
コピー?それとも…レーシングブルズ「VCARB 02」とレッドブル「RB20」の”そっくり具合”は如何ほどか
F1では長らく、レッドブルが2チームを所有することの是非が議論されてきた。特に2024年シーズンには、マクラーレンが公然と禁止を訴えたことで、再び大きな注目を集めた。その一方で、2025年シーズンを迎えるにあたり、レッドブルとその姉妹チームであるレーシング・ブルズは、これまで以上に緊密な関係を築いている。
レーシング・ブルズは2025年シーズンに向け、レギュレーションが許す範囲で最大限の協力体制を構築するべく、2025年1月2日より、一部機能をシニアチームが本拠を構える英国ミルトンキーンズの施設へ移転した。
F1の技術規則では空力パーツの独自設計が義務付けられているものの、前後サスペンションやギアボックスなど、VCARB 02にはレッドブルと共通のメカニカルパーツが多数使用されている。
毎シーズンの議論となるのが、レーシング・ブルズのマシンがどれだけレッドブルの前年型と類似しているかという点だ。2025年型「VCARB 02」は、どこまで2024年型レッドブル「RB20」と類似しているのだろうか。
フロントウイングとサスペンション
先に記した通り、フロントサスペンションは他チームに供給可能なトランスファラブル・コンポーネント(TRC)であるため、両チームのそれは、ほぼ同一であると見られる。実際、レッドブル・テクノロジー製と公表されている。
シニアチームのパーツを流用することのメリットの一つはリソースだ。レーシング・ブルズのエンジニアは他の開発により多くの時間を割くことが可能になる。
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レッドブル・レーシングの2024年型F1マシン「RB20」とレーシング・ブルズの2025年型「VCARB 02」の正面比較画像
純粋な空力パーツであるフロントウイングは、リスティド・チーム・コンポーネント(LTC)に分類されているため、各チームが自ら設計・製造しなければならず、実際、両チームのそれにはいくつかの違いが見られる。
VCARB 02のフロントウイングは、リーディングエッジ(前縁)がより直線に近い形状となっており、トレーリングエッジ(後縁)もRB20とは異なっている。
サイドポッドとインレット
サイドポッド・インレットに関しては、両マシンのコンセプトは類似している。特に、上部が前方に伸びたようなオーバーバイト型の吸気口はRB20が先鞭をつけたデザインで、これを踏襲していることがうかがえる。ただし、これはレーシング・ブルズに限ったことはなく、昨シーズンのグリッド全体のトレンドでもあった。
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レッドブル・レーシングの2024年型F1マシン「RB20」とレーシング・ブルズの2025年型「VCARB 02」のサスペンションおよびサイドポッド周りの比較画像
また、シャシー側面との間には垂直のインレットが設置されており、これも共通するデザインだが、VCARB 02のそれはRB20よりも若干、開口部が狭いように見える。なお、サイドポッドのアンダーカット(下部のえぐれ)は両チームで大幅に異なっており、RB20の方が遥かに深い。
フロア形状とリアサスペンション
フロア形状については、両車のフィン(乱流制御用の突起)に微細な違いがあるものの、基本的なコンセプトは同じだ。F1の全チームが共通のタイヤを使用しているため、フロントタイヤから発生する乱流の制御方法は似通ったものにならざるを得ない。
また、リアサスペンションとギアボックスも共用されているため、RB20とVCARB 02のリアエンドは非常に類似したものになっている。
レーシング・ブルズとレッドブルとの協力関係は、これまで以上に緊密となった。この戦略が成功すれば、ファエンツァのチームは従来の「育成チーム」「姉妹チーム」から選手権上位を狙う「トップチーム」へと自らの立ち位置を再考する可能性がある。
一方で、この大幅な技術共有と協力関係をもってしても十分な競争力を発揮できなければ、チームの存在意義そのものが問われかねない。
他方では、仮にレーシングブルズが飛躍的な成績を収めた場合、他のチームも同様の技術提携を模索する可能性も考えられる。
いずれにせよ、2025年シーズンはレーシングブルズにとって極めて重要な一年となるだろう。この新たな戦略が功を奏し、競争力を発揮できるのか、それとも課題が浮き彫りになるのか。今シーズンのレーシングブルズの動向は、これまで以上に見逃せないものになるはずだ。