F1オーストラリアGP決勝レースのグリーンフラッグに備えてスターティンググリッドに並ぶF1マシン
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フェラーリは何故、突如オーストラリアGPで失速したのか?トロロッソ・ホンダにすら敗北したベッテル

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シーズン開幕前のバルセロナ合同テストで他を圧倒する力を見せつけていたスクーデリア・フェラーリは、何故突如メルボルンの週末に力を失ったのか? 表彰台圏内の3番グリッドからスタートしたセバスチャン・ベッテルは、メルセデスに全く歯が立たないどころが、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンとの真っ向勝負にも敗れ去った。

カタロニア・サーキットでの8日間を終えて、マラネロのチームは王者メルセデスに対峙しうる最有力コンテンダーをみなされていた。だが、予選・決勝共にシルバーアローが圧倒。途方もないギャップを築いた。レース中ベッテルは、何故ペースが上がらないのかについて無線でチームに問いかけたが、納得のいく答えを得られる事はなかった。

1周あたり0.3秒も遅かったSF90

F1オーストラリアGPの舞台アルバート・パーク・サーキット上空から見たホームストレートとピットレーン
© Mercedes、スタート直後のホームストレート

メルセデスに太刀打ち出来ないことを確信したフェラーリのピットは、シャルル・ルクレールにチームオーダーを発動。3番手を走行していたベッテルに対してバトルを挑まず、ポジションをキープするよう命じた。チーム代表のマッティア・ビノットは「金曜のFP1からずっと、我々は正しいバランスを見つけられず手こずっていた」と語り、週末を通してSF90のマシンバランスが悪かった事を明かした。

「原因についてはまだ確信が持てていない。何が起きたのかを正確に特定するために、ファクトリーへ持ち帰り詳しく分析する必要がある。唯一分かっていることは、今週末のマシンは本当のポテンシャルを発揮していないという事だ。潜在的な性能はこんなものではない」

予選3番手のベッテルは、中古のソフトタイヤ(C4)でスタートした後、ルイス・ハミルトンをアンダーカットすべく14周目にピットイン。新品ミディアム(C3)に履き替えコースに戻った。ソフトで走った第一スティントの平均ラップタイムは1分29秒363。同じ条件のルイス・ハミルトンよりも1周あたり0.3秒も遅かった

フェラーリが失速したのではなく、メルセデスが”ポケットの中に隠し持っていたもの”が余りにも大きかっただけ、という可能性もある。だが、フェルスタッペンがベッテルを追い回し、コース上の真っ向勝負でオーバーテイクした事実を踏まえれば、跳馬の足がもげたと考える方が妥当と言える。

ミディアムではトロロッソ・ホンダにすら敗北

レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンの猛攻を凌ぐトロロッソ・ホンダのダニール・クビアト、F1オーストラリアGP決勝レース
© Getty Images / Red Bull Content Pool、ピエール・ガスリーの猛攻を凌いだダニール・クビアト

では何故フェラーリは、そのポテンシャルを発揮できなかったのだろうか? 問題はタイヤだろうか?ピレリのレース部門を統括するマリオ・イゾラはレース後、タイヤという観点から見てもベッテルの遅さは予想外のものだったと語った。

「彼らがタイヤの使い方を理解していなかったのかどうかは分からない。ベッテルの失速は奇妙かつ予期せぬものだった」

「トロ・ロッソやレッドブルのような幾つかのクルマにおいては、ミディアムタイヤは上手く機能していた。実際、ガスリーとクビアトは燃料が重い状態で長いスティントを走っている。ボッタスもミディアムを履いてラスト2周のところでレコードラップを記録した。私には、黄色いタイヤが適切に機能しなかったようには思えない」

ミディアムを履いたベッテルの第二スティントでの平均ラップタイムは、アウトラップを除くと1分29秒077。その一方で、燃料が重くタイムが出ない第一スティントで同じミディアムを履いたトロロッソ・ホンダのダニール・クビアトは、オープニングラップを除くと1分29秒167。計測されたデータから言えば、驚くべきことに燃料分を考慮すればフェラーリよりもトロロッソ・ホンダの方が速かったのだ。

フェラーリが遅かったわけではなく、ベッテル個人が遅かっただけという可能性もある。だが、同じ中古のソフトを履いていた第一スティントで比較すると、シャルル・ルクレールの平均ラップタイムは1分29秒514。ベッテルより0.15秒/周遅く、個人の問題に転嫁するのは適切とは言えない。

ミディアムのベッテルが遅かった事は先述のとおりだが、ハードを履いたルクレールの第二スティントのラップは悪くなく、チームオーダー発動前の平均で1分27秒745であった。では熱ダレか? レースウィークのメルボルンは、2月のスペインと比べて20℃近く温かい気候に恵まれた。

だが、アルバート・パーク・サーキットに投入されたハードとミディアムのワーキングレンジはそれぞれ110~135℃と105~135℃。ミディアムはハードの作動温度域をカバーしている。イゾラが「奇妙」というのも頷ける。

思い通りにドライブ出来なかった、とベッテル

険しい表情でレースエンジニアと話をするスクーデリア・フェラーリのセバスチャン・ベッテル
© Ferrari S.p.A.、レース前のベッテルは険しい表情を浮かべていた

当のベッテルは、メルボルンでのSF90はテストと比べて「後退」したと感じており、思うようにコントロール出来なかったとコメント。セットアップが上手く機能しなかった事を仄めかしている。

「バルセロナではテスト初日からクルマに凄く満足できていた。バランスが正しかったんだと思う。自分の思い通りにクルマが反応していた。それが、今週末はずっと、バルセロナの時のように自信を持ってドライブ出来なかったんだ」

「僕が求めるようにマシンが動いてくれなかった。幾つかのコーナーではかなり良いパフォーマンスだったけど、大部分はそうじゃなかった。今日僕らがライバルよりも遅く、多くのタイムを失ったのはそれが理由だ」

ベッテルの言う「幾つかのコーナー」とは恐らく中速域の事だろう。予選オンボード映像で明らかなように、SF90のタイムロスの殆どは鋭角の低速コーナーで発生していた。

パワーユニットの可能性は?

ベッテルはセットアップ面に問題があるかのような発言をしているが、気になるのはパワーユニットだ。ハースやアルファロメオを含めたフェラーリ勢は、レース序盤を除いてリフト・アンド・コーストに徹していた嫌いがあり、保守的な保守的なエンジンマッピングを多用していた可能性がある。何を意味するか、信頼性だ。

フェルスタッペンにオーバーテイクを許した時、ベッテルは明らかにパワー不足だったように見受けられる。抜かれる可能性があるのにも関わらず、何故ピットはアグレッシブなモードの使用をベッテルに許可しなかったのか。考えうるのは信頼性だ。確証はないが、何某かの理由によってエンジン保護を優先していた可能性は捨てきれない。

パワーユニットの性能をフルに発揮できることを前提に、クルマのエアロダイナミクスレベルが決定されていると考えれば、エンジンパワーが想定値よりも不足している場合、ドラッグがクルマのパフォーマンスを低下させる事になる。特に、今季はレギュレーションの変更によって昨シーズンよりも空力効率が低下している。

アルバート・パーク・サーキットは文字通り、公園内の舗装路と駐車場の一部を組み合わせた特殊なコースであり、テスト会場となったカタロニア・サーキットに代表されるパーマネントコースとは特性が大きく異なる。その点、3月末に開幕を迎える次戦バーレーンGPはヘルマン・ティルケ設計の常設コース。鋭角コーナーは3箇所、気温は若干メルボルンよりも高温だ。注目してみてみよう。

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