レッドブル・レーシングのピエール・ワシェ、2014年11月21日、ヤス・マリーナ・サーキットで行われたF1アブダビGPフリー走行にて
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メルセデスを倒せたはずだ、とレッドブル・ホンダ…”はらわた”煮えくり返る技術責任者のピエール・ワシェ

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レッドブル・ホンダのテクニカルディレクターを務めるピエール・ワシェは、2020年シーズンのチャンピオンシップを制覇できたはずだと考えており、メルセデスの支配体制に終止符を打てなかった事に”はらわた”が煮えくり返る思いを抱いているという。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響で混乱と波乱に見舞われた昨年のF1では、ディフェンディング・チャンピオンのルイス・ハミルトンがミハエル・シューマッハと並ぶ通算7度目のタイトルを獲得し、メルセデスが2014年から続くV6ハイブリッド時代無敗記録を更新。7年連続となるダブルタイトルの快挙を挙げた。

史上最年少王座記録更新に期待が寄せられたマックス・フェルスタッペンは、第14戦トルコGPを除き完走した全てのレースで表彰台に上がったものの、計5度ものリタイヤが大きな足かせとなり、ハミルトンと133ポイント差、2位バルテリ・ボッタスと9ポイント差のランキング3位に終わった。

結果としてみれば完敗という表現がピタリとハマるシーズンであったが、46歳のイギリス人エンジニアは、昨季型マシン「RB16」のポテンシャルはメルセデスを凌駕する水準にあったものの、クルマに関する理解が遅れた事でチャンピオンを逃したと考えている。

ワシェはモータースポーツマガジンとのインタビューの中で「私は彼ら (メルセデス) を打ち負かせると考えていた。我々はチャンスを逃してしまったのだ」と説明した。

「今現在の我々が手にしているクルマに関するソリューションがあれば彼らを倒せたはずなのだ。だからこそ私は本当に頭にきている。多分、チーム内の誰もが同じように考えているだろう」

「公平を期して言えば、彼らはリタイヤする事もなく良い仕事をした。だが、全てのコースで完璧であったわけではない。仮に彼らと同じエンジンであったとしても、我々は彼らよりも優れたパフォーマンスを見つける事ができるはずだ」

「メルセデスを倒す事は可能だ」

チーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーもまた、チームは1年を通してRB16の欠点を克服したと考えており、ホンダ製F1パワーユニットと共に挑むラストシーズンに期待を示している。

ホーナーは昨年末「クルマは大幅に改善されたと思う。問題点を理解できたと思うし、来年に向けて更に解決できると考えている」と語っている。

メルセデスの2020年型「W10」のストロングポイントは、如何なる特性を持つコースであれ安定的にパフォーマンスを発揮した点にあった。これはレッドブル・ホンダとは対象的だ。

英国ミルトンキーンズのチームはフロントウイングが簡素化された2019年以降、ダウンフォースを安定的に発生させる事ができず、ドライバー達はピーキーなマシンに手を焼き続けてきた。レッドブル昇格を果たしながらも、1年を待たずに降格させられてしまったピエール・ガスリーはその犠牲者と言えよう。

”ハイレーキ”、すなわちクルマを横から見た際の傾斜角が大きなマシンコンセプトを伝統的に得意としてきたレッドブルは、低速コーナーへのアプローチで特に課題を抱える傾向があった。

車速が落ちる事でリアの車高が上がり、ディフューザーが路面から離れる事でフロア下を流れる空気がクルマの脇から逃げ、クルマを路面に押さえつける力、ダウンフォースが急激に低下。マシンは唐突にグリップを失う。

マックス・フェルスタッペンとアレックス・アルボンはクルマの予測不可能性に不満を訴え、シーズン序盤は特に頻繁にクルマをスピンさせていた。これが改善されたのはノーズ下のケープにスロットを持つアップグレードが投入された最終盤になってからであった。これは前方からの空気をバージボードではなくフロア下部に導く事を意図したものと見られる。

コース毎にパフォーマンスのバラツキがあるようではメルセデスを倒してチャンピオンシップを制覇する事など不可能だ。

クリスチャン・ホーナーは「我々は来年、様々なサーキットでパフォーマンスを発揮できるマシンを用意する必要がある。メルセデスが得意としてきたようにね。カレンダーには23戦が予定されているだけに、尚更あらゆるタイプのサーキットで強さを発揮しなければならない」と打倒メルセデスへの決意を新たにしている。