角田裕毅非難、”軌道修正”するレッドブル代表クリスチャン・ホーナー
レッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表はF1メキシコGP予選での角田裕毅に対する非難について、インシデントの詳細な分析を経て、少しばかりスタンスを代えたようだ。
エルマノス・ロドリゲス・サーキットで行われた予選Q3を経て角田裕毅は、セルジオ・ペレスとマックス・フェルスタッペンのポールポジション獲得への望みを断ち切ったとして非難の矢面に立たされた。
角田裕毅は「4秒後ろにペレスがいる。プッシュしている」とのピットウォールから状況報告に従い、計測ラップ中のペレスに進路を譲るために一時的にスピードを上げ自らターン10のランオフエリアに出た。
だが、その直後にペレスはコースオフを喫し、その後方を走行していたフェルスタッペンは計測ラップを中止する事となった。ポール最有力候補と見られていたレッドブル・ホンダ勢はメルセデス勢にフロントロー独占を許した。
ホーナーとレッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは予選後、2人のドライバーがタイムを改善できなかったのは角田裕毅のせいだと発言。波紋を呼んだ。
だが、決勝レースを終えてホーナーは依然として不満を口にしながらも、角田裕毅がエンジニアのマッティア・スピーニから後続車両の状況についてより詳細な情報が与えられていれば、一件を避ける事ができた可能性があるとの考えを示した。
英Autosportによるとホーナーは「ユーキに対して公平に考えると、より多くの情報が与えられていればもしかすると、彼はもう少し(ペレスとフェルスタッペンを)助ける事ができたかもしれない」と説明した。
ただその一方で「結果は残念なものだった。特に彼がチームメイトを牽引するためだけにその場にいた事を考えると尚更にね」とも語った。
角田裕毅はピエール・ガスリーにトウを与えるためだけでなく、パワーユニット交換による降格組の中で予選最上位を掴むためにQ3に駒を進めた。
ホーナーは「だがそれは仕方がない事だ。最終的には我々にとっては2列目からのスタートが上手くいったわけで、結果オーライだと思う」と付け加えた。
日曜日のレースでフェルスタッペンは、1周目のターン1でメルセデスの2台をアウト側から抜き去って3番グリッドからの優勝を飾り、ルイス・ハミルトン(メルセデス)に対するタイトル争いでのリードを19点に拡大した。ペレスは3戦連続となる表彰台に上がった。
予選Q3での一件を巡ってはソーシャルメディア上で論争を巻き起こった。発端となったのがライバルチームのドライバーであればここまで物議を醸す事もなかったのかもしれないが、角田裕毅はファミリーの一員だ。
ホンダの支援を受ける角田裕毅の所属するアルファタウリはレッドブルの姉妹チームであり、ファミリーに所属する若手ドライバーのインキュベーターとしての役割を伝統的に担ってきた。ホーナーはそんなファミリー内におけるシニアチームのボスであり、ファンは非難ではなく擁護を期待していた。
アルファタウリ・ホンダのフランツ・トストが「ユーキに非はない」とし、ヘルムート・マルコが後に「ユーキは何も悪いことをしていない」と考えを改めたように、一件について角田裕毅が出来る事は殆ど何もなかったとの見方が大勢で、ヨーロッパの主要専門メディアはこぞって角田裕毅に非がないとする記事を公開した。
なおSNS上での論争についてホーナーは、自分の発言が大きく取り上げられ過ぎたと考えており、意見することは何も問題ないとの考えを示した。
「発言の文脈を見てみると、残念ながらソーシャルメディアには特定のコメントを取り上げ、それを悪用する傾向があると思う」とホーナーは語った。
「ドライバーのパフォーマンスについてコメントできないとしたら、かなり退屈な世界になってしまうと思う」