スペイン国旗を掲げるカルロス・サインツ(フェラーリ)、2022年7月3日F1イギリスGP決勝レース後の表彰台セレモニー
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大事故、6台DNFの大混乱…サインツが念願の初優勝! 角田裕毅は同士討ちで罰則 / F1イギリスGP《決勝》結果とダイジェスト

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2022シーズンFIA-F1世界選手権第10戦イギリスGP決勝レースが7月3日に行われ、ポールポジションからスタートしたカルロス・サインツ(フェラーリ)がキャリア通算150戦(エントリー151戦)の節目を初優勝で飾った。

ポール・トゥ・ウインとは言え、楽なレースではなかった。一時はペースが上がらずチームメイトに道を譲りながらも、エステバン・オコン(アルピーヌ)のマシンストップに伴う最終盤のセーフティーカー(SC)を活かして残り10周をリードした。

F1イギリスGPの表彰台に上がったセルジオ・ペレス(レッドブル)、ルイス・ハミルトン(メルセデス)、カルロス・サインツ(フェラーリ)、2022年7月3日シルバーストン・サーキットにてCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

F1イギリスGPの表彰台に上がったセルジオ・ペレス(レッドブル)、ルイス・ハミルトン(メルセデス)、カルロス・サインツ(フェラーリ)、2022年7月3日シルバーストン・サーキットにて

2位はセルジオ・ペレス(レッドブル)。シャルル・ルクレール(フェラーリ)に衝突された事でフロントウイングを破損し、早々に最後尾にまで転落しながらも不死鳥のように蘇った。3位表彰台にはルイス・ハミルトン(メルセデス)が滑り込み、地元ファンを歓喜させた。

レースは開始早々に5台が絡む大クラッシュが発生。3名がリタイヤを余儀なくされ、その後も絶え間なく波乱と混乱が続く劇的なレースとなった。最終的に生き残ったのは僅か14台だった。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル)はスタート直後にトップに躍り出るも、角田裕毅(アルファタウリ)のデブリを拾ったために、リア側のダウンフォースを失い競争力が大幅にダウン。終始、ミッドフィルダーを相手に厳しい戦いを強いられ、7位を死守するのが精一杯だった。

ルクレールは終盤に向けてラップをリードしていたものの、SC導入の際にタイヤ交換の機が得られず、使い古したハードタイヤでリスタートを迎えた。フレッシュなソフトタイヤを履く後続相手に果敢に戦ったものの、首位を守るには至らず4位でフィニッシュした。

フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)は今季最高の5位フィニッシュを果たし、これに母国レースのランド・ノリス(マクラーレン)が続いた。

ミック・シューマッハは8位。念願のF1初ポイントを喜んだ。チームメイトのケビン・マグヌッセンも10位と、後方スタートのハースがサプライズW入賞を果たした。セバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)は35歳の誕生日を9位フィニッシュで祝った。

アルファタウリは最悪の結末と共に英国を後にする事となった。一時は2台揃ってトップ10圏内を走行していたものの、角田裕毅がピエール・ガスリーを交わそうとターン3のイン側に飛び込んだ際に接触。両者スピンを喫して共にポジションを落とした。

スチュワードは角田裕毅に非があるとして5秒ペナルティと2点のペナルティポイント(累積8点)を科した。この接触に依るリアウイングのダメージが原因でガスリーはオレンジボールフラッグを受け25周目にリタイヤした。

角田裕毅はレースを続行したが、ダメージによってペースが上がらず、完走14台中、最下位でレースを終えると「主にチームに謝りたい」と語った。

1周目の大クラッシュ

ブラックアウト直後、アビー(ターン1)を前に多重クラッシュが発生した。ガスリーが周冠宇(アルファロメオ)とジョージ・ラッセル(メルセデス)に両サイドを囲われる形となり、その右前輪とラッセルの左後輪が接触。その後、周冠宇とラッセルが激しく衝突した。

後方では、ベッテルがアレックス・アルボン(ウィリアムズ)のリアに突っ込み、イン側の壁に弾き返されたアルボンがエステバン・オコン(アルピーヌ)と角田裕毅に衝突。少なくとも5台が事故に巻き込まれ、スタートから数秒でレースは赤旗中断となった。

2022年7月3日F1イギリスGPスタート直後の様子、中団でジョージ・ラッセル(メルセデス)と周冠宇(アルファロメオ)が衝突Courtesy Of Red Bull Content Pool

2022年7月3日F1イギリスGPスタート直後の様子、中団でジョージ・ラッセル(メルセデス)と周冠宇(アルファロメオ)が衝突

周冠宇のアルファロメオC42は接触によって車体が上下反転。高速のまま仰向けでグラベルに弾き飛ばされ、タイヤバリアを乗り越えてフェンスにまで達した。

当初は深刻な怪我が懸念されたものの、意識ある状態で担架に乗せられ、アルボン共々メディカルセンターに運ばれた事が明らかにされた。周冠宇はレース中に医師の許可を得てパドックに戻った。

バルテリ・ボッタスがギアボックストラブルにより21周目にクルマを降りた事で、アルファロメオはWリタイヤという結果に終わった。

レース概要

決勝は日本時間3日(日)23時にブラックアウトを迎え、1周5,891mのコースを52周する事で争われた。

現地トウスターは雲に覆われ、チャンピオンシップポイントを争う決勝のフォーメーションラップは気温17.8℃、路面27.6℃、湿度62%、気圧1002.2hPaのドライコンディションで開始された。

公式タイヤサプライヤーのピレリは最も硬いレンジのC1からC3までのコンパウンドを投入。レースでは3種類全てのコンパウンドを使う2ストップ戦略が主流となった。

涼しい気象条件を背景にウィリアムズ勢、フェルスタッペン、ベッテル、マグヌッセンの4台がソフトタイヤを選択。ラッセルのみハードを選び、その他はミディアムを履いてグリッドに着いた。

フェルスタッペンはサインツを交わしてトップに、ハミルトンは3番手にまで浮上したが、1周目の事故を経てレースはオリジナルのグリッドで再開される事となった。赤旗による中断は50分以上に及んだ。

事故により「メカニカル的な支援を受けた」としてFIAはラッセルの再スタートを許可せず、アルボンと周冠宇、ラッセルの3名を除く17台が再スタートに臨んだ。

ラティフィとアルファタウリ勢、オコン、そしてベッテルがソフトタイヤを装着。他はミディアムタイヤを履いてセーフティーカー先導の下、グリッドへと向かい、レースはスタンディングで再開された。

追い上げを目指すルクレールはペレスと接触。これを交わした後、今度はフェルスタッペンとも軽く接触した。ペレスは予定外のピットストップを強いられ最後尾17番手にまで転落した。

10周目、サインツがコース外に飛び出した事でフェルスタッペンがトップに浮上するも、その2周後に突如失速。パンクを疑い、ピットインしてミディアムに履き替えたが状況は変わらなかった。車体へのダメージの影響でリア側のダウンフォースが失われた事が原因で、レースを通して終始、苦しみ続ける事になった。

これによりフェラーリがワンツー体制を築いた。ラップリーダーのサインツのペースが上がらず、後続のルクレールは前を塞がれタイムを失う形となった。第2スティントでもこの傾向は変わらなかったが、ピットウォールは遅々としてチームオーダーを出さなかった。順位を入れ替えたのは31周目の事だった。

39周目、オコンが失速。セーフティーカーが導入された。ルクレールはピットに入れずハードタイヤのままステイアウト。後方のサインツ、ハミルトン、ペレスはソフトタイヤに履き替えた。

レースは残り10周でリスタートを迎えた。ペレスはハミルトンを、サインツはルクレールを交わしてそれぞれポジションを上げた。

46周目、激しい2位争いを繰り広げるルクレールとペレスのバトルで漁夫の利を得たハミルトンが一瞬、2番手に浮上するもその後ポジションを失った。ペレスはその後、ルクレールを交わして2番手に浮上した。

ラスト5周はルクレールとハミルトンが抜きつ抜かれつの手に汗握る激しい3位争いを演じた。タイヤ的に劣るルクレールに出来る事は殆どなく、最終的にハミルトンが表彰台圏内を奪取した。

2022年F1第10戦イギリスGP決勝リザルト

Pos No Driver Team Laps Time PTS
1 55 カルロス・サインツ フェラーリ 52 2:17:50.311 25
2 11 セルジオ・ペレス レッドブル・RBPT 52 +3.779s 18
3 44 ルイス・ハミルトン メルセデス 52 +6.225s 16
4 16 シャルル・ルクレール フェラーリ 52 +8.546s 12
5 14 フェルナンド・アロンソ アルピーヌ・ルノー 52 +9.571s 10
6 4 ランド・ノリス マクラーレン・メルセデス 52 +11.943s 8
7 1 マックス・フェルスタッペン レッドブル・RBPT 52 +18.777s 6
8 47 ミック・シューマッハ ハース・フェラーリ 52 +18.995s 4
9 5 セバスチャン・ベッテル アストンマーチン・メルセデス 52 +22.356s 2
10 20 ケビン・マグヌッセン ハース・フェラーリ 52 +24.590s 1
11 18 ランス・ストロール アストンマーチン・メルセデス 52 +26.147s 0
12 6 ニコラス・ラティフィ ウィリアムズ・メルセデス 52 +32.511s 0
13 3 ダニエル・リカルド マクラーレン・メルセデス 52 +32.817s 0
14 22 角田裕毅 アルファタウリ・RBPT 52 +40.910s 0
NC 31 エステバン・オコン アルピーヌ・ルノー 37 DNF 0
NC 10 ピエール・ガスリー アルファタウリ・RBPT 26 DNF 0
NC 77 バルテリ・ボッタス アルファロメオ・フェラーリ 20 DNF 0
NC 63 ジョージ・ラッセル メルセデス 0 DNF 0
NC 24 周冠宇 アルファロメオ・フェラーリ 0 DNF 0
NC 23 アレックス・アルボン ウィリアムズ・メルセデス 0 DNF 0

コンディション

天気晴れ
気温17.8℃
路面温度27.6℃
周回数52

セッション概要

グランプリ名 F1イギリスGP
レース種別 決勝
レース開始日時

サーキット

名称 シルバーストン・サーキット
設立 1947年
全長 5891m
コーナー数 18
周回方向 時計回り

F1イギリスGP特集