1985年のF1オランダGPでウィリアムズ・ホンダFW10を駆り6位入賞を果たしたナイジェル・マンセルcopyright LAT Photographic/Williams F1

金策に奔走するウィリアムズ、歴史的F1マシンを抵当にラティフィから運転資金を借り入れ

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で財務が悪化しているウィリアムズ・レーシングは金策に奔走しており、この程、112台もの歴史的なF1マシンを含むチームの資産を抵当に入れて、カナダの食品加工界の大物、マイケル・ラティフィが所有するラトラス・レーシング社から運転資金の融資を受ける事となった。

ウィリアムズは億万長者や自動車メーカーをパトロンとしていない数少ないF1チームの一つであり、1977年の創設以来、ナイジェル・マンセルやデイモン・ヒルらと共にワールドチャンピオンシップを制覇し、F1史上2番目に成功したチームとして知られる名門中の名門チームだ。

しかしながら過去2シーズンはコンストラクター選手権で最下位に終わるなど成績低迷に苦しんでおり、その結果として売上が低下。昨年末には、自動車産業や航空産業などに技術供与を行っていた傘下のウィリアムズ・アドバンスト・エンジニアリング社の過半数の株式を売却し現金化した。

そんな最中にあって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックは、英国グローブのチームに更に多くのプレッシャーを与える事となった。F1カレンダーはカナダGPまでの開幕9レースを失っており、これによってスポンサー収入とコンストラクターでの賞金額が大きく押し下げられている。

かつてない経済危機に対処すべくチームは4月6日(月)に、コスト削減の一環として5月末までの2ヶ月間に渡って大部分の従業員を一時的に解雇し、上級管理職並びにレギュラードライバーを務めるジョージ・ラッセルとニコラス・ラティフィの給与を20%減給とする事を発表した。

車輪を回し続けるための更なるキャッシュを求めてウィリアムズは、ニコラス・ラティフィの父、マイケルに目をつけた。イラン系カナダ人ビジネスマンのマイケル・ラティフィは、1995年にカナダ・オンタリオ州にソフィーナ・フーズ社を設立。同社は現在ではカナダ全土に20の事業所を設ける従業員5,000人の大企業へと成長し、今季よりウィリアムズのスポンサーを務めている。

熱心なF1ファンとしても知られるカナダ人大富豪は、2012年に息子のレース活動をサポートするためにラトラス・レーシングを設立し、2018年には2億380万ポンドを出資してマクラーレンの株式を取得するなど、F1界での存在感を高めていた。

融資は4月3日に最終決定された。ウィリアムズはこの日、ラトラス・レーシングだけでなくイギリスの4大商業銀行の一つである英国HSBC銀行からも新たな借入を行い、ファイナンスを強化した。

融資金額は明らかにされていないが、登記簿謄本にはラトラスからの借り入れの際に担保とされたレースカーやショーカーが列挙されており、その中にはパトリック・ヘッドがウィリアムズのために初めてデザインした1978年のFW06フォードや、初めてチャンピオンシップを制したFW07B、1986年と1987年にコンストラクター2連覇を達成し、ネルソン・ピケを王者としたFW11ホンダ、そして2019年シーズンのFW42までのあらゆるクラシックカーが含まれている。

多くはチームのコレクションだが、キャノンのロゴが懐かしいFW11はヘレスサーキットに、パトリック・ヘッドとエイドリアン・ニューウェイの共作であるFW14やFW16Bはヘインズ博物館に、またラルフ・シューマッハ、ファン・パブロ・モントーヤ、マルク・ジェネ、そしてアントニオ・ピッツォニアが乗り回したFW26はロザーウッド博物館に貸し出されており、全てが手元にあるわけではない。

自動車系資本のチームもさることながら、プライベーターの行く手には暗雲が垂れこめている。F1は多額のコストがかかる新レギュレーションの導入を1年遅らせ、既存マシンの開発を一部凍結すると共に、来年導入される予算上限を更に引き下げる事を目指しているものの、チーム代表は危機感を募らせている。

マクラーレンのザク・ブラウンCEOは先週、BBCとのインタビューの中で「もし適切な方法で処理されなければ、4つのチームが消滅することになるかもしれない」と述べ、対応を誤ればF1に壊滅的な被害が及ぶ可能性を指摘している。