F1オーストリアGPの公式記者会見に出席した田辺豊治、フランツ・トスト、クリスチャン・ホーナー
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レッドブルとホンダ、そしてトロロッソのキーマン3名が提携の背景と今後の見通しを語る

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F1オーストリアGPの公式記者会見にレッドブル、トロロッソ、ホンダ、そしてメルセデスの各陣営を率いるトップが集結。ホンダからは田辺豊治テクニカル・ディレクター、レッドブルからはチーム代表のクリスチャン・ホーナー、トロロッソからはフランツ・トスト代表、メルセデスからはトト・ウォルフ代表が出席した。

話題の中心は2019年シーズンに新しく生まれる「レッドブル・ホンダ」。田辺は、レッドブルとの提携はコミュニケーションの効率化という点で大きなメリットがあると切り出した。

「レッドブルとトロロッソは同じグループであるため、ホンダとしてはコミュニケーションの相手をレッドブル・テクノロジーに集中する事ができます。それを考えれば我々の立ち位置は良いと言えるでしょう」

「実際、これは非常に上手く機能しています。チームAとチームBで個別に議論をする必要がないからです。ホンダとしてはレッドブルグループとのディスカッションに集中すればよく、私はそのことが来年の手助けになることを祈っています」

レッドブルは選手権4連覇を成し遂げたチャンピオンチームであり、今シーズンも常に表彰台争いに食い込む活躍をみせている。仮に来年レッドブルが未勝利に終わるような事にでもなれば、批判の矛先がホンダに向くのは避けられない。

「確かに大きなプレッシャーです。ですが、我々は既にF1においてパワーユニットを供給することのストレスとプレッシャーを多大に感じています。当然のことですが、トロロッソと密接に連携しながら仕事をする事も大きなプレッシャーなのです」

「とは言え、私はF1におけるレッドブルの成功をリスペクトしていますので、これまで以上に大きなプレッシャーを抱える事に間違いはないでしょう。ですが、我々はレギュレーションに従い同一仕様のパワーユニットを提供することになるわけで、その意味では効率よく仕事をしていきたいと考えています」

ホンダの田辺豊治とレッドブルのクリスチャン・ホーナー
© Getty Images / Red Bull Content Pool

何故レッドブルはルノーではなくホンダを選んだのか?ホーナーは、ホンダが示した改善も去ることながら、世界最高峰のフォーミュラ選手権であるF1に対するホンダの決意と情熱、そしてホンダが持つ人材や予算、設備などのリソースに大きな感銘を受けたのだという。

「ワークスチームとして再び活動する事はレッドブルに利点をもたらす事になる。我々にはエンジンを変更することも現状のエンジンを使い続けることもできたわけだが、ホンダとトロロッソがここ数ヶ月間に示してきた進化を目の当たりにしてきた。それは本当に極めて勇気づけられるものであり、新しいチャンスに賭けるリスクは低いと考えた」

「この先に得られるであろうメリットや今後のポテンシャルが興味関心の対象であった事は間違いない。だが同時に、ホンダがトロロッソに対して提供している設備やリソースそしてコミットメントは、我々を大いに刺激しエキサイトするものだった。レッドブル・ホンダの今後の可能性に心からワクワクがしているし、ホンダの仲間達と共に働くことを本当に楽しみにしている」

ホンダがトロロッソへの供給を発表した時、トスト代表やテクニカルディレクターのジェームズ・キーら首脳陣は、チーム創設初のワークス待遇に心を踊らせていた。与えられたエンジンを使うだけの立場から、サプライヤーと密接に関わり合いながらエンジンとマシンを並行して開発できる体制への昇格。それは生粋のレース屋であるファエンツァのチームを奮い立たせた。

レッドブルがホンダ陣営に加わったことで、トロロッソは来年以降その”特権的”なポジションを失うことになる。だがトストは、ホンダは勝つ事を宿命付けられた企業であり、その野望を達成するためにはトロロッソではなくレッドブルの方が適任だと語りエールを送る。

「素晴らしいニュースだよ。レッドブルとホンダの新しい旅路を心から楽しみにしている。ホンダのように広く知られている企業はレースに勝たねばならない。だが、我々トロロッソはF1で優勝できるだけのインフラを持ち合わせていないため、トロロッソ・ホンダとして勝つのは難しいと思う。その意味で言えば、レッドブル・レーシングはまさに正しいパートナーと言える」

ホンダエンジンの搭載に際してトロロッソはレッドブルからギアボックスの供給を受けており、同チームが持つ最先端のテクノロジーの恩恵を既に享受しているが、来年以降はより多くのメリットを手に入れる事になる。

「レッドブルとホンダとの関係は我々トロロッソにとっても有益だ。ホンダとの提携によってレッドブルテクノロジーとの相乗効果が増大するからね。我々は来年レッドブルテクノロジーから リアエンド部分を丸ごと供与される事になる。それによって我々もまたパフォーマンスを改善させることができる。我々は現在全てのベンチテストやあらゆる事に深く関与している。我々3チームは提携によって多くの利益を得ることになるだろうと考えている」

合意発表後初めてとなる公式の場での会見だけに、当事者である3者がネガティブな言葉を口にするはずはない。ではライバルとなるメルセデスのトト・ウォルフ代表はどうだろうか?

「まず最初に一人のF1ファンとして言いたい。我々は皆、このスポーツにおけるホンダの輝かしい栄光を覚えている。あの状況が再び起こることについて、私は何も疑問に思っていない。ホンダのようなトップブランドを持つことはメルセデスと同様にFにとって極めて重要な事だ。エンジンサプライヤーのようなOEMの形であれ、レッドブルのような多国籍グローバルブランドであれ何であれ、このスポーツをより良いものにし魅力あるものにしてくれる」

「彼らが競争力を発揮しない理由などないのだ。レッドブルが持つ技術力とリソースはホンダのパワーユニットを更なる高みに持ち上げる上で大いに役立つだろう。ワークスの地位を得ることもレッドブルにとっては重要だった。長期的に言えば、ワークスである事はチャンピオンシップで勝つための最善のチャンスを提供してくれる。レッドブル・ホンダとの更に激しい戦いを楽しみにしてるよ」

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