トロロッソのトランスポーターに描かれたレッドブルとホンダのロゴ
Courtesy Of Honda

性能・信頼性・ワークス待遇…レッドブルはホンダとルノーのどちらのエンジンを選ぶのか?

  • Published:

ホンダとレッドブルがパートナーシップを締結するかどうか、すなわち「レッドブル・ホンダ」が誕生するか否かというのは、今シーズンの最も注目度の高い話題の1つであるが、ホンダF1を率いる田辺豊治は「供給交渉は自らの職務ではない」として口を固く閉ざしており、現時点では先行きを予想する材料は少ない。

レッドブルとそのエンジンパートナーであるルノーとの関係は、F1に1.6リッターV6ハイブリッド・ターボが導入された2014年以降悪化の一途を辿っており、ルノー側は今季末で満了を迎える契約更新に消極的な姿勢を示している。軋轢が生まれた背景には「信頼性不足」と「ルノー・ワークスの誕生」という2つ要因が挙げられる。

コンストラクター3位に終わった2017年シーズン、レッドブルRB13はエンジンの信頼性不足のために13回ものリタイヤを強いられた。チーム代表のクリスチャン・ホーナーは「信頼性不足のために逃したポイントは160近くにも達する」と述べ不快感をあらわに。パワーユニット時代に突入して以降の両者は毎年のように非難合戦を続けている。

2016年、ルノーは選手権4連覇を果たしたレッドブルとのワークス関係を解消し、単なるエンジンサプライヤーという肩書を捨てワークスチームとしてF1に復帰した。今のルノーは、レッドブルではなく自チームの為にレースを行っており、チャンピオンシップでは敵対関係にある。

前戦中国GPにおいては、両者のほころんだ関係を示唆するかのような出来事も見受けられた。土曜3回目のフリー走行の際にダニエル・リカルドのエンジンが白煙を上げストップ。ルノー側が組み立て済みのエンジンをプールしておかなかったがために、レッドブルのクルーは2時間という予選までの限られた時間の多くを本来であれば不要な作業に費やす必要に迫られた。

メルセデスとフェラーリがレッドブルにエンジンを提供する可能性はゼロ。グリッドで最も速いシャシーを持つ最大のライバルに翼を授けるつもりなどあろうはずもなく、レッドブルにとってはホンダが唯一の代替プランとなっている。傘下のトロロッソが今年ホンダと組んでいるが故に、レッドブル首脳陣はホンダ製エンジンの詳細なデータを確認できる立場にある。

両者のパフォーマンス差は如何ほどか?今季のルノーエンジン「R.E.17」は信頼性を最重要視して開発されたものの性能面も向上。予選モードも1周あたり1秒近いパフォーマンスを発揮するなど実用レベルにまで到達、着実な進化をみせている。ただし、ホンダとの間に差があったとしても、それは大きなものではない。

昨年のルノーエンジンを知るトロロッソも当のルノーも、昨年末の時点で既に両者の性能差は殆どなく、拮抗していた事を明かしている。フランツ・トスト代表が関係性の素晴らしさ、すなわちワークス待遇に心躍らせていることからも明らかなように、性能に遜色がないのであれば、ワークスとしての特権が大きなファクターとなる事に疑いはない。

優勝という自ら掲げた目標を達成するためには、ホンダとしてもレッドブルとの提携は欠かせない。だが、ルノーとレッドブルとの関係を見れば明らかなように、望みのものを提供できなければマクラーレン時代の二の舞になるのは必至。来季エンジンに自信が持てないようであれば、ホンダ側が自ら申し出を断る可能性もあるだろう。