
ラッセルの故意的違反、F1に「より詳しい検討」を提言するウィートリー
2025年F1第8戦モナコGPで発生したジョージ・ラッセル(メルセデス)の”故意的コーナーカット事件”がパドックで議論を呼んでいる。ザウバーのチーム代表ジョナサン・ウィートリーは、この事件の背景にある問題について、より詳しい検討が必要だと提言した。
発端は、決勝レース中にラッセルがアレックス・アルボン(ウィリアムズ)を追い抜く際、ヌーベル・シケインをカットしたことにある。チームからはポジションを返すよう指示されたが、ラッセルはそれを拒み、ポジションを返す代わりに「ペナルティを受ける」と無線で宣言した。
異例の重いペナルティとその背景
スチュワードは、ラッセルが「故意」にルールに違反したと判断し、この行為を重く見た結果、通常の10秒ペナルティではなく、より厳しいドライブスルーペナルティを科した。
一方で、ウィートリーはこの件の背景にある問題に注目している。
純粋なレースというよりも、戦略的な駆け引きが全面に押し出された今回の展開において、ラッセルの行動は単なる違反として片付けられない複雑さを孕んでいると見ている。
モナコの戦略的駆け引きが生んだ混乱
ラッセルが「故意」に違反に踏み切った背景には、3セットのタイヤを使用することが義務付けられた今回のモナコGP特有の戦略的駆け引きがあった。アルボンは意図的にペースを落とし、チームメイトであるカルロス・サインツを有利にするため、ラッセルの進路を妨害した。
この行為には批判が寄せられたが、当事者であるサインツ自身でさえ、「レース操作」とも言うべき状況に不快感を示した。
同様の戦術はウィリアムズのみならず、レーシング・ブルズも採用しており、この日のレースの象徴的な光景となった。ラッセルによれば、メルセデス自身もこの戦略を事前に検討していた。
「欠陥のあるシステム」への批判
さらには、戦略的にも”八方塞がりの状況”にあったことも一因として挙げられる。
ラッセルによれば、今回のモナコでは「1周目にピットインすればポイント圏外で終わり、ロングスティントを選んでも結局ポイント圏外で終わる」という、どちらを選んでも報われない展開だった。
こうした制約を強いられることとなった原因は、スタートポジションが振るわなかったこと、すなわち前日の予選で技術的トラブルに見舞われたことにある。これがラッセルの苛立ちをさらに増幅させた。「ある時点で『もういいや』って思った」と彼は振り返る。
皮肉にも、ラッセルはドライブスルーペナルティを受けながらも、ポジションを返上した場合よりも遥かに上位でフィニッシュした。ラッセルは「残念ながら、このシステムには欠陥がある」と断じた。
戦略とルールが支配したモナコ
2025年のモナコGPは、戦略とルールが支配するレース状況と、ドライバーの純粋な競争心との間で衝突が生じた象徴的な一戦となった。
レッドブル時代を通してスポーティング・ディレクターとして高く評価されてきたウィートリーは、ペナルティはそれが発生した環境に応じて評価されるべきだとし、特に戦略や規則に過度に依存した、ある種の人工的なレース状況下では、より深い検討が求められると示唆した。
この日のレースについてウィートリーは、「純粋なレースというよりはむしろ、戦略によって決定され、ルールによって形づくられたレースだった」と述べ、次のように続けた。
「スポーツとして、我々はジョージのペナルティをより詳しく検討し、何を学べるかを考える必要がある。特に、強制的なタイヤ使用ルールに大きく左右された今回のようなレースにおいてはね」