HRC Sakura

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HRC Sakuraは、ホンダのレース技術開発を担う最先端の研究・製造施設。2015年の第4期F1活動開始に伴い栃木県さくら市に新設されたHRD SakuraHRD Sakura(Honda Research and Development)を前身とし、2022年4月に四輪モータースポーツ部門がHRC(株式会社ホンダ・レーシング)に統合されたことを受け、「HRC Sakura」へと改称された。

かつては宇都宮の量産車開発施設の一部門としてレース開発を行っていたが、F1復帰に向けた組織拡大の必要性に迫られ、500億円近い莫大な資金を投じて建設された。

同施設には、一周4kmのテストコースのほか、最新のドライバー・イン・ザ・ループ・シミュレーター(DIL)、SMR(Sakura Mission Room)、エンジンベンチ、世界最大級のムービングベルトを備えた風洞施設、売電事業のためのソーラー発電設備、そしてホンダの高級ブランド「アキュラ」専用の開発棟などが設けられている。

HRC(株式会社ホンダ・レーシング)の渡辺康治代表取締役社長とF1パワーユニット開発総責任者の角田哲史Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd

HRC(株式会社ホンダ・レーシング)の渡辺康治代表取締役社長とF1パワーユニット開発総責任者の角田哲史

HRC Sakuraの主な業務

F1のレース現場とHRC Sakuraをリアルタイムで繋ぐSMR(Sakura Mission Room) (1)Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd

F1のレース現場とHRC Sakuraをリアルタイムで繋ぐSMR(Sakura Mission Room)

HRC Sakuraでは、F1をはじめ、SUPER GTやスーパーフォーミュラなどの四輪モータースポーツ向けの技術開発が行われている。特に第4期F1プロジェクト当時、従業員の約8割がF1パワーユニット(PU)開発に従事していた。

主な業務内容は以下の通りである。

  • 設計
  • 材料開発
  • パワーユニット単体試験
  • エンジン製造
  • レース中のリアルタイム分析
  • 必要部材の購買
  • コスト・品質管理
  • メンテナンス

HRC Sakuraをはじめ、株式会社本田技術研究所の研究開発拠点は全国に10カ所存在している。

欧州拠点「HRC UK」

ホンダF1の欧州拠点「HRC UK」、2025年英国ミルトン・キーンズCourtesy Of Honda Motor Co., Ltd

ホンダF1の欧州拠点「HRC UK」、2025年英国ミルトン・キーンズ

HRC Sakuraと対をなす欧州の拠点が、英国ミルトン・キーンズにある「HRC UK」(旧HRD-UK)である。ここはF1エンジニアの拠点として機能し、パワーユニット部門、ダイナモ部門、ERS(エネルギー回生システム)部門、人事部門、広報部門を備えていた。

HRD-UKはF1参入の1年前、2014年に設立された。当初は1棟の建物で運営されていたが、2016年には2棟へと拡張された。

F1のパワーユニットは基本的にHRC Sakuraで開発されていたが、バッテリー(ES︰エナジーストア)に関してはHRD UKが開発を担当していた。その理由として、バッテリーには可燃性の高いリチウムイオン電池が使用されており、国際輸送には国連勧告輸送試験(UN38.3)への適合が求められるなど、厳しい制約があるためである。

2021年末のF1撤退に伴い、HRD-UKの施設はレッドブルに引き継がれた。しかし、2026年のF1復帰に向け、ホンダは再び欧州拠点を確保し、2024年に「HRC UK」として再始動した。