フェリペ・マッサ、2018年4月のフォーミュラE選手権ローマE-Prixにて
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フェリペ・マッサ、F1とFIAを提訴へ…’08年クラッシュゲート”隠蔽事件”を巡り

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2008年のシンガポールGPで発生した悪名高いのクラッシュゲート事件を巡って元F1ドライバーのフェリペ・マッサが、F1および国際自動車連盟(FIA)に対して多額の損害賠償を求める訴訟手続きを開始したようだ。

ロイター通信によるとマッサは英国ロンドンの弁護士事務所「Enyo Law」を代理人として、8月15日にF1のステファノ・ドメニカリCEO及び、FIAのモハメド・ベン・スレイエム会長宛てに訴訟の意思を通告する書簡「Letter Before Claim」を送付した。

F1ワールドチャンピオンの夢を奪われ表彰台の上で涙するフェラーリのフェリペ・マッサ、2008年11月2日にインテルラゴス・サーキットで開催されたF1ブラジルGPにてCourtesy Of Ferrari S.p.A.

F1ワールドチャンピオンの夢を奪われ表彰台の上で涙するフェラーリのフェリペ・マッサ、2008年11月2日にインテルラゴス・サーキットで開催されたF1ブラジルGPにて

FIAの広報担当者は、書簡を受け取ったことを認めた上で「本件については検討中であり、現段階ではコメントを差し控える」と付け加えた。フェラーリ時代のマッサのかつての上司、ドメニカリがCEOを務めるF1は現時点で回答していない。14日以内に満足いく回答が得られない場合、マッサはイギリスの裁判所で法的手続きを開始するという。

15年前の事件が再び脚光を浴びる事になったのは、当時のF1を率いていたバーニー・エクレストンが今春、自身と当時のFIA会長マックス・モズレーは2008年中にシンガポールでのクラッシュの真相を知りながらも、その事実を隠蔽していたと認めた事に端を発する。

インテルラゴスでの最終決戦に先立ち行われたこの年のシンガポールGPでは、ルノー首脳陣の指示を受けたとされるネルソン・ピケJr.が故意にクラッシュした。この事実が同年のFIA授賞式前に公にされていた場合、チャンピオンはルイス・ハミルトンではなくマッサとなった可能性がある。

事故が発生した当時、ポールシッターのマッサは首位を走行していたが、セーフティーカー(SC)が導入された事でピットストップに動き、この際に給油トラブルに見舞われ後方に転落。ハミルトンが3位表彰台に上がった一方、13位フィニッシュに終わり、ポイントを重ねる事ができなかった。

この年の最終ブラジルGPでマッサはポール・トゥ・ウインを飾った。チャッカーを受けた時点ではワールドチャンピオンの立場にあったものの、ティモ・グロックが失速した事でハミルトンが最終ラップにこれをオーバーテイク。僅か1ポイント差での劇的な敗北を喫した。

書簡の中でマッサの代理人は「端的に言えばマッサ氏は2008年の正当なドライバーチャンピオンであり、F1とFIAは、彼からタイトルを奪った不正行為を故意に無視した」と指摘した。

そして、隠蔽行為による損害額を数値化する事は難しいとしながらも「数千万ユーロを超える可能性が高い」と述べた。ただ日本円にして少なくとも約15億円以上とされるその金額は「マッサ氏が被った深刻な精神的・風評的損失をカバーするものではない」とも強調した。

なお一連の騒動の発端となった発言について92歳となったエクレストンは「正直なところ、私はこのことを何も覚えていない」と述べ、マッサも彼の弁護士も接触してきていないと説明した。