
F1:3連戦の嵐…トップチームも例外ではないスペアパーツ不足の懸念
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行を受け改定された2020年シーズンのF1カレンダーは、7月5日のレッドブル・リンクでの開幕オーストリアGPを皮切りに、1週間を挟んでトリプルヘッダーが2連続で行われる超強硬日程で、ムジェロとの契約が決まれば3連戦が3連続で続く可能性すらある。
F1の商業権を持つリバティ・メディアはシュピールベルクでの開幕直前に再び修正版のカレンダーを発表する見通しだが、最終的なスケジュールがどうであれ、F1チームは前例のない連続開催に直面しており、これが従来とは異なる独特の頭痛の種を生み出している。
メルセデスF1の車体開発ファクトリー、ブラックリーの製造加工機械
その1つがスペアパーツの不足だ。高価でユニークな一点物のF1のパーツは自動車用品店で買う事ができず、予期せぬトラブルやクラッシュによって破損あるいは故障した場合の交換に備える必要がある。アクシデントはレースに付き物であるため予備パーツの確保は欠かせない。
ただ、実際に使うかどうかも分からない高額なものに十分なリソースを投じる事ができるチームは限られており、資金が豊富でない独立系チームは少なからず常にこの手の問題を抱えているが、今回ばかりはトップチームも例外ではないようだ。
チャンピオンチームのメルセデスAMGは、通常であればこうした問題とは無縁のレースウィークを過ごすものの、ロブ・トーマス最高執行責任者(COO)は「サーキットに持ち込むパーツを如何にして確保するかという点で、ファクトリーの人間にとって本当に頭が痛い問題だ」と説明する。
「2レースが行われる場合、仮に第1レースで問題が発生してもスペアパーツがあるため第2レースは大抵の場合なんとかなるものだが、これに3戦目が加わると、突然パーツを使い果たしてしまう可能性が出てくる」
「スペアパーツを数多く用意する事もできるが、それは非常に高く付く。無駄にはしたくないし、効率的でなければならない。だから判断が難しい」
フロントウイングは特に破損の可能性が高いパーツの1つ
ではメルセデスは一体この問題にどう対処しようとしているのだろうか?
トーマスCOOによると、まずは破損や摩耗による交換ニーズが高いパーツをリストアップし、これをファクトリーで50%ないしは75%まで製造。いわゆる仕掛品を作っておき、実際に不足が発生した段階で、これを元に迅速に完成品を作り上げ現場に供給する方法を検討しているのだという。
不測の事態に備えて製造作業を行うためには、これを見越してリソースを確保しておく必要があるが、メルセデスは既にオートクレーブやマシニングセンタと言ったファクトリー内の加工機械などのメンテナンスを前倒しで行い、通常とは異なる慌ただしさのオンシーズンに対して万全を期している。
トーマスCOOは「今後6ヶ月間が完全に手一杯になることは分かっている。だからこそそれに備えて、システムをベストな状態にしておく事が非常に重要なのだ」と付け加えた。
このスペアパーツ不足問題が、フリー走行、予選、決勝の各セッションへのアプローチやドライビングにどのように影響するかは1つ興味深いところだ。