レッドブル・ホンダ:”2021年開発終了”とのメルセデス代表発言を虚言と捉えるクリスチャン・ホーナー
V6時代の王者はこれまでに幾度となく「苦戦」を口にしながらもそれを覆してきた。それ故にメルセデスF1チームは実際のほどはさておき「三味線を弾いている」との慣用句と共に語られる事が多く、もはや枕詞になりつつあるが、それは日本国内だけの話ではない。
レッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表は、今シーズンはこれ以上アップグレードを持ち込まないとするメルセデスのトト・ウォルフ代表の発言を信用していない。
W12の開発を打ち切ったメルセデス
第8戦シュタイアーマルクGPでマックス・フェルスタッペンに大差で破れたルイス・ハミルトンはレース直後、ドライバーの腕だけでやれる事には限界があるとして、チームに対して何らかのアップグレードを持ち込むよう求めた。
レッドブル・ホンダの4連勝を許した事でメルセデスとハミルトンはドライバーズ選手権でフェルスタッペンに対して18点、コンストラクターズ選手権では40点のリードを許す事となった。ギャップはじわじわと広がりつつある。
ハミルトンの発言についてチームの最高経営責任者(CEO)でありチームプリンシパルでもあるトト・ウォルフは、次世代車両が導入される今後数シーズンを考慮し、既に開発リソースを来季のレギュレーションに集中させていると明かした。
更に、今季型マシン「W12」の今後のアップグレードについては「今のところ考えていない」と述べ、W12用の空力開発の件についてはハミルトンとの間で既に話し合っており、予算と人材を来季に回す事が合理的な判断という事で理解を得ていると主張した。
つまりメルセデスは今後、新たな空力パーツを投入する事なしに、セットアップやタイヤ、パワーユニットやドライビングの最適化のみによって、パフォーマンスを上げていく事になる。
なお冒頭の発言に関してハミルトンはレース後会見の中で「無論僕らはアップグレードや改善を望んでいるけど、それは現在カードに載っていないと思ってる。もちろん、ブリーフィングではそれについて話すけどね」と述べ、マシン改良の予定はないとしている。
継続開発を明言するレッドブル・ホンダ
対するレッドブル・ホンダはRB16Bのアップデートを絶えず続けており、今後も更なる開発を予定している。
クリスチャン・ホーナー代表は「我々はトトが何処かに光を当てたがる人物だという事を知っている」として「私には彼らが残りのシーズンでクルマに一つもコンポーネントを載せずに過ごすとは信じられない」と述べ、必ずや自分達と同じ様にアップグレードを持ち込んでくるはずだとの考えを示した。
フェラーリのように既に今季用の開発を完全に終えているチームや、そもそも今季型マシンの開発を一切行っていないハースのような例外もあるが、今年1年に力を割き過ぎると向こう数シーズンを大きく損なう可能性があるだけに、この問題は全てのチームの頭痛の種となっている。
2022年以降のF1では追い抜きを促進すべく、アンダーフロアのダウンフォースを増加させる事で複雑なボディーワークを一掃する。フロントウイングやサスペンションは簡素化され、18インチのロープロファイルタイヤが導入されるなど、外観からして大きな変貌を遂げる。
こうしたレギュレーション改革はチーム間序列に地殻変動をもたらす可能性がある。それはV6ハイブリッドが導入された2014年以降にメルセデスが前例無き支配体制を築いてきた事からも明らかだ。
ただクリスチャン・ホーナー代表は「今シーズンの限界的な利益と来年の大きなステップとのバランスを取る」だけだとして、それは「これまでと何ら変わりない」と主張した。
なおフェルスタッペンは、チャンピオンシップ制覇を目指すべく続けられている今シーズン向けの開発にリソースを投じるというチームの方針が来季の競争力に影響を与える事はないと考えている。
フェルスタッペンは「今季を重視する事で来年向けの開発が損なわれているのではという懸念を抱いているか?」と問われると次のように答えた。
「他のチームの状況は知らないけど、僕らはほぼ毎レース毎にマシンを改良している」
「今のところ妥協があるとは考えていないし、それは来年になれば分かる事だけど、僕としては今シーズンに対するチームのアプローチに全面的に同意している」