異様な空吹かしスタート風景…2026年F1新規定に「3つの重大懸念」、開幕に向け”緊急見直し”求める声

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バーレーンでの第1回F1バーレーンテストを終え、2026年の新たなレギュレーションを巡って3つの重大な懸念事項が提起されている。そのうち2つは安全性に直結する問題であるとして、3月8日の開幕戦オーストラリアGPを前に早急なルール変更が「不可欠だ」との訴えがなされた。

開幕までは3週間余りしか残されていないが、競技規則・技術規則を審議するF1コミッションが週明けの2月18日(水)に開催される。マクラーレンのチーム代表アンドレア・ステラは「解決は可能だ。それにシンプルな話だ」と述べ、早急な見直しを求めている。

懸念① MGU-H廃止でスタート手順にリスク

第一の懸念は、レーススタート時の手順だ。

従来はMGU-Hがコンプレッサーを駆動し、ターボラグによる出力の落ち込みを補っていた。だが2026年の規則でMGU-Hは廃止され、さらに時速50kmに達するまでMGU-Kによるアシストも禁止された。この結果、スタート前にターボの過給圧を高めるには、アクセルをあおるほかに方法がない。

バーレーンテストでは、スタート練習の場面で10秒以上も空吹かしを続けるマシンの姿が目撃された。それでもなお各車の発進状況には大きなバラツキが生じており、複数のドライバーが発進に苦戦する様子があった。

特に問題を抱え得るのはグリッド後方組だ。構造上、グリッドに整列してからレースがスタートするまでの時間が短く、十分に過給圧を高められない可能性がある。

ステラは「グリッドで発進が遅れるクルマが出る状況は望ましくない。すべてのクルマがパワーユニットをきちんと準備できるスタート手順にする必要がある。これは競技上の利益以上に重要な安全性の問題だ」と指摘する。

バーレーン・インターナショナル・サーキットを走行するオスカー・ピアストリ(マクラーレンMCL40)、2026年2月13日(金) F1プレシーズンテスト3日目Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

バーレーン・インターナショナル・サーキットを走行するオスカー・ピアストリ(マクラーレンMCL40)、2026年2月13日(金) F1プレシーズンテスト3日目

主な対応策は2つ考えられる。1つは、最後尾のマシンが整列してからスタート手順開始までの時間を延長すること。もう1つは、スタート時のMGU-K使用制限の見直しだ。時速50km未満でのMGU-Kの使用を緩和すればターボラグを補完でき、スタートの安定性向上につながる可能性がある。

ただし、この問題を巡っては意見が対立している。昨年、スポーツ諮問委員会がF1コミッションにスタート手順を遅らせる改定案を提出した際、フェラーリが反対したと伝えられている。

というのも、フェラーリは事前にこの問題を提起していたものの、ライバルチームに一蹴されていたためだ。この結果を受け、フェラーリは短時間で十分な過給圧を実現できる設計を選択したとされる。

一方、アクティブエアロを「ストレートモード」、つまり前後ウイングを開いた状態でスタートすることへの懸念の声もある。これはダウンフォースが低下した状態でのスタートを意味する。

オスカー・ピアストリ(マクラーレン)は「22台が数百ポイント分のダウンフォースを失った状態でスタートするのは、大惨事のレシピに思える」と警鐘を鳴らしている。

懸念② 高まるバッテリー依存度が招く追突リスク

第二の安全上の懸念は、エネルギー回生のためにアクセルを緩める「リフト・アンド・コースト」が引き起こす追突リスクだ。これについては、レギュレーション策定段階から問題視する声が上がっていた。

2026年規則ではバッテリーへの依存度が高まっており、先行車両が回生のために突如として大きく速度を落とす場面が増えることが想定される。後続車両がその減速に反応しきれなければ、追突事故に発展する危険がある。

バレンシアで開催された2010年のF1ヨーロッパGPでは、マーク・ウェバーがヘイキ・コバライネンの急減速に対応しきれず追突し、マシンが大きく宙に舞う事故が発生した。また1992年のポルトガルGPでも、リカルド・パトレーゼがゲルハルト・ベルガーのリアに衝突する同様のクラッシュが起きている。

ステラはこれらの事例に触れ、「先行車が回生のためにリフトした際、背後を走るマシンが反応しきれない状況は理想的ではない。バレンシアやポルトガルでの例のように、F1で二度と見たくない事故が再び起きる恐れがある」と危機感を示した。

懸念③ 追い抜き減への懸念、新システム機能せず?

第三の懸念は、オーバーテイクの難易度上昇だ。

長年採用されてきたDRSに代わり、追従車が追加の電動パワーを使用できる「オーバーテイク・モード」が新たに導入された。前走車から1秒以内で検知ポイントを通過した際に、0.5MJを上乗せ使用できる仕組みだ。

だが、テスト中のレースを想定したバトルの様子から、ステラはその効果に懐疑的な見方を示している。

「ドライバーたちは、オーバーテイクするのは極めて難しいと感じている。追加エネルギーの活用は難しく、せいぜいストレート終盤でわずかに多くデプロイメントが可能になる程度のようだ」

さらに踏み込んで、こう続けた。

「F1全体として、オーバーテイクが成立する現実的な仕組みを検討すべきだ。さもなければ、レースの本質のひとつを失うことになる」

なお、シャルル・ルクレール(フェラーリ)やハースのエステバン・オコンとオリバー・ベアマン、セルジオ・ペレス(キャデラック)らも、オーバーテイクが難化する可能性を指摘している。

DRSは人工的な仕組みであるとして批判の的にもなったが、オーバーテイクを促進する手段として機能してきた。その代替として導入されたオーバーテイク・モードが同等の効果を発揮できない場合、追い越しの少ない展開が常態化するリスクを抱えることになる。

バーレーン・インターナショナル・サーキットでアウディ「R26」をドライブするニコ・ヒュルケンベルグ、2026年2月11日(水)F1プレシーズンテスト初日Courtesy Of Audi

バーレーン・インターナショナル・サーキットでアウディ「R26」をドライブするニコ・ヒュルケンベルグ、2026年2月11日(水)F1プレシーズンテスト初日

迫る開幕、F1コミッションで議題へ

提起された3つの懸念のうち、安全性に関わる2つは特に緊急性が高い。開幕戦まで3週間余りという状況で、どこまで対応が可能かは不透明だが、2月18日のF1コミッションで議題に上がることが予想される。

ステラは「問題は解決可能であり、かつシンプルだ。今すぐ可能なことを先延ばしにすべきではない。オーストラリアでの開幕前に必ず実現すべきだと思う」と述べ、議論の加速と早期決定を求めている。