優勝と4位の岐路、ダブルスタックのためにピアストリがノリスとの差を広げなかった理由
マクラーレンのアンドレア・ステラ代表は、ダブルスタックしなかったことは誤った決断だったと認めた。オスカー・ピアストリには前走ランド・ノリスとの差を広げてダブルスタックする道もあったが、そうしなかった。なぜか?
レースを経て、勝てるチャンスがあったのでは?との質問に対してピアストリは「そうだね…正直言って、ガッカリしないわけにはいかない。どんなコンディションでも僕らのクルマは本当に速かったし、雨が降り始めた時は飛ぶような速さだった。でも僕はスリックで1周余計に走ったせいで大きく遅れてしまった。優勝にどれだけ近かったかを振り返ると少し辛い」と苦笑いを浮かべた。
F1イギリスGPの序盤に雨が振り始めるとマクラーレンの2台はメルセデス勢とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)を一気に交わして20周目に1-2体制を築いた。ピアストリはノリスの後方2番手を走行していた。
ピアストリの運命は27周目の終わりに決定づけられた。ノリスがこの周にピットインした一方、ピアストリは1周余計にステイアウトした。この戦略的判断が致命的に響いた。
当時のピアストリはノリスの後方0.8秒の位置を走行していた。2台同時にピットインした場合、ピアストリがタイムを失うことは明らかだった。
ただ、1周のステイアウトにより失った時間はそれよりも遥かに大きく、17秒以上をロスしたことでメルセデス勢はおろか、カルロス・サインツ(フェラーリ)にまでポジションを奪われ6番手にまで後退することとなった。
この決定についてピアストリは「モーターレーシングにおける最も難しい判断の一つ」であり、「今にして思えば適切な判断でなかったことは明らかだ」として、自身が知りえない情報をチームが持っていたかどうかを確認するとともに、見直す必要があるとの考えを示した。
ピアストリには、ほんの僅かにノリスとのギャップを広げてダブルスタックする道もあったわけだが、そうしなかった。ピアストリはピットインの前にノリスを交わしてリードを奪うことを狙っていた。
Speedcafeによると、ノリスとの差を広げなかったことについてピアストリは「もし(ピットストップの前に)自分が(ノリスの)前に出ていれば、僕がピットインの優先権を手に入れることができたからね」と説明した。
「だから、これが最も難しい決定の一つだと言ったんだ。僕はリードを奪って優先順位を手に入れようとした。チームから見ると、どちらのクルマが最初にピットインするか分からない状況だった。そう、本当に難しい状況だった」
ステイアウトはピアストリの決断だった。
ダブルスタックを望んでいたのか?と問われるとピアストリは「正直、そうじゃなかった。ステイアウトすることで、どれだけの時間を失うのか僕には分からなかった」と答えた。
「ダブルスタックすれば当然、かなりのタイムを失うことになる。だから僕はステイアウトを選んだんだ」
「コンディション的にはさらに難しい状況になっていたけど、判断するのは本当にすごく難しかった。ステイアウトした最後のラップについて言えば、本当に厳しかったのはコースの半分だけだったからね」
「誰にとっても本当に難しい状況だったけど今にして思えば、ダブルスタックしていれば優勝できる可能性がかなり高かったと思う」
最初のピットストップでのミスによって6番手にまで後退したにもかかわらず、ピアストリは諦めずに冷静にステアリングを握り続け、優勝したルイス・ハミルトン(メルセデス)から12.429秒遅れの4位でフィニッシュした。