マゼピン解雇で勃発のハースF1シート争奪戦:ピアストリは脱落? 危ういフィッティパルディと魅力的なレッドブルジュニア
ニキータ・マゼピンは母国ロシアによるウクライナ軍事侵攻を経て、ハースF1チームとの2022年F1レギュラードライバー契約を失った。後任は誰か?
契約打ち切りの理由についてハースは何も説明しておらず、また幾つもの要因が考えられるものの、一つにはSWIFTからのロシア排除を含む各国の経済制裁によって、マゼピンを支援する冠スポンサーのウラルカリ社との取引に問題が生じる、あるいは生じた可能性がある。
発端はロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ侵略を指示したところにあり、シートを失った直接的な原因は本人になく、シーズン開幕を2週間後に控えての契約解除はあまりに悲劇ではあるものの、マゼピンに全く非がないわけというわけでもない。
23歳のロシア人ドライバーはF1デビューイヤーの昨年、無得点のドライバーズランキング最下位、21位に終わり、単なるペイドライバーとの評価を覆す貴重なチャンスを活かせなかった。ウラルカリからの資金的な後押しがなくなればシートを失うのは道理だ。
また、プーチン大統領と親しい関係にある父ドミトリーからの支援にキャリアを通して頼り過ぎ、地政学的リスクの高いロシアと距離を取らなかった事も響いた。
昨年の段階で米国は既にウクライナ国境付近でのロシア軍備増強を報告し、大規模侵攻の可能性を警告していた。無論、父ドミトリーも侵攻計画を遥か事前に知っていた事だろう。
資金の有無に関わらずF1で走るに相応しい実力とチームに認めさせ、持ち込み資金をウラルカリ以外の方法で用意する、あるいは前金で全額を支払うなど、事前の対処があれば異るシナリオもあったかもしれない。まぁそれでも心痛ましい出来事ではあるのだが。
ハースはウラルカリ社及びマゼピンとの契約解除を発表した声明の中で、後任ドライバーについて言及しなかった。ミック・シューマッハのチームメイトとしてVF-22をドライブするのは誰なのか?
BBCはハースが検討中のドライバーとして、炎上事故で負傷したロマン・グロージャンの代役として2020年末の2レースに参戦したリザーブドライバーのピエトロ・フィッティパルディ、インド出身のF2ドライバー、ジェハン・ダルバラ、そしてアルピーヌのリザーブにして若手筆頭ホープのオスカー・ピアストリの名を上げた。
残念ながらピアストリという線はなさそうだ。ピアストリの母国オーストラリアのジャーナリスト、マット・コッホは、ピアストリのマネジメントがハースとの契約の可能性を強く否定したと伝えた。
フィッティパルディの立場も危うい。
ウラルカリとハースとのタイトルスポンサー契約は年間3,000万ユーロ、約38億円だと見積もられている。少なくとも一部は前払いで支払い済みと考えられるため、全てを埋め合わせる必要はないだろうが、チームとしては持ち込み資金の有無を選定条件の一つにする事だろう。
フィッティパルディは母国からの支援が弱い。2017年末にフェリペ・マッサが引退して以来、ブラジル企業とF1との距離は遠のいた。フィッティパルディの個人スポンサーは、キャリア初期から支え続けているモバイル通信企業のクラロとモウラバッテリーの2社のみだ。
インドという巨大市場をバックに持ち、経験・実力的にも申し分ないレッドブルジュニアのダルバラはハースにとって魅力的な選択肢だと思われるが、大勢は、パワーユニット及びトランスファラブル・コンポーネントの大部分の供給を受けるフェラーリとの関係、そしてF1での直近のレース経験を持つアントニオ・ジョビナッツィを有力視している。
とは言え、F1という世界は正式発表までどう転ぶか全く分からない。期待とともに週明けのアナウンスを待ちたい。