
ハースF1チーム
チームデータ
| チーム名 | ハースF1チーム |
|---|---|
| 国籍 | アメリカ |
| 本拠地 | バンベリー / イギリス |
| 参戦初年度 | 2016年 |
| WEBサイト | www.haasf1team.com |
| SNS | x facebook instagram |
ハースF1チーム(Haas F1 Team)は、2016年にFIA-F1世界選手権への参戦を開始したアメリカ資本のレーシングコンストラクター。本拠地はアメリカ・ノースカロライナ州カナポリス、欧州拠点はイギリス・バンベリーに置かれ、F1では珍しい米英伊三極体制で運営されている。
参戦以降の立ち位置は一貫して中団グループであり、2025年シーズンはコンストラクターズ選手権8位で終えた。決してタイトル争いには絡まないものの、継続的にポイントを獲得できる戦力を維持している。
Courtesy Of Haas
ハースの小松礼雄代表と、トヨタ自動車株式会社の豊田章男会長、GAZOO Racing Companyの高橋智也プレジデント、2024年10月11日技術提携発表会見にて
技術面の最大の特徴は、フェラーリとの密接な提携だ。パワーユニット、ギアボックス、リアサスペンションなど、規定で認められる限りのコンポーネントを購入し、設計部門の一部をマラネロに置くことで、最小限の自社開発でF1参戦を成立させている点が、ハースの最大の強みであり、同時に独自性となっている。
チームの成立と歴史
Courtesy Of Haas F1 Team
ジーン・ハースとギュンター・シュタイナー
ハースF1チームは、NASCARの強豪チーム「スチュワート・ハース・レーシング」の創設者ジーン・ハースによって設立された。ジーン・ハースはかつてUS F1チームへの出資を検討したが、最終的に撤退。その後、より現実的なF1参戦モデルを模索する中で決定的な役割を果たしたのが、初代チーム代表であるギュンター・シュタイナーだった。
シュタイナーは2004年、レッドブルがジャガー・レーシングを買収した際に同チームのテクニカル・オペレーション・ディレクターに就任したが、後に加わったエイドリアン・ニューウェイにその役割を奪われる形となり、その後はチーム・レッドブルのテクニカル・ディレクターとしてNASCARでの新チーム立ち上げに関与。ノースカロライナ州に移住し、2008年4月に退任した。
シュタイナーはそのまま米国にとどまり、2009年にファイバーワークス・グループを共同創業し、米国モータースポーツ界での基盤を構築。ジーン・ハースと接触し、「自前主義を捨て、既存トップチームと最大限提携する」というF1参戦モデルを提案した。そして、新チーム設立に向けて中核人材を集めると同時に、全F1チーム代表へのヒアリングを実施し、成功例と失敗例を徹底的に分析した。
こうしてダラーラとのシャシー製作契約、フェラーリとの技術提携が成立。2014年4月14日、シュタイナーは正式にハースF1チームのチーム代表に就任し、2年の準備期間を経て2016年にF1参戦を果たした。これは、アメリカのF1コンストラクターとして30年ぶりの新規参戦でもあった。
主な戦績・実績(2025年終了時点)
Courtesy Of Haas
ハースVF-16をドライブするロマン・グロージャンとエステバン・グティエレス、2016年F1オーストラリアGP予選(アルバート・パーク・サーキット)
ハースF1チームは、参戦以来コンストラクターズタイトルおよびドライバーズタイトルを獲得していない。勝利数・表彰台数もいずれもゼロであり、純粋な戦績面ではF1の中堅以下に位置する。
だが、デビュー戦となった2016年開幕戦オーストラリアGPでは、ロマン・グロージャンが6位入賞、8ポイント獲得という快挙を達成した。新規参戦チームがデビュー戦で入賞するのは、2002年のトヨタF1レーシング以来であり、この結果はハースの参戦モデルの即効性を象徴する出来事となった。
- コンストラクターズ制覇:0回
- ドライバーズ制覇:0回
- 参戦年数:10年
- 参戦:214戦
- 勝利数:0回
- ポールポジション:0回
- 表彰台:0回
- 最前列:0回
- 最速ラップ:3回
- リードラップ:0周
- ポイント:386点
チーム史上最高成績は、2018年シーズンのコンストラクターズ選手権5位。この年はケビン・マグヌッセンとロマン・グロージャンのコンビが安定して入賞を重ね、中団上位に定着した。
また単発のハイライトとして、2022年サンパウロGPのスプリント予選でマグヌッセンがポールポジションを獲得が挙げられる。本予選ではないため、正式なポールではないものの、これはチーム史における最も象徴的な成果の一つと位置づけられる。
Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.
予選2位のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、ポールのケビン・マグヌッセン(ハース)、3位のジョージ・ラッセル(メルセデス)、2022年11月11日F1サンパウロGP
組織体制・運営構造
チームオーナーは創設者ジーン・ハース。2024年からは、シュタイナーに代わり小松礼雄がチーム代表を務めている。小松は長年ハースのレースエンジニアリング部門を支えてきた人物であり、現場主導型の運営体制への転換を象徴する人事となった。
技術部門は、フェラーリとの提携を前提とした構造となっており、車体設計はイタリア・マラネロに置かれた設計部門とダラーラが担う。一方、レース運営および開発統括はイギリス・バンベリーのファクトリーで行われている。このバンベリー拠点は、旧マルシャF1チームが使用していた施設を引き継いだものだ。
トヨタとの提携
Courtesy Of Haas
小松綾雄氏とジーン・ハース氏、そしてトヨタ自動車株式会社会長の豊田章男氏、2025年12月4日
2024年10月、ハースはトヨタ自動車のモータースポーツ部門であるTOYOTA GAZOO Racing(TGR)と、技術および人材交流を軸とする戦略的提携に合意したことを発表した。
この提携は、パワーユニット供給や株式出資を伴うものではなく、ハースが継続してフェラーリ製パワーユニットおよびトランスミッションを使用する体制に変更はない。一方で、トヨタが長年にわたりFIA世界耐久選手権(WEC)や市販車開発で培ってきた複合素材、製造プロセス、シミュレーション技術、人材がハース側に供与される。具体的な協力内容としては、以下が挙げられている。
- TGR Europeの風洞施設(ケルン)を活用した技術検証
- TGRの育成ドライバー、エンジニア、メカニックのハースF1テスト走行への参加
- TGRのエンジニアおよびメカニックのF1マシン空力開発への参画
この提携の背景には、ハースが小松礼雄体制(2024年~)のもとで、現場技術力の底上げと中長期的な組織強化を重視している点がある。フェラーリとの提携が「即戦力コンポーネントの調達」に主眼を置くものであるのに対し、トヨタとの協力は人材・プロセス・開発基盤の強化に焦点を当てたものと位置づけられる。
なお、トヨタは2009年末にF1から撤退して以降、F1世界選手権へのワークス参戦は行っていないが、本提携により間接的な形で再びF1技術領域と関与することとなった。一方のハースにとっては、フェラーリ一極依存ではない補完的な技術パートナーを得た初の事例となる。