
フロービズ
フロービス(英:Flow Visualization Paint / Flow Viz)とは、レーシングマシンの表面を流れる空気の流れを視覚的に確認するために使用される、色付きの液体を指す。
この手法は、従来から風洞実験などで活用されてきたが、2010年にマクラーレンが初めて実際のサーキットで使用。翌年にはルノー、ロータス、レッドブル、フェラーリがトラックテストで採用し、以降F1チームの空力評価に欠かせない技術となった。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
ビームウイングとディフューザーにフロービズを塗って鈴鹿サーキットを周回するマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2023年9月21日F1日本GPフリー走行
実走行での空力測定
F1チームは新たなエアロパーツを開発する際、風洞実験やCFD(数値流体力学)シミュレーションを活用し、その効果を事前に検証する。しかし、ラボ環境と実際のサーキットでは条件が異なり、理論通りの性能を発揮できるとは限らない。
そのため、新パーツを実際にマシンに装着し、トラック上で走行させることで、シミュレーション結果と実測データの相関を取る作業が必要となる。
しかし、風洞実験のようにコンピューターグラフィックで気流を可視化することはできず、現実世界では超能力でもない限り、空気の流れを肉眼で見ることは不可能である。そこで役立つのがフロービジュアルペイントだ。
Courtesy Of Williams
赤色のフロービズが塗られたウィリアムズ「FW46」をドライブするアレックス・アルボン、2024年2月21日F1プレシーズンテスト初日バーレーン・インターナショナル・サーキット
フロービスの用途と仕組み
フロービスは、シーズン中のテストや各グランプリのフリー走行において、新エアロパーツの空力特性を確認するために使用される。
色は様々で、グリーンが一般的だが、青や白など、各チームがマシンのカラーリングに応じて目立ちやすい色を選択する。
また、他チームの視線を避けるため、ブラックライトで発光する特殊な塗料を使用するケースもある。
フロービスは、パラフィンをベースとした揮発性の液体、またはゲル化しない特性を持つオイルに色素を混ぜて作られる。
使用時は、スプレーやブラシでマシン表面に塗布。揮発性が高いため、走行中に液体部分が蒸発し、残った塗料が車体表面を流れる空気の経路を可視化する。
以下の動画では、フェラーリの風洞実験で使用されるフロービジュアルペイントの様子を確認できる。
フロービスと並ぶ空力測定ツール
フロービスと同様に、マシンの空力特性を測定するデバイスとして、以下のツールが使用される。
これらの手法を駆使し、F1チームはマシンの空力性能を最適化し、コンマ1秒を争う開発競争を繰り広げている。