ファンの求めに応じてキャップにサインするアルファタウリ・ホンダの角田裕毅、2021年11月7日F1メキシコGP決勝レース当日のエルマノス・ロドリゲス・サーキットにて
Courtesy Of Red Bull Content Pool

炎上を恐れてSNSと距離を置いた角田裕毅、寄せられた膨大な支持、晴れた疑い、突き合わせた拳

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アルファタウリ・ホンダの角田裕毅はF1メキシコGP予選での一件を経て、自身に対する批判や非難が殺到する事を恐れてソーシャルメディアをあまり見ないようにしていたという。

エルマノス・ロドリゲスでの予選Q3で角田裕毅は、後ろから迫る計測ラップ中のセルジオ・ペレスに進路を譲るため自らコース外に出た。ランオフエリアはダスティーで、その際に砂埃が舞った。

その直後、ちょうどその場に差し掛かったペレスがコースオフを喫した。更に大きなダストが舞った。ペレスの後ろからはポール最有力候補のマックス・フェルスタッペンがフライングラップを走っていた。

クラッシュが起きたのかもしれないと考えたフェルスタッペンは、黄旗が振られる事を予想してアクセルを緩めた。結局イエローが出される事はなかった。レッドブル・ホンダ勢はタイムを更新できず、宿敵メルセデスに最前列を許した。

不満の矛先は日本人ルーキーに向けられた。レッドブル首脳陣、クリスチャン・ホーナー代表とモータースポーツ・アドバイザーのヘルムート・マルコは角田裕毅のせいで最終ラップが台無しになったと非難した。

角田裕毅は自身に非はないと考えていたものの、その心中はさぞ不安だった事だろう。何しろ公然と、声高に、そして一方的にシニアチームのトップ2から名指しで非難されたのだから。

だが、SNS界隈は角田裕毅を強く支持した。

予選後に角田裕毅がTwitterに投稿した「Nothing I can do more than that…(あれ以上のことはできませんでした)」とのメッセージには擁護する多数のリプライが寄せられた。”いいね”の数は4万8千件に上った。

その中には「ユーキ、下を見ずに頭を上げるんだ。嫌な事を言うヤツに負けるな」とのメルセデスAMG公式アカウントもあった。2万3千件の”いいね”が付けられた。

昨年、FIA-F2選手権でチャンピオンシップを争った戦友カラム・アイロットも「君のせいじゃないから気にするな」とメッセージを寄せた。

F1公式デジタル・プレゼンテーターのウィル・バクストンは「レッドブルはポールポジションを逃して苛立っていると思うが、角田裕毅は予選で輝きを放っていた。チームから求められた全てをこなして自身の役割を見事に果たし、姉妹車の邪魔にならないようにコースを離れた。Driver of the Dayの一人だった」と擁護するツイートを発した。これにも1万1千件の”いいね”が付いた。

角田裕毅はこうした支援が寄せられている事を知らなかった。

The Raceによると、角田裕毅は炎上を恐れてSNSから距離を置いていた事を明かした。そして多くのファンが味方していたと伝えられると「嬉しいです」と語った。

角田裕毅は予選後のレッドブル上層部との話し合いに不安と恐れを抱いていたようだが、疑いは晴れたようだ。ヘルムート・マルコは独Skyに対し「ユーキは何も悪いことをしていない。彼のレースエンジニアはもっと早く彼に警告すべきだった」と述べ、考えを改めた事を認めた。

結局のところ、不運なタイミングでの不運な出来事であったように思われるが、アドレナリンがピークに達している状態では誰もが攻撃的に、批判的になってしまいがちだ。何しろそれは闘争、あるいは逃走を促すホルモンなのだから。

ホーナー、角田裕毅非難を”軌道修正”

自身のコースオフについてペレスは予選後、角田裕毅に近づき過ぎたために「大量のダーティーエアーを浴びる事になってコントロールを失った」と説明したが、前を走る22号車は後方乱気流を大量に吐き出すような速度域で走っていなかったように見受けられた。

一夜が明け、決勝に先立って行われたドライバーズパレードでは、拳を突き合わせる角田裕毅とペレスの姿があった。

残念ながら角田裕毅のレースは1周目のターン2で終わってしまったが、彼はあり余ったそのエネルギーを次なる戦いの舞台、ブラジルに向けたチームの荷造りを手伝う事に費やしたようだ。チームが公開した動画には、笑顔の角田裕毅の姿があった。

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