理由はお金?それとも…ハースF1がグロージャンとマグヌッセンを同時に放出した訳と来季ラインナップの見通し
ハースF1チームは何故、ロマン・グロージャンとケビン・マグヌッセンという経験豊富な2人のドライバーとの契約を更新せず、一斉放出したのだろうか? チームは「2・3週間前」に決断を下し、アイフェルGPを終えた先週、その事実を2人に告げた。
第12戦ポルトガルGPの週末を前に、グロージャンとマグヌッセンは各々、ソーシャルメディアを通して2020年シーズン限りでのハース離脱を発表。その30分後に、チームから正式アナウンスが行われた。
グロージャンは2016年のチーム設立以来、ハースのレギュラードライバーを務めてきた。マグヌッセンはグロージャンに遅れること1年後にチームに加入した。時に暴れん坊との評価を受ける事もあったこのコンビは、4年間に渡ってハースを主導してきたが、それも今季が見納めだ。
新ドライバーの決定急がず
後任ドライバーが決定していない状況で2人との契約を更新しない決断を下すのは何とも不可解であるが、アルガルベ・サーキットに姿を見せたギュンター・シュタイナー代表は、この対応は2人への礼儀の表れだと主張した。
「彼らに対して公平でありたいと思っていた。自分達の事を考えれば、もう少し発表を遅らせる事もできたが、彼らと我々は過去数年に渡って上手くやってきたわけで、2人に他のチャンスを見つけられる機会を与えるため、我々は今後幾つかの変更を行うつもりであることを伝えた」
「仮に来季のドライバーラインナップが決定した段階で彼らに(放出の事実を)伝える事になれば、来シーズンのチャンスを見つけられる可能性が少なくなってしまうだろう。それは年末になる可能性もあるわけだからね」
シュタイナー代表は「名前や数字の話はしたくない。もう少し辛抱して欲しい」として、来季ドライバーの具体的な名前や発表時期などについての言及を避けたが、「明日中に決断しなければならない理由はない。自信を以て決断を下せるようになるまでは時間が必要だ」とも述べ、決定を急ぐつもりはないとした。
2021年のラインナップを一新する理由
パワー不足のフェラーリ製F1パワーユニットを搭載するハースはダメージリミテーションのシーズンを送っており、11戦を終えた今、コンストラクターズ選手権9位と低迷している。新しい技術規約の導入が2022年に延期され、車体開発に制限が課される状況を踏まえると、来季も競争力不足の苦しいシーズンとなる事が予想される。
シュタイナー代表は「来年はもっと良くなると思うし、もっと良くなることを願っている。それにもっと良くなるよう努力している」として状況改善への期待感を示したが、同時に「失うものが何もない状況」であるとも述べ、2021年に向けてドライバーラインナップを一新した理由を次のように説明した。
「我々は前進するための変化を望んでいた。予算上限ルールにどう対処すべきか、どこにお金を投資するのかについて検討しなければならない。だからこそ、我々は現状を変えたいと考えた。それに、2022年に導入される新しいレギュレーションに備えなければならない」
「来年は(チャンピオンシップ5位を獲得した)2018年のような状況となる可能性はかなり低い。そのため、もし変更を加えるのであれば、失うものがなく、また何かを積み上げていく事ができるような今の方が好ましい」
「我々は、新しい世代のマシンが導入される2022年に、(2021年と)同じドライバーラインナップを継続したいと考えている」
新ドライバーに求めるのは金と才能
シュタイナー代表は現時点ではまだ、来季ドライバーラインナップを決定していないと主張するが、ルーキー2名体制となる可能性を除外していない。ハースの来季シートを掴むのは誰なのか?
莫大なロシアンマネーをバックに持つニキータ・マゼピンの来季F1デビューが有力視されているほか、もう1つのシートには、フェラーリ・ドライバー・アカデミー(FDA)所属のミック・シューマッハが収まるのではとの予想が大勢を占めている。
噂では、マゼピンとの契約のためにセルジオ・ペレスとの交渉が中止となったとされており、また、ニコ・ヒュルケンベルグの起用を除外している事からも伺えるように、ハースが経験よりも財政的観点を重視している事は明らかだ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行の影響で、世界中の多くの企業と同じようにF1チームも金策の奔走を強いられている。
実際シュタイナー代表は「才能は絶対条件だ。お金よりも才能の方が重要だが、お金をもたらしてくれるようなスポンサーシップを持つドライバーもいるわけで、我々はあらゆる選択肢を評価している最中だ」と語り、持ち込み資金の重要性を否定しなかった。