2014年から2018年までのメルセデス製F1パワーユニット
Courtesy Of Daimler AG

過小評価すべからず…E10燃料への切り替えはV6ハイブリッドF1時代「最大のルール変更」

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大鉈が振るわれた車体側のレギュレーションと比較すれば、パワーユニット関連のレギュレーションは安定的と言える。だがメルセデスは、E10燃料への切り替えはV6ハイブリッド時代としては「最大のルール変更」であり「過小評価されるべきではない」と指摘する。

F1はCO2排出量の削減を念頭に、今季より「先進的なサスティナブル・エタノール」を10%含むE10燃料を導入する。従来比率は5.75%だった。

E10燃料への切り替えに際しては、燃焼プロセスの再最適化が必要となる。広く一般には、従来型と比較して20馬力程度の出力低下につながると見られており、ホンダ、メルセデス、フェラーリ、ルノーの各メーカーは失われたパワーを取り戻す事に目下、注力している。

加えてバーレーンテスト後の3月1日には、ICE、ターボチャージャー、MGU-H、排気系、そして燃料及びオイルの開発が凍結され、MGU-K、ES、CEに関してはサマーブレイク明けの第14戦ベルギーGP後、9月1日にホモロゲーションを取得しなければならない。メーカーにとっては気の休まらない日々が続く。

2020年にアンディ・コーウェルの後任としてメルセデス・ハイパフォーマンス・パワートレインズのマネージング・ディレクターに就任したハイウェル・トーマスは「E10への変更は2014年以降としては最大のレギュレーション変更と言えるだろう」と述べ、開発における燃料切り替えの重大性について指摘した。

「故に、燃料開発にはかなりの作業が必要だった。どれだけ大変だった事か…過小評価されるべきではない」

「バイオマス燃料がエタノールに変更された事でエンジンの挙動が少し変化している。つまり、性能面において非常に満足できるエリアもあれば、ハッキリ言ってあまり満足できていない場所もあるという事だ」

「我々がすべきことは、可能な限り燃料とPUのハードウェアに手を入れ、望ましいものの効果を最大化しつつ、そうでないものの効果を最小化する事にある」

エンジンの変更は当然、車体側にも影響する。パワーユニットメーカーはチームと共に、空力が刷新される新たなシャシーに合わせたパワーユニットの統合についても検討しなければならない。

ハイウェル・トーマスは「新型車の登場を機に、物事を根本的に見直すことになった」と説明する。

「2022年はシャシーが一新される。クルマにはラップタイムに非常に敏感なエリアと、そうでないエリアが存在する」

「我々がPU側で目指しているのは、マシンのデザイナーに対して可能な限り設計上の柔軟性を与えるために、できる限り感度の低いエリアにPUをパッケージングする事にある」

「そのためにはシャシー部門やすべてのエンジニアと協力しながら、ここぞという位置にPUが正確に収まるようにしなければならない。PUとマシン全体を含めた視点で最速のパッケージを作れるようにする必要があるという事だ」