2021年7月17日のF1イギリスGPスプリント予選を終えて健闘を称え合うレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンとメルセデスのルイス・ハミルトン
Courtesy Of Daimler AG

金に物を言わせて逃げ切る事は出来ない…予算上限と次世代マシン導入が生んだ熾烈なタイトル争い

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レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンとメルセデスのルイス・ハミルトンよる一進一退の熾烈なシーソーゲームの背景には予選上限ルールと次世代マシン導入がある…F1のスポーティング・ディレクターを務めるロス・ブラウンはそう考えている。

第16戦トルコGPで2位フィニッシュしたフェルスタッペンは、5位に終わったハミルトンからポイントリーダーの座を奪い返した。シーズン全22戦を経て、ついたポイント差は僅か6点だ。

両者は3月の開幕バーレーン以降、僅差のチャンピオンシップを戦ってきた。フェルスタッペンは7勝、ハミルトンは5勝を挙げている。特に過去7戦の鍔迫り合いは非常にタイトで、この間に両者の差が8ポイントを超えた事は一度もない。

ロス・ブラウンはイスタンブール・パークでの週末を終え、恒例のコラムの中で「コストキャップ並びに来季のルール変更が、接戦かつ激しいこのチャンピオンシップに好影響を与えていることは間違いない」と綴った。

かつてミハエル・シューマッハと共にフェラーリによる支配的な時代を築き上げたロス・ブラウンは、リソースと成績との間に密接な関係がある事を実体験を以て理解している。投資家として名高いローレンス・ストロールがアストンマーチンを買収して世界選手権制覇を目指しているのもまた、金とを注ぎ込めば注ぎ込むほどパフォーマンスが向上すると知っての事だ。

今シーズンの最大のルール変更の一つは、F1史上初めて導入されたコストキャップ、つまり予算制限だ。財政格差の縮小はパフォーマンスレベルの平準化をもたらすと期待されていた。

2021年シーズンは1億4500万ドル(約164億7,300万円)に設定され、2022年には1億4000万ドル(約159億円)、2023年には1億3500万ドル(約153億3,700万円)へと段階的に引き下げられていく。

「チャンピオンシップに大量の資源を注ぎ込み、それを使って逃げ切ろうとする余地は(今季の)チームにはない」とロス・ブラウンは語る。

「リソースが限られている上に、チームは多くの時間とリソースを必要とする来年のマシン開発に集中している」

「これらの事がチャンピオンシップの接戦に繋がっているのだ」

「我々は今でも実力主義を望んでいる。やはり一番強いチームに勝って欲しいのだ。だが、他の誰よりも豊富な予算があるという理由で、あるチームが圧倒的に勝つ事は望んでいない」

「物事が進展しているのは喜ばしい事だ」

通常、トップチームはシーズン終盤まで当季用のマシン開発を継続するが、ドライバー及びコンストラクター両選手権での8連覇を目指す王者メルセデスは6月の時点で既に今季型W12のマシンの開発を中止し、リソースを来シーズンに向けている。

こうした激しい争いが繰り広げられている事から、今シーズンを「黄金期」と見做す向きもあり、敢えて2022年に大規模なレギュレーション変更を実施する必要はないのではとの声も聞かれる。

だがロス・ブラウンは「今年のチャンピオンシップはスリル満点だが、それでもなおマシンが互いに接近し切れず、オーバーテイクのチャンスを作りあぐねているという事実がある」として、規制変更は必要不可欠だと強調する。

「2022年のルールは一夜にして状況を変えるものではないが、レースを改善していく上で遥かに優れたプラットフォームを提供する事になると思う」

「新ルールが定着すれば、将来的にはホイール・トゥ・ホイールのアクションを伴う素晴らしいレースやチャンピオンシップが見られるようになると確信している」

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