2021年6月27日のF1シュタイアーマルクGPで優勝したマックス・フェルスタッペンを取り囲むレッドブル・ホンダのメンバー
Courtesy Of Red Bull Content Pool

メルセデスの挽回は期待できない、とロス・ブラウン…何故レッドブル・ホンダの選手権制覇を予想するのか?

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F1のスポーティング・ディレクターを務めるロス・ブラウンは、劣勢に追い込まれたメルセデスの逆転チャンピオンシップは期待できず、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが初のタイトルを獲得する可能性が非常に高いと考えている。なぜか?

フランスでのキャリア初のハットトリックに続き、フェルスタッペンは第8戦シュタイアーマルクGPでパーフェクトゲームを繰り広げ、ドライバーズチャンピオンを争うルイス・ハミルトンに大差を付けての今季4勝目を挙げた。

優勝トロフィーとシャンパンを手に表彰台に立つレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン、2021年6月27日F1シュタイアーマルクGPCourtesy Of Red Bull Content Pool

優勝トロフィーとシャンパンを手に表彰台に立つレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン、2021年6月27日F1シュタイアーマルクGP

グリッド最強と目されたホンダパワーユニット「RA621H」を手に、レッドブルRB16Bはプレシーズンテストで抜きん出たパフォーマンスを示したが、開幕バーレーンではディファレンシャルに問題を抱えエンジンパワーを制限。第3戦ポルトガルでは最終盤のトラックリミットで2位に後退するなど、自ら勝利を捨てる形が目立った。

だが、セルジオ・ペレスが調子を挙げてきた事もあり、第5戦モナコGP以降の4戦全てで勝利を収め、フェルスタッペンは8戦を終えての総ポイントを156点に伸ばし、ハミルトンとの差を18点に拡大。チームとしても252点を積み上げて8連覇を目指すシルバーアローに40点差を付けている。

「これがF1の面白いところだ。勝つべきでないレースに勝つこともあれば、勝つべきレースで勝てないこともある」

F1のスポーティング・ディレクターを務めるロス・ブラウンはレッドブル・リンクでの第1レースを終えて自身のコラムにこう綴った。

「レッドブルはシーズン序盤に些かヘマをしたものの、今ではスピードを取り戻した」

「彼らのマシンは他より優れていると思われていたが、今ではそれが結果に表れて始めている。序盤はメルセデスが上回っていたが今はそうではない。ここ2、3レースで完全に逆転した。メルセデスは頑張りすぎて少し躓いてしまった」

「私はこれまでに何度も、マックスはチャンピオンになれると言ってきた。F1に登場した時の彼はかなり未熟で洗練されていなかったが、それが今では同じレベルの速さを保ちながら、非常に洗練されたドライバーに成長した」

「彼は判断力に優れ、チームとの協調性もあり、今年のチャンピオンを獲得する可能性が非常に高いレベルに達している」

「彼が速いことは最初から分かっていた事だが、巻き込まれてはいけないようなアクシデントに巻き込まれることが多かった」

「彼が成熟していることは明らかで、模範的なパフォーマンスを見せてくれている」

今季はパンデミックに対する財政対策を一つの理由として前季型のシャシーが持ち越される事となったが、空力面には大きなメスが入れられ、フロア形状やリアブレーキダクト、ディフューザー等に変更が加えられた。

オトマー・サフナウアー代表が声高に吠えた事もあり、レッドブル・ホンダを含むハイレーキ勢よりアストンマーチンとメルセデスに代表されるローレーキ勢の方が規約変更によるダメージが大きかったのではといった議論が注目された。

だが2022年のレギュレーション変更がヒエラルキーに与える影響は今季の比ではない。来シーズンの技術及び競技レギュレーションは抜本的に改定され、18インチタイヤを含む次世代シャシーが投入される。

ロス・ブラウンはメルセデスの巻き返しは期待できず、ハミルトンは2番手のマシンで残り15戦を戦い抜く必要があると考えている。

「レース後にある人から『レギュレーションの変更はメルセデスにダメージを与えたと思うか?』と聞かれた。私は、昨年末の段階ではレッドブルがおそらく最速のマシンだったことを忘れてはいけないと答えた」とロス・ブラウンは語る。

「レギュレーションの変更は全チームに影響を与えた。各々のチームがどれだけの影響を受けたかを判断するのは難しい」

「今シーズンはメルセデスの巻き返しを期待するのが非常に難しい。なぜなら来シーズンの新しいレギュレーションに集中する必要があるからだ」

「エンジンに何かを施す事は出来ない。彼らは今年のマシンにリソースを費す事で、来シーズンを犠牲にするだろうか? いや、そうはならないだろう。なぜなら既に開発作業を止めてしまったマシンの勢いを急に取り戻すのは非常に難しいからだ」

「より上手くレースを戦ったり、セットアップによってパフォーマンスを更に引き出そうと努力するだろうが、大規模なアップグレードや大きな変化が期待できるとは思えない」

「レッドブルはドラッグが少ないコンフィギュレーションを採用しているようで、それがストレートスピードでのアドバンテージに繋がっている。同じ事がメルセデスの選択肢となるかどうかは分からない」

「 現在の彼らのマシンは最適な状態にあるのか? 彼らは自分達のシミュレーション結果に疑問を抱いているのだろうか?新しいリアウイングの開発は彼らがリソースを投入する余裕のあるプロジェクトなのだろうか?」

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