テイラーを殺した警官を逮捕せよ)」と書かれたTシャツを着用するメルセデスAMGペトロナスF1チームのルイス・ハミルトン、2020年F1トスカーナGPにて

ハミルトンがフェルスタッペンを下して今季のタイトル戦を制した場合、ジャン・トッドがミハエル・シューマッハと共に打ち立てた7冠の金字塔は塗り替えられる事になるが、本人はあまり気に留めてはいないようだ。

「今の時点で既に、7度のタイトルを獲得したチャンピオンが2人いる。ある意味、記録は常に破られる可能性があるという事だ」とジャン・トッドは語る。

「私はプライドを持って話す時にこう言うんだ。いいかい、F1ではより多くの勝利を収めている者がいるが、その者はスポーツカーやラリー、クロスカントリーでは勝利を収めていないとね。だから今はまだ、その点において私の方が彼らに勝っているんだよ!」

ジャン・トッドは日産やトヨタのコ・ドライバーとしてからラリー競技で活躍した後、プジョーのマネージャーとして世界ラリー選手権(WRC)への参戦を継続。その後はチーム監督としてスポーツカー世界選手権に進出し、1992年と1993年にル・マン24時間レースを連覇するなど、様々なシリーズと立場で好成績を残している。