レッドブル・レーシングの2022年型F1マシン「RB18」のアグレッシブなサイドポッド形状
Courtesy Of Red Bull Content Pool

レッドブルRB18の問題点は肥満、2022年技術規定と予算制限がもたらす悩みのタネ

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アグレッシブなサイドポッド形状に深くえぐられたアンダーカット。レッドブル・レーシングの2022年型F1マシン「RB18」は、如何にも絞り込まれた印象を与えるものの、実際には肥満体型のようだ。

F1はグランドエフェクトカーを導入した2022年に車両最小重量を795kgに引き上げた。アルファロメオC42を除く全てのマシンがこれを上回っていると考えられているが、中でも特に超過量が大きいのがRB18だと噂されているのだ。

レッドブル・レーシングの2022年型F1マシン「RB18」でカタロニア・サーキットを周回するマックス・フェルスタッペン、2022年2月23日プレシーズンテスト初日 (1)Courtesy Of Red Bull Content Pool

レッドブル・レーシングの2022年型F1マシン「RB18」でカタロニア・サーキットを周回するマックス・フェルスタッペン、2022年2月23日プレシーズンテスト初日 (1)

具体的にチームはどの程度の超過に頭を抱えているのだろうか? 独auto motor und sportによると10kg以上オーバーしているチームがあるという。1g単位で軽量化を追求するF1においては途方もない数字だ。

近年のF1は車両重量が右肩上がりに増加し続けている。2008年に595kgに過ぎなかった最低重量は2022年に795kgにまで引き上げられた。14年間で200kg以上増加した事になる。これにはドライバーやオイル類も含まれており、含まれていないのは燃料(レースの場合110kg)のみだ。

なぜこれほどまでにF1マシンは重くなったのだろうか?

一つには動力源の変更が挙げられる。V6ハイブリッド時代の到来となった2014年導入の1.6リッターV6ハイブリッド・ターボは先代の2.8リッターV8エンジンと比較して遥かに複雑なものだった。

更に2017年には車体がワイド&ロー化されると共に、タイヤ幅も1.2倍以上に拡大され、2018年には安全性能を向上させるためにヘイローが導入された。

そして今季は躯体の安全性能強化に加えて18インチタイヤが導入された。タイヤ単体でも11kgを超える重量増だが、大口径化に合わせてブレーキ関連も重くなった。V6時代以降だけを見ても105kg、昨年から今季にかけては43kgも増加した。

ホンダが2019年シーズンのFIA-F1世界選手権に投入し、レッドブル・レーシングとスクーデリア・トロロッソが搭載したパワーユニット「RA619H」、2021年3月22日撮影 (4)Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd

ホンダが2019年シーズンのFIA-F1世界選手権に投入し、レッドブル・レーシングとスクーデリア・トロロッソが搭載したパワーユニット「RA619H」、2021年3月22日撮影

レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは独Motorsport Magazinとのインタビューの中で、現在のRB18が抱えている「唯一の問題は重量」だと述べ、最小重量の引き上げを望んでいる事を明かした。

レギュレーション変更にはライバルチームの同意が不可欠だが、現時点で最小重量を下回っているチームが首を縦に振る事は考えられない。コースを含む様々な変数によりけりだが、一般に10kgでコンマ1~2秒の差があるとされる。

レッドブルほどのチームが重量に頭を悩ませる背景にはコストキャップが考えられる。軽量化には多額の金がかかるのだ。以前であれば豊富な資金を以て問題を解決した事だろうが、今年は1億4000万ドル(約161億円)の予算制限が壁となって立ちはだかる。

レッドブルは恐らく、限られた予算を重量ではない他のエリアに突っ込む事を選んだのだろう。

フェラーリのシャシー・エンジニアリング部門を率いるファビオ・モンテッキは、車重と空力性能との関係について次のように語っている。

「両者はしばしば相反するため、全体的なパフォーマンスを最適化するためには最善の妥協点を見つける必要がある」

「車重と空力性能のターゲットが対立する事は珍しくない。そんな時に重要なのは、あくまでもクルマのパフォーマンスが最重要指標であると忘れない事だ」