
1.4億円―アイルトン・セナが“命を救った”際のヘルメット、史上最高額で落札
世界的競売会社『RMサザビーズ』によると、1992年のF1ベルギーGPで、アイルトン・セナが意識を失ったライバルを救助した際に着用していたヘルメットが、レーシング用ヘルメットとして史上最高額となる72万ポンド(約1億3,700万円)で落札された。
このヘルメットは、1992年4月29日に日本で製造されたSHOEI(ショウエイ)製の軽量モデル「X-4」。標準仕様よりも100~200g軽く、黄色、緑、青の象徴的なストライプに加え、当時の所属チーム、マクラーレン・ホンダのスポンサー(Marlboro、Shell、Hugo Boss、Banco Nacionalなど)のロゴがあしらわれている。また、KTEL製の通信機器を搭載し、ベルギーGPでの使用を示す飛び石の痕跡も残されている。
Courtesy Of RM Sotheby’s
アイルトン・セナ(マクラーレン・ホンダ)が1992年のF1ベルギーGPで着用していたレーシングヘルメット (2)
オートバイ用ヘルメットのメーカーとして知られるSHOEIは、1992年よりセナにヘルメットの供給を開始した。セナはそれ以前、Bell(1984年~1989年)およびRheos(1990年~1991年)のヘルメットを使用していた。
Courtesy Of RM Sotheby’s
アイルトン・セナ(マクラーレン・ホンダ)が1992年のF1ベルギーGPで着用していたレーシングヘルメット (3)
このヘルメットが注目を集めた最大の理由は、1992年ベルギーGPのフリー走行中に起きた劇的な救助劇にある。
リジェのエリック・コマスが、高速コーナーのブランシモンで大クラッシュし、意識を失ったままコース中央に停止。アクセルペダルには足が載ったままで、エンジンは高回転状態を維持していた。
直後に現場を通過したセナは、自身のマクラーレンを停止させ、危険を顧みず他車の合間を縫って事故車に駆け寄るとエンジンを切り、医療スタッフが到着するまでコマスを支え続けた。
コマスは後年、「彼はクルマのイグニッションを切り、爆発を防いだ。アイルトン・セナが私の命を救ってくれた」と回顧している。
この行動は、単なるスポーツマンシップを超えた、F1ドライバーとしての倫理観と勇気を象徴するものとして語り継がれている。セナがこの場面で着用していたのが、今回落札されたヘルメットだ。
セナの遺品がオークションで注目を集めるのはこれが初めてではない。過去には1990年シーズンに使用したヘルメットが13万9,100ポンド(約2,700万円)で落札されたことがあるが、今回の落札額は、2023年にフェラーリのシャルル・ルクレールがモナコGPで使用したヘルメットの記録(26万2,700ポンド)を大きく上回り、史上最高額を更新した。
なお、1992年シーズンにセナはマクラーレン・ホンダで3勝を挙げたが、選手権はウィリアムズのナイジェル・マンセルが圧倒的な強さで制した。ベルギーGPでは、当時ベネトンに所属していたミハエル・シューマッハがF1初勝利を飾り、セナは5位で完走している。