段差ノーズ
段差ノーズとは、2012年のレギュレーションで規定されたドライバーに対する安全性確保のための規定よる産物。皮肉を込めて「カモノハシノーズ」などとも呼ばれる。
これはクラッシュ時に、クラッシュしたマシンのノーズが他のマシンの側面を貫通しドライバーに致命傷を与えることを防ぐための安全性対策として生まれたもので、具体的にはモノコック終端の150mm前方のノーズの最大高が基準面から550mmに制限される。モノコック終端の最大高は625mmなので、625mm-550mm=75mmの高低差が生まれてしまい段差ができてしまうのだ。
だったらモノコックの高さをノーズに合わせればいいんじゃない?
そうだ。確かにその通りなのだ。そうすれば我々はだっさいカモノハシノーズを見なくて済む。
実際2012年シーズンのマクラーレンMP4-27には段差ノーズがなく、ノーズの最大高にモノコックの高さを合わせている。しかしマクラーレンはその前年からモノコックの高さを上限である625mmいっぱいまで使っていなかったのだ。
CC By: Gil Abrantes
車体の下に流れる空気の量を減らしたくない
なぜ各チームはノーズの最大高にモノコックの高さを合わせてカッコイイF1マシンを作らなかったのか?それはひとえに「ダウンフォース」を減らしたくないというパフォーマンス上の問題があったからだ。
「レギュレーションが変わり、ノーズが高くなりすぎないよう、ノーズボックスの高さが制限された。しかしきれいな空気の流れをマシンの下に流すため、シャシーはできるだけ高くしたい。CT01の形状は、そのためのソリューションだ」via : 今年はカモノハシノーズがトレンド とガスコイン-AUTOSPORT web
ケータハムのチーフテクニカルオフィサーであるマイク・ガスコインが、2012年型マシンCT01について上記のように語るように、ダウンフォースを減らしたくないがために生まれたデザインが段差ノーズなのだ。
モノコックの高さをノーズの高さに合わせて下げると、車体と路面との隙間が少なくなり、車体の下に流れる空気量が減る。するとマシンを地面に押し付けるダウンフォースが少なくなってしまい、高速でコーナーを走ることが困難になる。
マクラーレンの場合は元々モノコックの高さが低くてもダウンフォースを確保できるようなシャーシデザインになっていたため段差ノーズを採用する必要がなかったが、他のチームはそうではなかったためやむを得ずカモノハシになったというわけ。
しかしこの段差ノーズ、あまりにも評判が良くなかったため、翌2013年シーズンではこの段差を隠すための化粧パネルを装着することが可能になり、サーキットに生息していたカモノハシは絶滅することと相成った。