ハースのケビン・マグヌッセンとバトルするメルセデスのルイス・ハミルトン、2022年3月27日F1サウジアラビアGP決勝レース
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

メルセデス、”厳しい現実”を突き付けられた実力露呈の第2戦サウジ…無数の意味で変則的だったハミルトン

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タイトル争いを繰り広げる中、ライバルのレッドブルより遥かに早い段階でリソースを今季に振り、入念に備えてきたにも関わらず、第2戦サウジアラビアGPを終えた現段階でのメルセデスに希望らしきものは見当たらない。トト・ウォルフ代表の言葉を借りれば「厳しい現実を突き付けられた」状況だ。

ジョージ・ラッセルは5位フィニッシュと健闘したものの、超高速のジェッダ市街地コースでのメルセデスW13の惨状は目に余るものがあった。それはどういうわけかルイス・ハミルトンのパフォーマンスに表れた。

予選は16番手と、真っ向勝負でのQ1敗退としては13年ぶりの下位に沈み、決勝では15番手からスタートし、2012年の韓国GP以来となる10位フィニッシュと、1点をもぎ取るのが精一杯で、2014年以降のV6時代としては実にイレギュラーな光景だった。

この日のレースはハミルトンにとって、メルセデスとの記念すべき180戦目の節目だった。単一コンストラクターでの出走記録としては、ミハエル・シューマッハ(フェラーリ)が持つ記録を塗り替えるものであったが、残念ながら華を添える事は叶わなかった。

今日のレースは我々の現在の実力を表すものだった…第2戦の週末を5-10の計11ポイントで終えたメルセデスの指揮官、ウォルフはそう語った。

「予選でも決勝でもパフォーマンス・ギャップは似通っていたし、上位争いに加わるためには明らかにやるべき事がたくさんある」

「ジョージは上手くレースを展開した。前方で事故が起こることはなく、望み得る最大限の結果を出してくれた」

自らのミスによって2番手からの最後尾転落が確実と思われながらも、バルテリ・ボッタスとラッセルとのクラッシュによる赤旗によって救われ、驚きの2位フィニッシュした昨年のエミリア・ロマーニャGPに象徴されるように、ハミルトンはこれまで幾度となく強運を発揮して逆境を覆してきた。

だがこの日は本来であれば絶好のチャンスとなるはずのVSCが逆に巻き返しを阻むなど、過去の傾向が全く当てはまらない変則的なレースとなった。

ウォルフはハミルトンのレースについて「ルイスにとっては15番手からの難しい午後になった」と振り返った。

「ミディアムで最後まで走るには早すぎるタイミングで最初のセーフティカーが出たために、ハードでスタートした他のマシンと同様にピットには入らずステイアウトした」

「その後はVSCが出る中でピットレーンが閉鎖されてしまい、ピットに入る機会を逃し、いくつか順位を落とすことになった」

「全体として厳しい現実を突き付けられた週末だ。メルボルンで良いパフォーマンスを発揮できるよう、引き続き努力を続けていかねばならない」

苦境に立たされる事があっても常にチームを力強く支えてきたハミルトンをして、今週末はその発言も例外的なものだった。

予選Q1でノックアウト・ゾーンに沈んだ7度のF1王者は「これ以上タイムを縮められる気がしない」と珍しく弱音を吐いた。ジェッダでのW13に希望を見出す事ができなかったのだ。そしてその悲観は現実のものとなった。

確かにハミルトンはスタートポジションから5つ順位を上げてフィニッシュしているものの、その内の3つはバルテリ・ボッタス、ダニエル・リカルド、フェルナンド・アロンソのリタイアによって、1つは不運にも5秒に加えてドライブスルー・ペナルティーを科された周冠宇によってもたらされたもので、マシンパフォーマンスに依るものと言うには難しいものがあった。

レースを終えたハミルトンは「個人的には、これ以上は無理だったと思う」と述べ、自身にできる事はこれ以上何もなかったとする一方、「チームとしてもそうだったかどうかは僕には分からない」と、これまた珍しくチームを疑問視するかのような言葉を口にして「これが現実だ」と付け加えた。

「僕らはペース的にかなり遅れを取っている。やるべき事が山積みだ」

また、VSCが導入された際に不運にもピットレーンが閉鎖されてしまった件に関しては「アロンソがスローダウンしているのが見えて、ダブル・イエローが振られていたから彼を追い抜く事ができず、その後はダニエル(リカルド)がピットレーンで立ち往生した」と説明した。

「とにかく、クルマがそこに居座っていたから、ピットに入って良いのかどうか分からなくて。何にせよ酷かった。でもまぁ、これが現実なんだから仕方ない」

前人未到のコンストラクター9連覇の野望を果たすためには一刻も早くトップ争いに返り咲く必要があるものの、ラッセルはこの点に関して悲観的だ。

「クルマのフィーリングは良かったけど、(ポーパシングの影響で)車高を下げて地面に近づける事ができないためにダウンフォースが不足している」とラッセル。

「シーズン序盤はレースが詰まっているわけでもなく、カレンダーの日程も決して過密しているとは言えないから(データ取りと検証作業が進まず)、解決策を見出すのには時間がかかる」

エンジニアリング・ディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンもまた、現在直面している課題を「途方も無いチャレンジ」と形容した上で「これからの数週間、数カ月は身を粉にして働かなければならない」と述べ、短期的な解決の可能性を除外した。

ただメルセデスにはこれまでに幾つもの困難を乗り越えてきた経験と実績がある。

ショブリンは「過去8年間に渡ってチームはあらゆる問題に対処してきた。これはブラックリーとブリックスワースの優秀かつ献身的な人材のおかげだ」と強調し、「再び上位で戦えるよう、これまで以上に強い決意を以て臨む」と誓った。


3月27日(日)にジェッダ市街地コースで行われた2022年F1サウジアラビアGPの決勝では、4番グリッドのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が逆転の今季初Vを飾り、2位にシャルル・ルクレール、3位にカルロス・サインツと、フェラーリが再びW表彰台に上がる結果となった。

アルバート・パーク・サーキットを舞台とする次戦F1オーストラリアGPの決勝は、4月10日(日)日本時間14時にスタートの時を迎える。

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