ダニエル・リカルド、事実上の解雇でキャリア瀬戸際…F1引退か移籍か「まだトップレベルでやれる」
ダニエル・リカルドは契約満了を1年残して2022年末を以てマクラーレンを離れる。一部には引退も囁かれるが、リカルドは将来が不透明である事を認めながらも、2023年以降のF1でのキャリア継続に意欲を示した。
「双方合意」も事実上の解雇
33歳のオーストラリア人ドライバーは昨シーズンの初めに3年契約でマクラーレンに加入。イタリアGPで優勝を飾り、9年間に渡って続いていた英国ウォーキングのチームの未勝利記録に終止符を打った。
だが、これを除いてはチームメイトのランド・ノリスに大きく水を開けられ、2年目を迎えた今季ですら予選では平均してノリスより0.356秒遅く、ドライバーズランキングでは76ポイントのノリスに対して19ポイントと、改善の兆しはない。
契約の早期解除についてマクラーレンは「双方合意」の上でなされたものと説明しているが、同時にチーム側が主導的な役割を果たした事も認めており、事実上の解雇と言える状況だ。
F1での現役続行に強い意欲
キャリアの瀬戸際に追い詰められたリカルドは自身が置かれた立場について「最高とは言えないし、確かにほろ苦い」と認めつつも、トップレベルで戦うため自信と決意はまだ残っていると主張した。
「もちろん、僕らは互いに多大な努力を払ってきたけど思い描いた通りにいかず、チームは来年に向けて変化を起こすことにした」とリカルドは語った。
「何度も議論を重ねたけど、最終的にこれが僕ら双方にとって正しい決断だとという点で合意に至った」
「残りのシーズンを間違いなく全力を尽くしてやり抜くつもりだ」
「将来に関しては、その先に何があるのか、まだ分からないけど、どうなるか見てみるつもりだ」
「マクラーレンで過ごした時間を笑顔で振り返ることができるし、自分自身について多くのことを学んだ。それはキャリアの次のステップだけでなく、人生全般についても役立つものだと思う」
「結果という点ではもちろん、自分が求めていたような形で常にコンスタントに結果を出せず、厳しい週末を過ごす事もあったけど、楽しい思い出もたくさんあった」
「モンツァでのこと、表彰台の上に立ったこと、2012年以来の勝利をチームにもたらしたこと…幾つか最高の出来事もあった」
「みんなの笑顔が見れて、あの瞬間に立ち会えたことは一生忘れない」
「今でもF1を愛しているし、今回の一件でそれは何一つ変わっていない。まだ内に闘志を秘めているし、最高のレベルでやれるという信念がある」
「良い時も悪い時も、僕をサポートし続けてくれたみんなに感謝してる。僕にとって、これはまだ終わりの時じゃない。この先に何があるか見てみるつもりだ」
リカルドの行く先は如何に
あのリカルドがマクラーレンでの屈辱的な終わりを以てキャリアの幕を下ろすとは考えにくい。F1におけるベストドライバーの1人であり、最高のオーバーテイカーでもある人気者の行く先はあるのか? あるとすればどのチームなのか?
現時点で最も有望な移籍先は、かつてルノーと呼ばれていたアルピーヌへの復帰だろう。
中長期的な大黒柱としての役割を果たさぬままに去ったリカルドに対するルノーグループのルカ・デメオCEOの不満を脇に置けば、アルピーヌとリカルド双方にとって最善の選択肢と言える。
それに加えて噂通りにオスカー・ピアストリがリカルドの後任となるのであれば、私怨という点でも両者の思惑は一致しうる。
マクラーレンはリカルドにとって見返してやりたいチームであり、アルピーヌにとっては多額の資金を投じてその成長をサポートしてきた秘蔵っ子を奪った盗人という事になる。手を組む余地は大いにある。
またアルピーヌにはコスト的なメリットもある。マクラーレンとの契約が早期解除となった事で、市場におけるリカルドの価値が下落する事は避けられない。アルピーヌは2019年の加入時(年俸2500万ドル=約34億2,653万円)以下の金額で契約を提示する事が可能だろう。
リカルドのその他の新天地としてはハースとウィリアムズが挙げられる。いずれもケビン・マグヌッセンとアレックス・アルボンの来季パートナーを確定しておらず、両チームともこの夏の間にリカルドに接触したものと見られている。