なぜハミルトンのF1契約延長は僅か1年に留まったのか?2つ共が空白のメルセデス2022年シート
7度のF1ワールドチャンピオン、ルイス・ハミルトンがメルセデスと2021年シーズンの1年契約にサインした。開幕前バーレーンテストを1ヶ月後に控え、これでようやく今季F1グリッドの全てが確定した。
これまで3年を基本として契約を更新してきた両者だが、今回は2021年のみの単年契約となった。なぜ1年だけなのか?なぜ契約をまとめるのにこれ程の時間を要したのだろうか?
チームの最高経営責任者兼チーム代表のトト・ウォルフは、ハミルトンが昨年12月に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染したために交渉が遅れた事、そして将来の不透明性を理由に挙げた。本格的な交渉はクリスマス前になってようやくスタートしたという。
昨年のカレンダーが根底から覆されたように、新型肺炎のパンデミックはF1に大きな影響を及ぼした。更に今年からは1億4500万ドル(約152億円)の予算の上限が導入され、2022年には競争力の平準化を目指す新たなテクニカル・レギュレーションが予定されるなど、F1そのものも変革期を迎えている。
トト・ウォルフ代表は、テレビ放映権やスポンサー料など、チームの収益に影響を与える可能性がある材料が多いため長期契約を結ぶ事は困難だとした。また、親会社のダイムラーが電動化への巨額の投資を余儀なくされている点に触れて「我々は数年前とは全く異なる財政状況にある」と述べた。2022年以降の契約については今年後半に話し合いを行う予定だという。
一部報道では、ハミルトンがチームの収入の一部を要求し、更にはチームメイトの決定に関する拒否権を求めている等と報じられていたが、トト・ウォルフ代表はいずれも「根拠がない」ものであり「そのどれもが真実ではない」と否定。過去にそうした要求があった事すらないと退けた。
新たな年俸は明らかにされていないが、以前の契約は年間3,000万ポンド(約43億円)で、これに加えて最大1,000万ポンド(約14億円)のボーナスを支払う内容であったと見られている。トト・ウォルフ代表の話からすると、ハミルトンの希望如何に関わらず、メルセデスにこの規模の複数年契約を締結するという選択肢はなかったものと思われる。
なおチームは今回の契約更新に際して、ハミルトンと共同で多様性とインクルージョンの推進に向けて共同で慈善財団を立ち上げる事を合わせて発表した。トト・ウォルフ代表はこれについて、ダイムラーのオラ・ケレニウスCEOのアイデアから生まれたものだと説明した。
ハミルトンの単年契約は、2022年以降のグリッドが流動的となりうるという点において、興奮を求める多くのF1ファンにとっては歓迎すべきものと言えるだろう。メルセデスはバルテリ・ボッタスとも2021年末までしか契約を結んでおらず、現時点では2022年以降のシートは2つともが空いている。
ホンダエンジンの引き継ぎを巡るレッドブルの状況如何によっては、マックス・フェルスタッペンがマーケットに出る可能性がある。またメルセデスには、昨年のサクヒールGPでハミルトンの代役を務めて実力の高さを知らしめたジョージ・ラッセルが控えており、チャンピオンチームの椅子取り合戦に注目が集まる事は間違いない。