マクラーレンの2004年型F1マシン「MP4-19」に搭載されていたメルセデス・ベンツ製3リッターV10エンジン「FO 110Q」細部
Courtesy Of Stephan Bauer ©2020 Courtesy of RM Sotheby

軽自動車より安く買えるメルセデスF1-V10エンジン…ライコネン駆った2004年のマクラーレン「MP4-19」に搭載

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最初の数シーズンこそ「掃除機のよう」等と揶揄されたV6ハイブリッド・ターボのサウンドだが、7年も経つとそうした批判を目にする機会もない。だが、それは何も現行パワーユニットのエキゾーストノートが素晴らしいという事を意味しない。

好き嫌いという主観の問題故に、人それぞれに好きなエンジンサウンドというものは異なるだろう。とは言え、1995年から2005年まで続いたV10エンジン時代を推す声は少なくないと思う。超高回転型の自然吸気エンジンが奏でる甲高いエキゾーストノート。その音を聞くためだけに高額な入場料を支払う価値があった。

マクラーレンの2004年型F1マシン「MP4-19」に搭載されていたメルセデス・ベンツ製3リッターV10エンジン「FO 110Q」全景

このほど、マクラーレンの2004年型F1マシン「MP4-19」に搭載されていたメルセデス・ベンツ製の3リッターV10エンジン「FO 110Q」がRMサザビーズに出品され、軽自動車を新車で買うよりも安い金額で落札された。昨今の黄色ナンバー車の新車価格は200万円を超える事もしばしばだ。

最高回転数18,300rpm、900馬力を発揮するメルセデス製2997ccのV型10気筒F1エンジンは、鬼才エイドリアン・ニューウェイが設計した車体に載せられていた。ステアリングを握ったのはデイビッド・クルサードとキミ・ライコネンだ。

残念ながら、2004年のメルセデスエンジンはシャシー共々信頼性を欠いていた。予選専用エンジンが禁止された翌年、F1では週末に使用可能なエンジンを1基に制限するいわゆる「1グランプリ1エンジン」が導入されたが、メルセデスは対応を誤り、また、ニューウェイが設計した「MP4-19」は儚くそして脆く、ライコネンは開幕3戦を含む8レースでフィニッシュできず、シーズンを通してのリタイヤ率は44%に達した。クルサードも4回のリタイヤを喫し、この年のウォーキングのチームはコンストラクター5位に甘んじた。

マクラーレンの2004年型F1マシン「MP4-19」に搭載されていたメルセデス・ベンツ製3リッターV10エンジン「FO 110Q」全景

マクラーレンの2004年型F1マシン「MP4-19」に搭載されていたメルセデス・ベンツ製3リッターV10エンジン「FO 110Q」細部

マクラーレンの2004年型F1マシン「MP4-19」に搭載されていたメルセデス・ベンツ製3リッターV10エンジン「FO 110Q」細部

オークションに出品された「FO 110Q」は当初、4万~5万ユーロ(約500万円~620万円)の落札予想価格が付けられていたが、実際にはわずか1万2,600ユーロ、日本円にして約156万円で落札された。実に掘り出し物感があり、背伸びをすれば手が届きそうな価格だ。

ただ、コンロッドとピストンが欠品との事で、再び火を入れる事は難しそうだ。予想を下回る落札価格の理由の一つはそういうことなのだろう。

とは言え、それは紛うことなき古き良き時代の自然吸気だ。現行の1.6Lハイブリッド・ターボはパワー、トルク、熱効率の全てで先代を凌駕しているものの、サウンドという点に関しては明らかに劣っている。ノスタルジックを求める一部の愛好家にとっては、再びV10ミュージックを奏でる事がないとしても、それは十分に所有欲を満たしてくれる事だろう。

マクラーレンの2004年型F1マシン「MP4-19」に搭載されていたメルセデス・ベンツ製3リッターV10エンジン「FO 110Q」全景

マクラーレンの2004年型F1マシン「MP4-19」に搭載されていたメルセデス・ベンツ製3リッターV10エンジン「FO 110Q」細部