オスカー・ピアストリ騒動に際してCRBが機能しなかった理由
F1の契約承認委員会(CRB)が機能していれば、2023年の契約を巡るオスカー・ピアストリの一件が公の場でこれほどの騒動に繋がる事はなかったはずだが、実際にはアルピーヌとマクラーレンが表舞台で綱引きを演じるような格好となっている。
CRBはF1ドライバーがチームとの間で結ぶ契約の合法性を判断するための国際自動車連盟(FIA)の機関であり、ミハエル・シューマッハとジョーダン及びベネトンの間で発生した1991年の契約紛争を機に設立された。
マクラーレンとの2023年の契約内容がアルピーヌとの現行契約に抵触するものであれば、CRBから両チームに対してその旨が通知がされる事になる。そうなれば解決に向けた協議が水面下で行われる事となり、いざこざが表沙汰になる事はなかったものと思われる。
だが実際には2023年の起用を告げるアルピーヌの声明に対してピアストリが反論・否定する形で表面化した。これにはピアストリがジュニアドライバーである事が関係しているようだ。
オランダの「RacingNews365」によると、2021年11月に締結されたピアストリとの契約にはアルピーヌ側の義務として以下の条項が含まれていたと言う。
- F1マシンでの一定距離以上のテスト走行
- 費用負担
- 2022年のリザーブドライバー起用
恐らくは3,500km以上と見られるテスト走行を含めた以上3点の義務を果たせば、ピアストリを「2023年のレースシートに座らせることができる」権利がアルピーヌ側に発生する契約内容だった。
ただし、アルピーヌは契約書面上で指定された所定の30日以内に当該権利を行使しなかったとされる。
マクラーレンはピアストリとの契約締結後に、その契約書をCRBに提出したものと見られているが、アルピーヌに対してもマクラーレンに対しても、契約が衝突しているとの旨の通知がなされることはなかった。
それは、ピアストリの今季の契約がF1チームではなくアルピーヌのドライバーアカデミーとの間で結ばれたものであったため、CRBに登録されていなかったためだと言う。つまりCRBの管轄外の案件だったというわけだ。
なおピアストリの起用によりマクラーレンの2023年のF1シートを失う可能性が取り沙汰されているダニエル・リカルドは、違約金としてチーム側に2,100万ドル(約28億3,362万円)規模の損害賠償を求めていると伝えられている。