レッドブル、F1撤退の2022年以降もホンダと関係継続を模索…HRD-UKからは100名超を雇用
今シーズン限りでF1を去るホンダとの関係を今後も継続すべく、レッドブル・レーシングは2022年以降に向けて日本のエンジンメーカーと話し合いを行っている事を認めた。ホンダは昨年10月、7シーズン続いたF1での活動を2021年末に終了することを発表した。
これを受けてレッドブルは今年2月、来季からの向こう3年間に渡るエンジン開発凍結が合意されると、ホンダとの間で知的財産権(IP)を引き継ぐ旨の契約をまとめ上げ、2022年以降もホンダパワーユニット技術を継続使用する事を明らかにした。
悲願のチャンピオンシップ制覇を目指してホンダが生み出した2021年型「RA621H」は、今季8戦を終えて5勝をマークするなどライバルを凌ぐ強力なパフォーマンスを発揮。レッドブルは現在、ドライバー及びコンストラクターの両選手権でメルセデスと引き離してリードを築いている。
レッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表はポッドキャスト”Beyond The Grid”の中でホンダの撤退について「本当に本当に残念だ」とした上で、撤退後の2022年以降も何らかの形でホンダとの関係を継続していく意向を明らかにした。
「ホンダにはもっと長くいて欲しかった。今後3年間は(開発が)凍結される事でコストも遥かに抑えられる事だしね。何しろ彼らは、競争力ある地位を得るために懸命に努力を重ねてきたのだ」
「来年に向けて、我々は何らかの形で関係を維持していきたいと思ってる。議論の詳細に踏み込むつもりはないが、エンジンメーカーとしてゼロからスタートするのは非常にハードルが高いため、可能な限りのソフトランディングを目指している」
ホンダのパワーユニット技術は英国ミルトンキーンズに建設中の新たなパワーユニットファクトリーで運用される。現時点では姉妹チームのアルファタウリに同じPUを供給する事が決まっているのみだが、将来的にはマクラーレンやウィリアムズといった独立系チームにも供給される事になるかもしれない。
クリスチャン・ホーナーは、現行PUからの大幅変更が必要ともなればそうしたシナリオは荒唐無稽だが、そのような事態に陥る事はないとして「レッドブルはF1で唯一の独立系メーカーであり、そうならない理由が分からない」と可能性を認めた。
「オレンジジュースを燃料にしろとか、V6やV4エンジンに変更しろと言われているわけではない。これはF1であって、求められているのは素晴らしいサウンドと十分な馬力だ」
「確かに環境問題にも対応する必要があるが、OEM(ホンダ)から『このエンジンはこうでなければならない』といった条件が課されているわけではない」
「OEMメーカーのみに頼らざるを得なかった状況が変わったで、ステファノ(ドメニカリ / F1のCEO)やロス(ブラウン / F1の競技責任者)もウキウキしている事だろう」
レッドブルは来シーズンからの独自運用に向けて、V6時代に最強パワーユニットを作り上げてきたライバルのメルセデスから多くの人材を引き抜くなど、着々と準備を進めている。
クリスチャン・ホーナーは、閉鎖が決まっているホンダの英国拠点HRD-UKからも100名以上のスタッフを雇用する予定である事を明かして「我々の組織には強力な人材が揃っている。新たな挑戦に向けての準備は万全だ」と語気を強める。
「これにはエイドリアン(ニューウェイ)もエキサイトしている。それにピエール・ワシェ(テクニカル・ディレクター)も新たに参加する事になったベン・ホジキンソンというパワートレイン部門のテクニカル・ディレクターと肩を並べて仕事をする事になる。本当に胸が高まるよ」
「そしてもちろん、英国のHRDからも100人以上のスタッフを引き継ぐことになる。現場にしろファクトリーにしろ優秀な人材は全員、レッドブルの社員となる予定だ」
HRD-UKはホンダのF1パワーユニット開発拠点であるHRD Sakuraと対をなす欧州拠点で、主に現場のオペレーションを担当すると共に、法規制絡みからハイブリッドシステムを成すエナジーストレージの開発を行っている。