マクラーレンSPからの緊急参戦が決まったケビン・マグヌッセン、2021年6月18日インディカー・シリーズ第9戦ロード・アメリカのプラクティス1
Courtesy Of INDYCAR

馬鹿げていた…ラッセルに代えてマグヌッセン起用を検討していたウィリアムズ

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元ハースF1ドライバーのケビン・マグヌッセンは自伝「Alt eller intet」の中で、ジョージ・ラッセルに代わって2021年シーズンのF1に残留するオプションがあった事を明らかにした。

マグヌッセンは2014年にマクラーレンでデビューを飾り、ルノーを経て4シーズンに渡ってロマン・グロージャンと共にハースからF1を戦ったが、米ノースカロライナ州カナポリスのチームは昨年末を以て経験豊富な2人を一斉放出した。

マグヌッセンは以前、母国デンマーク誌Dossierに対して「ハースよりも悪いチーム」から2021年の契約オファーを受けたことを明かす一方、チーム名への具体的な言及は避けていたが、どうやらこれはウィリアムズの事だったようだ。

デンマークのテレビ局TV3 SPORTによると、マグヌッセンは11月1日発売の新書の中でウィリアムズと交渉の席に付いていた事を明かした。ただ、移籍に際して持ち込み資金やスポンサーを要求された事から「マクラーレンとルノー時代の繰り返しになる」としてに難色を示したと言う。

マグヌッセンにとって「全くの驚き」だったのは、自身がウィリアムズに加わった場合にシートを失うのがニコラス・ラティフィではなくラッセルだという事だった。

マグヌッセンは、GP3とFIA-F2選手権参戦初年度にチャンピオンを獲得した英国のホープ、ラッセルを蹴落としてカナダ人大富豪の子息を起用し続けるというチームの判断は「馬鹿げている」と感じたと言う。

結局、ラッセルを放出してラティフィを残すというウィリアムズの方針と金銭問題が相まって、マグヌッセンはかつて名門と謳われた英国グローブのチームとの交渉を打ち切ったと言う。

ラッセルに関しては2021年に先立って既に、バルテリ・ボッタスの後任としてメルセデス移籍が取り沙汰されていた。ウィリアムズがそうなる事を覚悟してマグヌッセンにアプローチしていたのだとすれば馬鹿げてはおらず合点がいく話だが、上層部が資金優先の方針を持っていた事を裏付けるような噂は確かにあった。

ウィリアムズの新オーナーとなったドリルトン・キャピタルはチームに多額のキャッシュをもたらすペイドライバー2名との長期契約を望んでいたとされており、実際、レーシングポイントを追われたセルジオ・ペレスがウィリアムズ入りするのではとの噂が流れ、こうした状況を受けてラッセルが他チームとの接触を開始したと伝えられた。

なおマグヌッセンは2018年にフェラーリから非公式に打診があり、ハースの同意を得て密かに無報酬でシミュレータードライバーとしての役割を担っていたという。

この年は後にフェラーリのワークスドライバーとなるシャルル・ルクレールがフル参戦を果たしたシーズンだった。

ルクレールは開幕3戦でノーポイントと奮わぬスタートを切ったものの、第4戦で6位入賞を果たすと、続く5レースで4度のポイント獲得を飾ってマラネロの首脳陣に感銘を与え、翌2019年に跳馬のシートを手に入れた。

マグヌッセンは仮にルクレールがデビューイヤーにシーズンを通して奮わなければ、自身が「フェラーリのドライバーになっていたかもしれないと今でも思っている」と綴っている。

F1を離れたマグヌッセンはクローズドコックピットのIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に転向。キャデラック・チップ・ガナッシ・レーシングと共に第4戦デトロイトで初優勝を飾った。また、父ヤンと共にタッグを組んだ今季のル・マン24時間レースではLMP2クラス17位でレースを終えている。